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1 農林水産大臣賞 <食生活改善分野> 食ネット鳥栖

スクラム組めばみんなHAPPY!〜立場を越えて「食」でつながり、人を育む〜

発表者:藤崎彌生さん

 佐賀県は「佐賀のがばいばあちゃん」でご存知の通り、山、川、海の豊かな自然に恵まれ、そのなかで最も東部に位置する鳥栖市は、交通の要所として都市近郊の田園地帯です。

 平成17(2005)年に「食育基本法」が制定されましたが、「食ネット鳥栖」発足のきっかけは、すでにその数年前、平成14年に遡ります。県の現地機関である鳥栖保健所が主催した、食と健康をテーマにしたイベントで、三神農業改良普及センターに依頼があったことが最初でした。職員間の個人的な協力がイベントの成功に大きくつながったことから、本当の意味での連携活動が始まったのです。やがて平成16年度には、企画段階からアイデアを出し合う関係にまで発展し、「食ネット鳥栖」を立ち上げました。

 食事で健康づくりを進めたい保健サイドの思い、そして安全安心な食の供給・地産地消を進めたい農業サイドの思いが重なり、互いの専門分野を発揮しつつ、できないことは協力し合おう、そうすれば相乗効果が生み出せるはずだ、と確信しました。キーワードは「健康・安心安全そして相互利益」。そして裏に隠れた大事なキーワードは「儲かる食育」です。

 食ネット鳥栖のメンバーは、県の現地機関である保健所・農林事務所・普及センターの現地機関三者を初め、地元の鳥栖市・大学・農協・直売加工組織・飲食店、食生活改善協議会・保育園・小中学校など、三十数組織にまで亘り、大きなネットワークが広がってきました。

 食育を推進している関係者や、マスコミの方から「どうして食ネット鳥栖は、そんなに上手くいくの?」とよく質問されます。その答えとしては確かに、いくつかの点があります。

(1)月一回開かれる斬新な定例会
 食ネット鳥栖には、事務局はありません。会議は県の現地機関三者と地元の鳥栖市の四者で会場をまわし、司会進行と協議事項の取りまとめをします。まったくの輪番制です。
 なぜ行政の既成概念を取っ払ったか。これは事務局を担う機関に、事務処理の業務が増えて負担をかけることになるからです。つまり、事務局以外の機関に依存心が芽生えることを避けたかったのです。このことは、皆で楽しく力を合わせてやるための重要なポイントになりました。

(2)経験や役職の関係なく、フリーな発言がモットー
 ですから皆が楽しいムードの中、建設的な意見やアイデアが出てきます。これにより各担当者は、手に入りにくかった情報や素晴らしいアイデア、時には解決の手法を学べる訳です。
  さらに強みは、民間である飲食店・大学・CSO(Civil Society Organizations:NPOやボランティアなどの市民社会組織)の方々に、課題の必要に合わせて出席してもらえることです。しかし、官民の壁を越え県民協働で仕事を進めていくことの難しさも経験させられています。

(3)予算がない
  お互いの機関で従来持っている事業予算を活用し、相乗りで効果を倍増させています。たとえば保健サイドは21世紀に向けての健康づくりを推進する「健康アクション佐賀推進事業」などを、農政サイドは消費者に軸足をおいた食等の「絆プロジェクト」であったりと。このような連携活動の中で取り組んできたことにより、地域色豊かな課題が見えてきました。

 食ネット鳥栖には、「命と緑を守るネットワークづくり」をテーマに3つの推進項目があります。

  1. 食と農の総合的視点に立った健康づくりの推進
  2. 環境にやさしい農産物の地産地消の推進
  3. 食農教育の推進

 推進項目の一つ目については、「食と農 町の保健室」という取組みがあります。平成16年度より「健康アクションの日」の普及啓発を目的に、鳥栖駅前の大型ショッピングセンターの一角で出前保健所をスタートさせました。血圧や骨密度・体脂肪測定、そして健康・栄養相談を実施するとともに、ゴーヤやアスパラガスなど地元農産物の農産加工品、それらの調理法の紹介など、食と健康に関する情報提供を行なっています。今年は、2カ月に1回程度の開催です。保健と農業の両面のテーマを年度始めにきちんと設定し、実施に臨んでいます。

