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地域に根ざした食育コンクール2004表彰式・活動発表会

◆表彰式主催者挨拶

(社)農山漁村文化協会専務理事 坂本 尚(さかもとたかし)

 皆様方が展開されておられる地域に根ざした食育活動は、21世紀を作る最も重要な文化活動の一つであります。20世紀は産業経済活動において、大量生産・大量販売で豊かな物的条件ができた世紀です。もうそろそろ物はこれ以上要らない、もっと自分に合った、個性のある豊かさを望む段階に日本は入ってきました。

 そのベースになる活動は地域に根ざした食生活です。それを実践されておられるのが皆様方です。21世紀をリードする活動をますます発展させることをお願いしてご挨拶とさせていただきます。

◆来賓祝辞

農林水産省大臣官房審議官 高橋直人(たかはしなおと)

 本日ご出席いただきました皆様方には日頃から食育の推進につきましてご尽力をいただいておりますことに、この場をお借りして御礼申し上げたいと思います。

 また、本日受賞されました大臣賞の塩山市の皆様をはじめとして、31団体の皆様の受賞をお悦び申し上げます。誠におめでとうございました。今回の応募数は237事例もあり、それぞれ活動水準が高く、審査も難航したとうかがっております。その中で受賞されたことに改めて祝辞を述べたいと思います。

 さて、「食べる」という毎日のことを何故、政府・農林水産省があらためて「食育」という形で取り組んでいるのでしょうか。今、日本全体とりわけ都市部における食生活が必ずしも好ましい状態にはないという認識を持っております。確かに栄養状態はいいかも知れませんが、若年層で5人に1人は朝食を欠食する、またどのような食品を組み合わせて食事すればよいのか分からないというようなアンケート結果があります。農林水産省の中でさえアンケートをとると、望ましい食品の組み合わせがよく分からないといった結果が出ます。

 このコンクールは「食を考える月間」の大きな柱の一つでありますし、受賞された皆様はこの活動の地域におけるリーダーであります。しかし、この受賞をゴールとするのではなく、出発点としてぜひ地域でさらに食育の輪を広げることをお願いして祝辞に替えさせていただきます。本日は誠におめでとうございました。

◆審査講評

地域に根ざした食育コンクール審査委員長 坂本元子

 審査委員会を代表して、講評を述べさせていただきます。
 はじめに、これまでのコンクール開催の経過を申し上げますと、2000年に農林水産省・厚生労働省・文部科学省の3省合同で作成された「食生活指針」を普及するために、2001年度から「地域に根ざした食生活推進コンクール」を開催して、各分野のすぐれた地域活動を顕彰してきました。そして2003年度から、このコンクールの名称を、より大きな「食育」という視点で国民運動を推進しようという趣旨で「地域に根ざした食育コンクール」に変えて、通算4年目を迎えたわけでございます。

 本年度も昨年度に引き続き200を大きく超える237例もの応募をいただきました。また、北海道から沖縄県まで全都道府県からの応募がありました。多数の応募にお礼申し上げます。応募の分野は、食生活改善分野で66例、教育分野で107例、食品産業分野で35例、農林漁業分野で29例でした。

 また、活動水準が全体的に非常に高いことを勘案して、「大臣賞」「局長賞」「協議会会長賞」という3賞以外に、昨年に引き続き特別賞として「審査委員会奨励賞」を選考致しました。その結果、3賞計12例、奨励賞計19例の合計31例を表彰することに決定しました。31例すべてについて詳しく触れることはできませんが、本年のコンクール応募内容の特徴と評価点について述べたいと思います。


【食生活改善分野】

 家庭や地域を対象にしたこの分野では、担い手の広がり、新しい工夫、地域における各種グループの連携といった面で、食育活動が地域に広がりつつあるということを感じました。

 まず、農林水産大臣賞を受賞された山梨県塩山市の例では、「保健福祉センターと食生活改善推進員」の方々が連携して、食育の新しい視点、新しい活動スタイルを作られました。「手ばかり」という方法は老若男女誰にも分かりやすく、またポスター・パンフレット・さらには寸劇まで準備されて食育出前講座を実施されました。「保健福祉センター」という行政機関と「食生活改善推進員会」という地域団体の連携は、これからの食育活動の推進にあたって一つのモデルになるのではないかと思います。さらに、塩山市の例で申し上げますと、実は昨年度のコンクールで「塩山市食生活改善推進員会」が単独で協議会会長賞を受賞されております。活動内容は「もっと野菜を食べるじゃん」というタイトルで、「料理カード」の配布で野菜の摂取を支援するということでした。今年はさらにその活動を発展させて、自分の手をものさしにしてバランスのよい食生活を実現する工夫を地域に広げたということで、審査委員会でも高く評価されました。のちほど活動発表をしてくださいます。楽しみにしております。

