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◆審査講評

地域に根ざした食育コンクール審査委員長 坂本元子

 本日の受賞者の方、まことにおめでとうございます。審査委員会を代表いたしまして、講評を少し述べさせていただきます。

■4つの分野に286事例の応募

 このコンクールは、近年国民生活にとって大きな課題になっている食育をテーマにして実施したものです。2000年に食生活指針が新しく改訂され、その普及をテーマに、実は2年前から地域に根ざした食生活コンクールを実施してきました。今回は、新たに食の安全・安心というテーマを加えて、より幅広い食育という視点で国民の食生活を見直そうという主旨に改訂いたしました。
 4つの分野から全体で286事例という非常に多くの応募があり、審査員一堂大変うれしく思っております。なかでも、教育分野では106という事例数がありました。その他、食生活改善分野で93例、食品産業分野では36例、農林漁業分野では48例ありました。
 事前の募集要項の中では、大臣賞、局長賞、協議会会長賞という3賞が従来の慣例として顕彰されるとお知らせしましたが、今回は応募数が予想をはるかに上回る数になったことと、活動水準が非常に上がってきていることもあり、審査委員会で急遽審査委員会奨励賞を設けることにしました。
 その結果、4分野それぞれ3賞、計12事例のところ、奨励賞計21事例を加え、合計33事例を表彰することにいたしました。33の立派な業績について一つ一つご紹介したいのですが、時間の関係もあり、本日は何点か代表例をあげて、本年のコンクールの特徴と評価といたします。

■教育分野……子どもの自主性を後押しして食育推進

 まず、教育分野です。一番応募数の多かった分野ですが、この教育分野は従来、学校の子どもたち、あるいは保育園、幼稚園の子どもたちを対象にして、学校の保健担当の先生、あるいは養護教諭の先生が子どもたちに対して行なっていく教育実践が数多く出てきていました。今年は驚いたことに、子ども自身をその活動の主役に据えて、子どもの自主性に合わせて学校が後押しをするという活動が多く出てきて、私どもが主催している食育の普及に大きな力になっているのではないかと感じています。
 農林水産大臣賞に決定した香川県の滝宮小学校は、お弁当づくりを子どもたちにやらせました。これは、小学校での食教育についてさまざまな工夫と努力がなされていることの象徴的な事例でもあります。あえて学校給食のない日を設けて、その日に児童自身の手によって自分の弁当をつくろうという学校教育における新しい食育モデルとして大変すぐれた活動だと思います。後ほど、この具体的な活動を、活動発表でご紹介いただきます。
 次に、局長賞に決定した広島県の久芳小学校の活動は、学校給食を児童自身の手でつくろうという試みで、これも児童自身の体験的活動を通した新しい食教育の形であると思います。ことに、給食で使いますお米、野菜、そういうものが学校農園で栽培されるという農業体験と、児童自身による給食づくりを結びつけたところが、大変すぐれていると思っています。したがって、子どもたち自身が栄養管理、メニューづくり、衛生管理、そして調理技術の習得といった基礎的な学習もそのプログラムのなかに入っておりました。そういうところが食教育かつ学習になっていると、私ども感じております。
 会長賞に決定した北海道大野農業高校の活動は、農業高校生がお弁当を商品化まで視野に入れてつくっている活動です。保温容器や手づくり食材などのユニークさもさることながら、学校内にとどまらず地域社会と連携していこうとしたところが、高い評価を得た理由です。
 手づくりの食教育といえる取り組みは、審査委員会奨励賞の中にも数多くありました。新潟県の二田小学校の活動は、小学校児童が郷土の特産物をお弁当にアレンジしようとしたもので、先に紹介した3賞に劣らない活動であると思います。
 また、三重県の相可高校は、卒業すると調理師免許を取得できるという課程を持っている学校ですが、郊外に土日限定の高校生が調理する食堂を開設したという、ユニークな活動でした。
 近年、農業高等学校で食育活動が盛んに行われており、昨年優秀賞に輝いた平塚農業高校の生徒さんが、今年は食育フェア会場にブースをもってその成果をアピールしておられるという、いわゆる学校教育のなかでの継続性というのが見られて、私ども大変うれしく感じております。
 それから、千葉県のJIA日本国際学園の応募は、不登校の課題を食教育を通じて克服していこうという活動でした。また、長崎県の新田保育園のように、親子共同の調理体験を卒園行事として据えている活動も見られました。幼児教育から高校生教育まで、それぞれの工夫と努力があったことが、高く評価されております。