 2006年10月23日に開催した会場の様子を、ご紹介します。この日のテーマは、「地域に伝わる料理を知っていますか? 安全安心な食材を知っていますか?」でした。
 まず、いつも行列ができる骨密度測定のコーナーでは、
「どがんしたらいいですか?」
「おいくつですか?右足を乗せて下さい。踵で測るんです」
そして、その結果を持って…「結果はどうでしたか?」
「大丈夫ですよ、牛乳や小魚をもう少し食べたらいいでしょうね」と健康相談が進められます。
 そして隣のコーナーでは、
「皆さん、お待たせ致しました。ただ今から地元のエコファーマーの筑紫さんと有機栽培農家の古賀さん、お二人の公開トークショウを始めます。滅多に聞けない農産物の栽培現場のお話が、じっくり聞けますよ。どうぞどうぞ、お集まりください」
  その横の方では、農産物の環境にやさしい栽培方法、実物の紹介もしながら、どこでそれらが手に入るかを示した手作りのマップの配布も行なっていました。

 さて、推進項目の二つ目、地産地消の展開です。平成17年度には「食ネット鳥栖」を通じた、学校給食の関係者への地元農産物の情報供給システム、いわゆる「鳥栖モデル」を作り上げてきました。 
 まず、学校給食関係者とエコファーマーの意見交換会を企画し、住民の健康状態から見えてくる食生活の問題点と大切さを、地元の医師から症例を通じて話をしてもらいました。その後、給食関係者と農業関係者の意見交換会も活発に行なわれました。

 さらに、生産者が学校給食の現場や子供達と給食を食べながら交流したり、逆に給食現場の栄養士さんや調理員さん達が、アスパラガスのハウスや直売所・集荷場を視察し、生産から流通までの流れを理解してもらいました。

  平成18年4月の新学期より、地元で生産されている野菜が、直売所・集荷場から優先的に学校に搬入され始めました。これが動き始めた「鳥栖モデル」です。ポイントは、農産物直売所から小学校の栄養士さん達へ、(給食の日の)一ヵ月前に「今が旬通信」として食材の情報が送られることです。その情報から栄養士さんが献立を考え、納入業者に発注をかけていきます。業者は給食費からオーバーしないように価格の調整をしながら、可能な限り地元産を納めてもらいます。

 また、導入後もシステムをきちんと動かし継続していくために、鳥栖市が調整検討会を受け持ち、栄養士・調理員さん達も入って勉強会を続けています。これらの多くの方々の熱い思いとご苦労のおかげで、学校給食に地元産のアスパラガス・タマネギ・ジャガイモ・ホウレンソウ・ダイコン・ハクサイなど数多くの品目が使われるようになり、なかには納入量も三倍近くまで増えた品目もでています。

 そして今年初めて、アスパラガス生産農家のオリジナル献立が、給食のメニューにあがりました。学校では子供達に、放送を通じて食材の情報が紹介され、給食だよりでは、地元の食材の紹介と献立のメニューが保護者にわかり易く伝えられています。ここでも、農家と子供達と絆が生まれはじめています。そして、このようなことが給食費滞納の対策につながることを願うばかりです。

 また、地産地消のもう一つの課題である「LOHASな鳥栖メニュー」も推進しています。これは、昨年度実施したアンケート結果の強い要望を受け、進めているものです。食ネット鳥栖では、定義を決めて、健康づくり協力店を中心に推進をしています。

  1. 県産食材を一品目以上、または環境に配慮した農産物、有機特別栽培農産物、エコ農産物を一品目以上使用していること
  2. 栄養的な観点によりバランスガイドに配慮したメニューを作成していること
  3. そしてこのような情報を表示し、お客様に伝える努力を行なっていること

 環境にできるだけ負荷を与えないライフスタイルを選ぶ県民を増やしていくことが、21世紀の最終課題ではないでしょうか。そして、ネットワークにおける活動の効果が見えはじめています。

 まず一つ目は、県民協働による画期的なネットワークの実現が図られ、食育の効果的な推進方法となったことです。二番目には、環境に配慮した地域農産物が学校・地元飲食店に供給できるシステムが構築されつつあること。 そして三番目には、保育園や小・中学校で農家やヘルスメイトの方々から学ぶ食育の機会が増え、食と農の絆が強くなっていっていることです。

 しかしながら、担当の職員が異動しても変わらない内容で活動を継続していくこと、地域で展開している具体的な課題への取り組みの実践・成果・研究事例を、食育に関わる者達が一同に会し話し合う場をつくることなど、今後の課題も残されています。

 最後になりますが、「食ネット鳥栖」はこれからも、地域課題の解決に向け多くの支援を受けながら連携活動の輪を広げ、一歩一歩 着実な歩みを続けていきます。

「スクラム組めばみんなHAPPY!」

(要約文責:地域に根ざした食育推進協議会 事務局、撮影:倉持正実)


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