 消費・安全局長賞を受賞された「いなぎ栄養士クラブ」の皆様は、特定の職場に属する栄養士のグループではなく、在宅の栄養士として自由な立場で地域活動をすすめておられます。特に、地域のお年寄りや学生にも働きかけて、新しい地域のネットワークを作っているところがすばらしいと思いました。小学生を対象にして、教わるだけでなく、自ら考えるということに重点を置いた料理教室を実践されておられます。

 協議会会長賞を受賞された「野菜人形劇団ベジタブル」の活動はたいへんユニークです。生野菜を使うというその手法もさることながら、野菜や食べ物に対する愛情がこもっています。「たべものさんありがとう」という活動名称に象徴されていますように、食べ物に感謝する、いのちに感謝する、生産者に感謝するといった気持ちが食育の原点ではないかという思いが伝わってきます。ボランティア劇団ということでご苦労も多いと思いますが、ぜひ今後も続けていただきたいと思います。

 審査委員会奨励賞として6つの団体の活動を選定させていただきました。それぞれ活動分野が広がっていることを感じます。視覚障害者の方々の食生活を支援するボランティアグループが「味好会(みよしかい)」です。介護老人保健施設という医療の分野における食育活動を実施されているのが、長野県上田市の「上田腎臓クリニック」です。また、滋賀県の「新旭(しんあさひ)町食育と農のネットワーク会議」や岩手県「沢内(さわうち)村食生活検討委員会」の活動は、食育活動の必要性が行政課題になりつつあるということが分かります。生ゴミリサイクルという環境保全活動を通して、食の大切さを伝える活動をされているのが、長崎県の「大地といのちの会」です。さらに、「道の駅・農村レストラン」という場所を生かして、健康弁当を配達するとともに、行政職員や町民の食生活改善にまでつなげようとしているのが「香川県仲南(ちゅうなん)町」の活動です。

【教育分野】

 例年応募数が最も多い教育分野は今年も100を超える応募をいただきました。今年の特徴は、幼稚園・保育園から大学に至るまで幅広く応募をいただいということが挙げられます。特に幼稚園・保育園の応募数は30例を超えて小学校の応募数に匹敵するほどに増えました。幼児期からの食生活がいかに大切であるかということだと思います。

 局長賞を受賞された「北海道幕別(まくべつ)町立途別(とべつ)小学校」の活動は、地域社会全体の中で小学校における食育が中心に位置づけられているという印象を受けました。活動名称に象徴されていますように、お年寄りを含む幅広い年代層に支えられ、小学生の活動が地域社会に元気を与えています。また、その内容が、食を中心にして地域の文化全体を継承するという活動になっています。小規模校の活動ではありますが、モデル的活動になると評価いたしました。後ほど活動発表をお願いします。

 会長賞を受賞されたのは「喜多方市教育委員会」と新潟県の「村上南小学校」です。「喜多方市教育委員会」は教育行政を担う立場からの応募ですが、子ども達が積極的に食に関心を持つようになるためには、継続的に絶えず工夫が必要なのだということが分かります。「村上南小学校」の例は、自給自足をテーマにした、小学生自身の食事づくりの新しい試みです。朝食から夕食まで3食分を1年がかりで作るという取り組みは、単に珍しい試みというだけではありません。お米、野菜などの食材を栽培するだけでなく、海水を煮て塩まで作るということも体験しています。

 奨励賞としては7例を選定しました。そのうち幼稚園・保育園から3例を選びました。神奈川県の「岩瀬保育園」、福岡県の「ふたば幼稚園」、東京都文京区の「かごまち保育園」です。それぞれ共通するのは和食を給食に位置づけていることです。幼児期から健康な味覚を養うためには和風のダシや新鮮な素材そのものが大切だということがよく分かります。「設楽(したら)中学校給食委員会」の情報伝達活動は毎日1分間ではありますが、それを継続することの大切さが伝わってきます。「東京家政大学ヒューマンライフ支援センター」の食育おもちゃの開発は新しい試みとして大変興味深く印象的でした。「沖縄県立北部農業高校」の取り組みはドラゴンフルーツの栽培に関連して、地域の食材を開発しようという試みです。香川県「三木町立小蓑中学校」の活動は、総合学習で取り上げたふるさとの野菜に触れる活動をきっかけにして地産地消運動に取り組まれております。