■食生活改善分野……地域社会との連携で食育推進

 ここは家庭や地域を対象とした最も幅広い分野です。全般的な食生活ですから、若い方から高齢の方まで年齢層が非常に幅広い。そのなかで局長賞に決定した北海道帯広市の村田ナホさんの活動は、学校教師で定年を迎えられたご夫婦が共同で行なう、地域の子どもたちを対象にしたボランティア活動です。元社会科教師の夫が社会科から見た調理という座学を担当し、それから家庭科教師であった妻が調理実習を担当するという理想的な連携活動は、これからの食育活動の一つのモデルになるのではないかと思います。私どもも定年になりましたら、おそらくこういった形で、地域の子どもたち、あるいはお母さん方を対象に活動を展開できればいいなと思っております。
 会長賞に決定した愛媛県のふるさとの味研究会の活動では、出発点は地域の農業生産振興や郷土料理の伝承というものでしたが、それが若い世代の家庭での食育につながっています。ことに「味噌つくり新人養成講座」というのは、地域の恒例行事として長く定着してきています。年長のお母さん方が、若いお嫁さんや娘さんたちに味噌づくりを養成しようという試みでした。
 山梨県の塩山市食生活改善推進員会では、従来型の人集めスタイルの料理講習から一歩進んで、野菜カードというツールを用いて一軒一軒の家庭にまで出かけるという活動スタイルです。人を1カ所に集めるというのは、なかなかむずかしい。時間が合わない、場所が遠いといったようなこともありますが、ここでは出前活動スタイルという形で実践している、すばらしい活動だと思われます。
 奨励賞の中で、静岡市の古旗さんの取り組みはユニークです。いわばスポーツ食育とでも言えるもので、スポーツと食育を自然に結びつけた活動を行なっています。福井県の小浜市の活動は、行政そのものの取り組みですが、食育の取り組みを市の条例にまでしてしまったという点で、全国でも画期的な成果であると思います。市全体が食育に取り組んでいるという、大がかりな食育でその広がりが楽しみです。
 東京の矢島助産院の実践は、乳児を抱えた母親が直面する食の問題を助産院がサポートしようという取り組みです。今、子どもたちの食が危ないと言われているときに、子どもたちを育てる母親の食教育は、法律ではどこでもやられていません。それを、助産院が子どもを生んだ母親に、乳児の食事の与え方だけでなくて、これから幼児、小学生と成長する過程で母親が仕事に出ている場合にはどうやって子どもの食事を管理するか、そういうことまで展開していけるような活動になればいいなと期待をしております。この矢島助産院の実践は、全国でもモデル活動にしていただきたいなと考えます。

