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4 農林水産消費・安全局長賞 <農林漁業分野> JA鳥取県食農教育支援センター

「次世代に目を向けたJA食農教育推進〜県域・地域(JA・学校)・家庭を結ぶ〜」

発表者:JA鳥取県食農教育支援センター理事長 川上一郎(かわかみいちろう)さん

 JA鳥取では過去40年間、食農教育の実施に取り組んで来ましたが、各地区の小中学校校長会の会長を委員に委嘱しておりました。組織名は「鳥取県こども協同組合研究協議会」といいますが、いわばおんぶに抱っこということで、殆ど学校主体でお願いをして進めてきたというのが一昨年までの実態でした。
 しかし、そのような取り組みでは限界があります。色々な取り組みをしてきましたが、殆どが断片的で一過性、イベント的なものに終始してきました。一部には「やらせ」だと評する向きもありました。そこで「食農教育」を単なるイベントに終わらせずに、JAの事業に位置づけるために、「JA鳥取県食農教育支援センター」を開設することにしたのです。
 こんにち、子ども達を取り巻く問題の一つに少子化があげられます。子ども達自身が切磋琢磨しながら発達するという環境がなくなりつつあります。子ども達自身が発達段階にあわせて「自己教育力」を養えるような体験学習が必要になっていると考えます。

 次に家庭の親の問題があります。子どもの問題というよりは親世代の方に問題があるのではないかと感じることさえあります。
 さらに「食の農の距離」がひろがっているということを感じます。都市部はおろか農村においてもその距離はますます離れつつあります。

 「JA鳥取県食農教育支援センター」の活動には次の4つの柱があります。
1,調査・研究活動(プロジェクト活動、提案・助言指導等)
2,支援体制の整備(客員研究員の委嘱、食農専門指導員の養成等)
3,実践活動の支援(JAアグリスクール指導、研究会の育成、食育型菜園の確立・創立)
4,食農教育の普及啓発(優良活動事例の表彰・発表、シンポジウム開催、新聞広報等)

 この柱に基づいて具体的に実践しようとしたプロジェクトが次の2つです。
1,JA附属アグリスクール制度の確立と学校との連携
2,学校給食等に対する地元食材供給のあり方

 「JA附属アグリスクール」では3つのコースを設けます。「交流」「学習」「体験」という3つです。これらは過去にも蓄積を重ねてきたことではありますが、単に体験させればよいという段階は終わりました。如何に子ども達に「感動」を与えることができるかということに留意しなくてはなりません。
 これまでの経験では子ども達が最も感動的体験をしてくれるのは、乳牛の乳搾りと家畜の出産です。農業体験活動の中でも、出産に立ち会えることは滅多にありません。そのため偶然を期待するようなことではなく、実際に畜産農家と事前に連絡を取り合って、いつ子どもが生まれそうか情報を集めます。その上で体験学習を実施するということを心がけています。体験学習はともすれば、何百人集めたとか、マスコミに取り上げられたとかいうことが話題になります。そのようなことが目標になるようなイベントではなく、1人でもいいから子どもに「感動」を与えるような「交流」でなくてはならないと思います。
 また「学習」では家庭における親子の学習を支援するために、JA系統で作成しております「ちゃぐりん」という学習冊子を、小学校に入学する児童のある全家庭に提供します。

 今、全国の農協で実施している「アグリキッズスクール」は33カ所あります。私どもはこれらの先行事業の経験を勉強させてもらい、鳥取県で実践可能な「スクーリング方式」を考えました。これは1年を通じて子ども達に集合して貰うのではなく、集まるのは年4回程度でもいいから、家庭での体験を重視するという考え方です。
 また、鳥取県の経験では3年生から6年生までを一括して対象とするのではなく、4年生に絞った活動をしようということが一つの到達点です。5・6年生になるとクラブ活動等でも子ども達の関心事が分散するようになりますし、4年生は一番よく吸収してくれると感じています。好奇心が旺盛ですし、規律もよく守ります。全国的にこの考え方がいいということではなく、あくまで鳥取県の現時点での力量として4年生にしぼった活動ということになったということです。

 プロジェクトの2つめの課題は「学校給食に対する地元食材供給のあり方」です。今まで、農協は学校給食に対して何をしてきたのかと批判されることが多くありました。価格や供給方法の問題でなかなか一致点が見いだせなかったというのが率直なところです。そこで、私どもは「学校給食にどのような食材を供給することがよいのか」ということに着目いたしました。何よりも「誇りをもって地域や伝統とともに語れるブランドは何か」「栄養や食味に優れていて食意識の向上に役立つこだわりのある産物とは何か」「多量で長期的に安定的に供給できる貢献度の高い自給産物は何か」という3つの視点で絞り込みをいたしました。
 鳥取県は砂丘(砂土)があり、大山(黒ぼく)があり、中国山脈(赤土)があり、土を生かした「土物」に特産物がたくさんあります。土中に収穫物が実る白ネギ、ラッキョウ、ナガイモ、サトイモ、バレイショ、サツマイモ、ダイコン、タマネギがあります。これらを学校給食に提供しようということになりました。

 最後に家庭での教育支援について述べたいと思います。家庭の菜園と食卓をどう結ぶかということです。それにあたっては親の食農教育3カ条を掲げています。
1,意識する ― 子どもがつまずきやすいところを常に把握する
2,場を与える ― 大切なものを思い切って与え、まかせる
3,見守る ― ガイド役に徹する

 ともすれば親は子どもの手助けをしたがります。そこを我慢して親は手出しをしないということが大事です。また、子どもだましは通用しません。ある時、1個1万円もするようなネットメロンの栽培を任せたところ、子ども達は大変熱心に一生懸命取り組みました。そのメロンの市場価値をよく知っているのです。子どもだからといって、多少失敗しても被害が小さくなるようにと「安い」ものをあてがっては、子どもに見透かされてしまいます。こちらが思い切って子ども達を信頼して任せるという気構えを見せたとき、子ども達も真剣に応えてくれるのではないでしょうか。

(要約文責:事務局)


 1 農林水産大臣賞 塩山市保健福祉センター・塩山市食生活改善推進員会
 2 農林水産省 消費・安全局長賞 幕別町立途別小学校
 3 農林水産省 消費・安全局長賞 栄養食株式会社
 4 農林水産省 消費・安全局長賞 JA鳥取県食農教育支援センター

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