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食育コンクール2004
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    「なつかしい未来へ〜地域に大きな食卓をつくろう〜」

    講師:結城登美雄 (ゆうき とみお)

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    ■我が家の一品を持ち寄った「食の文化祭」

     宮城県も国体がありまして、大きい田んぼ潰してバレーコート4面の体育館をつくりました。それを今は誰も使っていない。「ならばそこにぼくがテーブルを並べるから、そのテーブルに普段のものを一品ずつ持ってきてくださいよ」と言ったら、「いやだよ」とかって言いながらも、「しょうがねえな、子供らのためなら」と言って。持ってこれない人たちは僕らがコンテナに運びに行きました。それで、恥ずかしそうに風呂敷に入れて、我が家の一品を持ってきたんです。

     こんなものです。特別のものではないんです。でも、家族が「うん、おいしい」と言ってくれたものです。久しぶりに帰ってくると、「あの漬け物食いたい」「おばあちゃんのあのギョウザが食いたい」と。郷土食というのは古い形の食ではなくて、気持ちをこめたものです。家族がうんとうなずける、食べてみたいもので、そういうものだけが集まりました。そうやってみんなが持ち寄ってくれたんです。普段は見えない家族の食卓が、集まってくると少しずつ力を持ち始めます。

     1円もお支払いしていません。偉そうなことは言えないんです。僕は「何とかお願いします」と回って歩いただけです。

     ごはんだけでも、左下は30代のお母さん。右下は70代のおばあちゃん。囲炉裏のそばにカミワタシを置いて、おむすびを味噌おにぎりにして。そこに藁があります。これはくっつかないようにとの知恵だそうであります。その一つ一つを聞いていくとたくさんの物語があります。「この藁を敷くのはお舅さんに教えてもらったんだ」とか、「母がそうしてくれたから」とか、そういう人の生き方、記憶と食べ物はいつでもつながっています

     そういうものを持ち寄ってくるとどうなるか。こんな風になります。


    宮城県宮崎町「食の文化祭」

     1,300集まりました。1,500世帯の小さな自治体の中で1,300のお母さん、おばあちゃんが一品ずつ持ち寄ってくると、こんな姿になるんです。

     食べてはいけないんですね。でも、みんな食べたがるんですね。で、こうやって後ろ手にして、こういうスタイルで見ていきます。後ろに、ここに爪楊枝を隠している。だから、僕はみんなが食わないうちに写真を撮ります。

     一つ一つはばらばらのように見えるけれども、つながるととても力を持ってきます。楽しくなってきます。そうすると、あちこちに会話が生まれてきます。例えば、「食べてはいけません」と言いながら、やっぱり食べたくて、こう、ふっと顔を上げると、相手も食べていて、「ちょっと塩加減きついね」とか、「あたしのは味醂があるんだけれども、どうなのかしら」とかという、知らないもの同士がおしゃべりをどんどん。「これは本当は食べてはいけません」とマイクで言いたかったんですが…。

     そうすると教え合いを始めます。「……でもこのぐらいのができるのよ」とか、まあ食べ物の言葉ってどうしてこんなに豊かなんだろうと思うぐらいに会話が弾んでいきます。

     こういうものを、僕は「地域の食卓」というふうに呼びたいと思っているんです。「家族の食卓」をみんなが持ち寄ってできる場を、「地域の食卓」と呼びたいなと思っているんです。

     そこから何が生まれるというと、普段は一人黙々と食べていたり、家族がずれたりすると会話がなかったのが、一緒に「あれがそうだね」「これがそうだね」というたくさんの多様な会話が生まれてきます。おしゃべりの輪が広がるということは、住んでいる地域にとってもとても楽しいことであります。

     そうすると、食生活改善のお母さんたちが、「普段のものもいいけど昔はもっとおいしいものを食べていたよ」と言って、1年間の料理を復元してくれました。ごちそうですな。毎日僕らはご馳走みたいなものを食べているから、何がご馳走だかわからなくなって、テレビで言っていた鉄人シェフのところに行ってみたり、幻のなんとかっていううところに騙されて行ってみたりする。それがハレの日の食になっていますが、やっぱりめりはりのある食を営んでいたんだな、だからこの日を楽しみにできた。だから、一生忘れない食の記憶として、生涯もっていける。

     そういうのを3年ぐらい毎年やっていますと、やっぱり食べさせたくなるんです。女の人って偉いなと思うんです。ぐちゃぐちゃにされながらも嬉しそうな顔をするんです。食べられない料理ぐらい空しいものはないんです。みんなペロリと平らげられて、「ごめんね」と言うと、「ううん、いいの、いいの」って。そういうのを見ていると、もっと食べさせたいと。


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