■食品産業分野……事業経営の一環として長期視点で食育推進

 この分野でも個人経営の食堂から全国的な大企業まで幅広い応募がありました。局長賞に決定したのは、島根県の有限会社茄子の花の活動です。ここは、子どもと食にかかわる活動を事業化できないかと、女性有志が始めた活動です。子育て世代への食材提供にとどまらず、各種イベントだとか、あるいはレストラン、食育を柱にした活動と事業の場をつくりだしているということが、非常に高い評価を受けています。
 会長賞の岩手県二戸市の農家レストランは、お米の収穫が少ない地域での主食でもあった雑穀のよさを見直しました。雑穀には実に多くの栄養素が含まれますし、特に食物繊維などはふんだんに入っているこのよさを見直して地域産業振興につなげようという活動です。農家の主婦が雑穀の生産からそれを食材にしたメニュー開発、それから雑穀レストラン経営までつなげた活動を高く評価しました。
 また、同じく会長賞に名古屋勤労市民生協の活動を選びました。食の安全・安心というスローガンは長年生協活動がうたってきたものですが、それに加えて食と健康というスローガンを付加して、組合員だけを対象とするのではなくて、地域社会の人々や児童生徒まで視野に入れた食育活動を展開されています。
 奨励賞としては、性格が異なる三つの活動を選びました。一つは、兵庫県の宮崎米穀店。ここは個人経営のお米屋さんですが、地域のお年寄りを対象にして健康教室を行なうNPO法人までつくっている活動です。二つめはコープやまなしで、ここでは食を通して子育てを考えるという連続講座を年間を通じて行なっています。
 三つめはカゴメ株式会社の活動で、商品のルーツになっているトマトの苗を全国の小学校に提供することを通じて、野菜の成長観察を活動にしたり、あるいは食の冒険グランプリと称した独自のコンクールも行なっています。食品産業において、食育活動というのは、事業経営との兼ね合いなどもあって当然のことと考えられますが、長期的な視点で専門的な知識や技術を生かして、将来を担う子どもの教育に結びつけておられる。それが、地域社会に貢献しているということです。

■農林漁業分野……農業体験活動とあわせて食育推進

 最後の農林漁業分野では、和歌山県の那賀町有機農業実践グループ、ここの活動を局長賞に選びました。地域農業を振興させる道は、単一食品を大量生産・大量消費するのではなくて、少量でも地域特産の農産物を大切に育てることに求めるという地域農政と不可分です。それが、地域の学校給食センターが新しく開設されたことをきっかけにして、地場産業農産物を給食センターに納品することにつながり、小学校での農業体験活動支援につながっています。
 会長賞は、酪農教育ファームの活動と農家主婦による郷土食伝承活動、この二つを選んでおります。北海道の冨田ファームの活動は、労働力として受け入れた都会の若者が、農場の中で癒されて成長していくという姿を見せていただきました。酪農教育ファームの活動につながっていく過程がよくわかり、今では宿泊体験農場として、農業体験も食品生産体験も、食事さえも従業員と宿泊者全員が共同で実施するというポリシーのファームになっています。
 富山市の食と農を考える女性の会の活動は、これも地域農業生産振興について、農家主婦が食育を通じて模索しながら実践しているというものです。農家朝市などの活動に加えて、学校の児童生徒と一緒に地域農業と伝統食を見直すという活動に発展させています。
 奨励賞の一つは、高知県の吾北村農業公社の活動です。地域振興に貢献することは当然ながら、地域の子どもたちも巻き込んで農産物を地域特産加工食品に結びつけようという活動が、大変面白いと思われました。秋田県の自在屋の活動は、個人経営の農家が、昔ながらの農家の暮らしを丸ごと宿泊体験できるというものです。農産物の生産体験からいろりを用いた調理体験まで、約50年くらい前にさかのぼって農家、農村を体験できるというのは、今の子どもたちにとっては非常に興味あるユニークな活動であると考えます。それから北海道の駒谷農場は、地元の大学カリキュラムと連携して、農場体験を必須課程に組み込んだ、これもユニークなものです。

■食育推進に農村地域の女性の実行力が目立つ

 紹介できなかったその他の表彰事例も、それぞれに工夫と努力がこめられた活動がたくさんありました。全般を通して印象的だったのは、農村地域の女性の力強さ、実行力のすばらしさです。いずれの事例にも見受けられ、農村は女性の力でもっているのではないかとさえ思えるくらいでした。
 それから、活動の内容が幅広く、今まで単一で活動していたものが、組織になり地域になり、市全体で最後には条例までつくるというような大がかりな食育活動が見られたのは、将来が大変楽しみです。今後も、家庭、地域、学校、職場で大いに食育活動を進めていただいて、来年度もこのコンクールに応募いただければありがたいと思います。
 少々長い講評になりましたが、受賞者が多かったためにこんな長い時間をかけさせていただきましたが、本当にありがとうございました。受賞者の皆様、本日はおめでとうございました。

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