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1 農林水産大臣賞 <食生活改善分野> 塩山市保健福祉センター・塩山市食生活改善推進員会

「手から手へ 地域に広がる『手ばかり』の輪」

発表者:塩山市保健福祉センター管理栄養士 新井孝子(あらいたかこ)さん

 私たちは市民の健康を食の立場から支援するさまざまな活動に取り組んでいます。平成13年度に、市民の食生活状況を把握する切り口の一つとして、野菜の摂取状況を調査しました。その結果、平成13年度の段階で、毎日野菜を食べる子ども達は50%、20歳代では50%、30歳代以上では60%であることが分かりました。
 そこで10年後には各世代ともに野菜摂取率を30%アップすることを目指して支援活動を開始しました。この支援のためのツールとして、1回の食事に食べたらよい自分に合った分量が一目でわかる方法として「手ばかり」を開発しました。

 ここで、「手ばかり」って何?と思われる方がいられると思います。会場に23.5センチの靴をお履きになっている方がおられましたらご協力ください。その場で立っていただいて、同じ23.5センチの靴の方と「手と手」を合わせてみてください。そうすると、「靴の大きさが同じ」方同士は「手の大きさ」もほぼ同じだということが分かります。「靴の大きさが同じであれば手の大きさも同じではないか?」。これが実は「手ばかり」の発想のタネです。足と手のサイズは成長の目安になります。

 そこで「もし靴のサイズと手の成長曲線が統計的に類似していたら、自分の手を使って自分の1食あたりの適量が簡単に分かるのではないか」という仮説をたて、塩山市民1歳から80歳代まで1,358人に協力して貰い、手の大きさを計測し、靴の大きさを聞き取りました。手の大きさについては「手全体のサイズ」と「手のひらのサイズ」の2種類を計測しました。
 その計測結果(「手のひら」「手全体」「靴」「身長」の各サイズ)をグラフ化してみたところ、女性の場合いずれも成長のピークは10歳代後半にあり、しかも「手の大きさ」と「靴のサイズ」の成長曲線は見事に一致していることが分かりました。

 これを同じように男性で見た場合でも、「手のサイズ」と「靴のサイズ」はいずれも成長のピークは10歳代後半にあることが分かりました。ということは仮説がなりたつのではないかとドキドキしたほどでした。
 これらのことから、「胃の容量」も「手の成長」に比例して大きくなるのではないかと考えたのです。そこで、「自分の手」を使って「自分の胃の大きさ」にあった食事の量が分かる方法がないかと模索することになりました。

 まず注目したのは、食事の内容を考える時に目安として使用される「食品構成」です。例えば成長のピーク(骨の成長が終わる)になる15歳〜18歳の時の栄養所要量は、女性が2,300キロカロリー、男性は2,750キロカロリーになります。食品構成はこの平均値の2,500キロカロリーで組み立てられています。

 そこで、「食品構成表」に示されたそれぞれの食品の量を、成長のピークである15歳〜17歳の青年と、育ちだかりの6歳〜8歳の子ども達の手の上にのせてみました。肉薄切りを例にとると、青年には「手のひらピッタリ」サイズ、子どもには「手のひらやや小さめ」サイズ。魚でも、肉と同じように青年には「手のひらピッタリ」サイズ、子どもには「手のひらやや小さめ」サイズが適量だということが分かります。ご飯では、青年には「両手のひら軽く山盛り」、子どもには「両手のひら小盛り」。茹でた野菜では、青年には「片手軽く山盛り」、子どもには「両手軽く山盛り」が適量だということになります。この結果、肉・魚・ご飯の手ばかりの目安は、8歳以下では自分の手のサイズよりやや小ぶりにすればよいということが分かりました。これに対して小学生から中学生では自分の手のサイズぴったりにすればよいのです。

 このように、「食品構成表」で示された食品の量は、それぞれの年齢の平均した体格に基づいて作られたものですが、身体の大きさは同じ年齢であっても個人差があります。そして「手」が大きければ「胃」も大きく、「手」が小さければ「胃」も小さいという関係にあります。ということは、手の大きい人も小さい人も「自分の手の大きさ」を基準にすれば適量の食事を摂ることができるということになります。これが「手ばかり」です。
 この関係を一目で見て分かるようにと、「子ども用」と「大人用」のポスターを作成しました。このポスターの中にマントを着たコスチュームがあります。黄色の「黄いちゃん」、「緑ちゃん」、「赤ちゃん」です。このコスチュームのトリオを「仲良しトリオ」と呼びまして、平成13年度から子ども達の寸劇向けに活躍したものをこのポスターに入れました。今日は特別にその「仲良しトリオ」に来て貰いましたのでステージに上がって貰いたいと思います。自己紹介してください。

 「私は赤ちゃんでーす。私の中にはお肉やお魚が入っています。私を食べるともりもり大きくなりまーす」。
「私は緑ちゃんでーす。私の中には野菜や果物がいっぱい入っています。私を食べると元気な身体になるよー」。
「私は黄いちゃんでーす。黄いちゃんの中にはご飯やパンがあります。私を食べるともりもり力がわいてきまーす」。

 これが「仲良しトリオ」です。こんな感じで子ども達の前でペープサートをやっています。保育園では、「食生活改善推進員」が「赤ちゃん」と「黄いちゃん」になり、保健師が「緑ちゃん」を演じます。子ども達には遊びながら「手ばかり」を覚えて貰います。寸劇の終了後、保育所では給食が出ますので、子ども達はその場で色々な点検ができます。また家庭には保育所を通して「手ばかり」のポスターを配布しました。
 児童館の場合でも小学生を対象にして「手ばかり」の学習をします。その後、毎日の遊びの中で3つの食品群を「ぬり絵」で覚えたりします。
 これだけでなく、各地域で「親子料理教室」を開きます。このときに、実際に「自分の手のひら」を使ってお肉などの適量サイズを測って調理します。調理のあと食事に移っても、大人から子どもまでみんなそれぞれ「手の大きさ」にあった適量が違うのだということをお互いに確認しながら食事をいただきます。
 この他にも大人を対象にして、平成16年から地区で開催される各種の会合を利用して出前学習を実施しています。先ほど子供向けの「仲良しトリオ」を紹介しましたが、大人向けには女性の忍者に扮して「くノ一部隊」に変身させます。忍者らしく「巻物」なども準備して「手ばかり」の普及活動をしております。

 このように、「手ばかり」を普及してから9カ月経ちました。保育所でのつながり、親子料理教室を通じてのつながりで、特に若い世代の野菜摂取率がアップしていることが分かりました。調査結果では50%から70%にまでアップしています。
 そして大切なことは、皆さんが「手ばかり」を楽しんで学んでいることです。どうやら活動の発展のためには「楽しさ」ということがキーワードになるかも知れません。また、この活動は保健福祉センターだけで出来ることではなく、食生活改善推進員の皆さんやその他多くの関係者の協力で出来たということです。塩山市では今市内のあちこちに桃の花が咲こうとしています。2010年にはこの桃の花のように、「手ばかり」の輪が大きく広がることを目指して活動を展開していきたいと思っています。

●「手ばかり」普及のポスターは塩山市ホームページで閲覧できます。

(要約文責:事務局)


 1 農林水産大臣賞 塩山市保健福祉センター・塩山市食生活改善推進員会
 2 農林水産省 消費・安全局長賞 幕別町立途別小学校
 3 農林水産省 消費・安全局長賞 栄養食株式会社
 4 農林水産省 消費・安全局長賞 JA鳥取県食農教育支援センター

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