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2 農林水産省 消費・安全局長賞 <食生活改善分野> 村田ナホ 表彰事例発表

「ぼくとわたしの楽しいクッキング」

発表者:北海道帯広市 村田ナホさん

 私たち夫婦は、2人とも教員で、定年退職しました。そのときに、ちょうど学校が隔週5日制になったときとタイミングが一致しています。学校教育の中にゆとりを持たせたいので休みをつくったということですが、現実問題その辺の対応がまだまだできていないときでした。
 休日になったある土曜日、夫と出かけ、車が停まったときに、映画館からぞろぞろ子どもたちが出てくるのが見えました。休みが増えたけれど、子どもたちの行き場がなくなってきたんだと気づきました。これは何とかしないとならない。今まで自分たちがやってきたなかで、何ができるのかを考え、2人で話し合いました。それなら、私は家庭科の教師でしたから料理を教えて、夫は社会科の教師でしたから料理の社会科をやろうかということで、2人でできる料理教室を開くことにしました。
 この教室も口コミで広がり、現在は1日に173名の子どもたちに教えています。当日は、朝家を出るのが8時半ごろ、帰ってくるのが夕方の5時すぎになります。初めは1年目を1年生、2年目を2年生としてやっていたのですが、1年、2年が終わった子がはまってしまい「先生、3年生もやりたい」と言うようになりました。じゃあ、と3年目は十勝でとれるオリジナルなもの、豆やじゃがいもなどを使ったレシピで料理を教えました。
 今年、3年生になった子どもたちの中で「先生、4年目もやりたい」という子が40名ばかり出てきています。もう1日ではこなしきれないので、もう1週、教室を設けなければならないかと思っています。
 なかには、子どもに包丁持たせたら危険だから困ります、という親もいます。私は「大いに包丁持たせてもらいます。けがをしてもらいます」と言います。けがをしてもらうということは、大きな災難から自分の身を守るということで、すばらしいことだと思います。今の親は、これは危ない、火を使ったらやけどすると言って、やらせてないから子どもたちは力がつかないのではないでしょうか。ですから、私は子どもに、親にもはっきり、そう言って包丁も火も使わせています。

■料理の社会科は地域のことから世界のことまで

 オーブンで焼くような料理は、25分から30分焼く時間がかかります。そのときには、片方の部屋に「それじゃあ、料理の社会科をやるからこっちへ移動しなさい」と言って、そこで今度は夫の作ったオリジナルのテキストで、料理の社会科をやります。
 料理の社会科では、凍み豆腐の実物を見せて水に漬けてみせたりもします。そうすると子どもたちは「これはスポンジだ」と言うんですね。また、子どもたちは牛はどの牛でもおっぱいを出すと思っている。雄牛は出さないということはわかるんですけれど、雌牛なら、子どもを産まなくてもどの牛でもお乳を出すと思っている。子どもたちは酪農地帯にいながら、そういうことを知らないのです。
 この前は、ビート(サトウダイコン)を見せました。「これ何だろうね?」と子どもたちに聞くと、「タケノコだ」と言うんです。「タケノコかな?」と聞くと、「キノコかな」「貝かな」と子どもたち不思議がるんです。そこで、私が切りましたら、ぷーんと甘いにおいがしてきました。「これはケーキのにおいだね」と。今度は刻んで食べさせました。「甘い!」。砂糖の産地、ビートがとれる産地にいても、大人もビートを食べたことはないし、子どもたちもビートを全然知らないわけです。
 十勝では、春になると芝生が生えているような風景が見られます。実は、それは秋まき小麦なんですが、学校の先生の中にも芝生だと思っている先生がいる。あれは芝生じゃなくて小麦で、その小麦からパンができる、そういう地元の農産物についても社会科のなかで教えています。
 また、ツタンカーメンのエンドウ豆というのを、私たちは栽培しており、春になると、教室で子どもたちにタネを渡し、家でまかせます。すると、おじいちゃんもおばあちゃんも親もみんなエンドウづくりにはまるんです。写真を撮って「先生、こんなきれいな花が咲きました。食べてみたらおいしくなかった。固いですね」と言われたり。
 このように、社会科のなかには、地元のものから始まって地理とか世界のこと、あと流通問題、ちょっと難しいのですが遺伝子組み換えや農薬問題、添加物の問題など、いろんなことを教えております。
 スーパーの売り場に行っても、子どもたちは食材のことがわからない。でも、料理の社会科を学んでいると、食べものを選択する力ができるわけです。選択する力というのは、子どもたちが将来、学校を選んだり、就職を選んだり、自分の人生を選んだり、または結婚相手を選んだりする、その選択する基盤になるのが食育ではないか。そういう意味で、食育というのは子どもたちにすごく生きる力をつけるのではないかと思っています。

■料理教室から変わる子どもたち

 ひと月に1回だけの講座、1年間で10回やっていますが、その10回の中で子どもたちがものすごく変わってきております。
 自らすすんで料理をつくるようになったという子どもは多いです。また、家事の分担をきちっとやってくれる。「お母さん、お茶わん洗い大変だね」と、油ものとそれ以外のものを分けて片づけるということも覚えていくのです。
 また、教室で、ゼラチンを使った「固めもの」を教えてあげたところ、小学2年生のある女の子は100%オレンジジュースのゼリーを家族につくってあげました。そこで、お父さんが「お父さんはコーヒーのゼリーがいいんだけどな」と言いましたら、その子はちゃんと分量を合わせて、お父さん用にとコーヒーゼリーをつくってくれたということで、その子のお父さんが喜んでいました。
 10月のリンゴの時期にはジャムづくりを教えます。普段、包丁を持たない子どもたちにリンゴ1個ずつ持たせて、全員にリンゴの皮むきをさせます。初めは下手ですが、時間をかけてじっくりやらせ、だんだん上手になってきます。できあがりのジャムは少ないのですが、少ないジャムだからこそ価値があるのです。
 クリスマスには、鶏のもも肉を買ってローストチキンをつくってくれた、お母さんがちょっと具合悪いときにはチャーハンをつくってくれた、といううような話もあり、子どもたちに思いやりの心が育ってきているのです。
 試行錯誤しながらテキストを作り、もう教室を始めて7年目に入り、卒業生が1,200人になりました。教室の卒業生で、短大に入る高校3年生がおりますが、その子の進路を聞きましたら、「栄養士になりたい」と言っています。また「僕は世界のシェフになるんだ」と言う小学6年生の男の子もいます。「シェフになるなら英語をやらないとだめでしょ」と言ったら、「もうちゃんと英語も習ってるよ」とのこと。
 この料理教室も口コミで広がり、ぜひ入れてほしいと、来年度の生徒がもう予約で満員で、私たちも歳をとってはいられません。自分たちが元気でやれるだけやり、地域に貢献できたらいいと思います。

(表彰式での発表を要約。文責・事務局)


 1 農林水産大臣賞 綾南町立滝宮小学校
 2 農林水産省 消費・安全局長賞 村田ナホ
 3 農林水産省 消費・安全局長賞 有限会社 茄子の花
 4 農林水産省 消費・安全局長賞 那賀町有機農業実践グループ

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