【食品産業分野】

 局長賞を受賞された「栄養食株式会社」の活動は、社会人に対する食育活動の可能性を示してくれました。企業の社員食堂という場所を積極的な健康管理・食育の場にされたというモデル例として評価したいと思います。内容は栄養士によるパソコンを用いた「栄養相談」「パネル展示」「食品展示」と多彩です。また食品産業と地域社会の関わりを模索されていることもすばらしいと思います。のちほど活動発表をお願いいたします。

 会長賞を受賞された「清水精米所」の活動は、町のお米屋さんならではの活動です。次代の農業の担い手を応援するために、岩手県立農業大学校や新潟農業大学校生徒の研修の協力をしておられる。自費で出版されたというお米の品種のパンフレットはお米に対する愛情が感じられます。また奥様が「米食味鑑定士(こめしょくみかんていし)」の資格もとられて、ご夫婦で地域の小学校に出前学習講師をされているのは大変すばらしいことだと思います。同じく会長賞の「キユーピー株式会社」は、食品産業として早くから消費者・子どもたちに工場見学の場を提供しているだけでなく、全国の学校・消費者センター等に、食に関する学習素材を提供されています。今後も食品産業の立場で独自の食育活動に取り組んでいただきたいと思います。

 奨励賞の3団体の活動は、生産・流通・消費をつなぐ食品産業として、食の啓蒙・学習支援活動を企業の社会的活動として位置づけて取り組んでおられます。製造業団体の「日本醤油協会」、精肉業の「柳原食肉センター」、さらに青森県のスーパーマーケット「ユニバース」です。それぞれ食の生産・加工・流通という食品産業の現場における食育の可能性を示しておられます。以上の3団体の意欲的な取り組みに奨励賞を贈らせていただきました。

【農林漁業分野】

 局長賞を受賞された「JA鳥取県食農教育支援センター」は、40年近く継続されてきた子どもたちに対する農業体験活動支援をさらに発展させるために、地域・家庭を体系的に結んだ取り組みを、県域全体の継続的・系統的な支援体制組織として新たに作られました。そこに中心的な課題として位置づけられたのが食の問題です。JA付属アグリスクールの設置(交流・学習・体験)を健康菜園でJAの総力をあげて取り組んでおられます。将来のモデルとなるでしょう。後ほど活動発表をしていただきます。

 会長賞を受賞されたのは宮城県「蔵王町生活研究グループ連絡協議会」と小田原市の「鈴木勝子」さんです。蔵王町では地域の中で郷土食を伝承するだけでなく、都会の消費者・子どもたちの訪問を受け入れて「食育セミナー」も実施されています。また「鈴木勝子」さんは、農業経営士という資格を持った専業農家として、ご自分の「農産物直売所」を消費者への食育の場にし、子どもたちを「宿泊農業体験」に受け入れ、さらに次世代を担う子どもの育成のために紙芝居を上演するなどさまざまな工夫をされています。

 奨励賞の3団体もそれぞれ農業・農家の立場から食と農を結びつけた活動をされています。鳥取県の「八頭(やず)生活改善実行グループ連絡協議会」の『八頭のあじ』という食文化伝承本は、編集に工夫をこらし、瞬く間に3刷りまで発行されたとのことです。このような活動が全国に広がることを期待しています。北海道の小学生と保護者を対象にした「砥山(とやま)農業クラブ」の活動は、農業生産者が次世代の子どもたちに作物の生育過程や農業者の努力を知らせて、地域全体の農業と食の関係を伝え残したいという思いが伝わってきます。さらに発展させていただきたいと思います。熊本県の「三角(みすみ)町・高野山(たかのやま)食と農体験塾」は、食と農の体験塾として、自然と農業と食生活の関わりを経験させるという試みです。


 以上、審査委員会を代表いたしまして本年の特徴と評価の視点を述べさせていただきました。あらためて多数のご応募に感謝するとともに、今後も個性豊かに楽しい食育活動を展開されることを期待申し上げて講評といたします。


(要約文責:事務局)


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