【表彰式に戻る】

2 農林水産省 消費・安全局長賞 <教育分野> 鶴田町立菖蒲川小学校

ぼくらの元気は「朝ごはん条例」から〜食から栄養・地域から愛情〜

発表者:長谷川美保子さん

 青森県鶴田町は平成14年に、全国に先駆けて「朝ごはん条例」を制定しました。健康長寿の町をねらいとして

  1. ご飯を中心とした食生活の改善
  2. 早寝・早起き運動の推進
  3. 安全安心な農産物の供給
  4. 地産地消の町の食材の提供
  5. 食育推進の強化
  6. 米文化の継承
という、六つの基本方針を定めています。

 これは全国でも活力ある珍しい条例だと思っています。
  私自身教育に携わる者として、平成17年度鶴田町に着任してから、知育・徳育・体育を支える食育はどうあればいいのか、今の時代に家族のあたたかさ、旬の食材の美味しさ、食に対する意識をどのように子供達に伝えていけばよいかを考えました。そしてこの「朝ごはん条例」を学校の教育活動に位置づけ、本校の食育学習・食農教育の推進に取り組むことにしました。

 「ぼくらの元気は『朝ごはん条例』から」をテーマとし、「食から栄養」「地域から愛情」と決めました。そのなかで、「米文化の継承」「地産地消の体験学習」「早寝・早起きの生活リズムの確立」を、食育推進と関連させながら、学校教育に位置づけました。学校だけではできないことですから、行政ならびに校区の住民の、協力的な支援・指導が伝統的に位置づけられていることも、恵まれた教育環境だと思っております。

 まず、朝ごはん条例から学ぶ「ぼくらの食育・食農学習」の一番目は、「ご飯を中心とする食生活の改善」です。
  現在、町の学校給食は、すべてご飯給食です。お米は、鶴田町で生産された「鶴の輝き(つがるロマン)」を使っています。給食の時はステンレス製の保温ジャーに温かいご飯が運ばれます。そのほか町内の道の駅から、地域の方々が作った野菜が産地直送で運ばれ、献立のほぼすべてを賄っています。
 また四月の参観日に一年生は、保護者と一緒に、ご飯の大事さ、ご飯の美味しさ、家族で食べる心のあたたかさを学んでもらいます。また技術的なことは食生活改善グループの方から、栄養的なことは栄養士さんから学び、全校で朝食作りの体験もしております。

 二番目の「米文化の継承」のための食農学習として、五年生は稲作体験を行なっています。総合学習の時間を使って「種もみの発芽」「苗をおろす」「苗床おろし、ビニールをかける」作業をし、5月の中旬には全校で、大きくなった苗を田んぼに植えます。全校生徒73名の小さな学校ですが、90坪の田んぼを借りて、地域の農家の方の指導のもと、町長さん、教育長さん、JAの皆さん、保護者の皆さんがお出でになっての田植えです。
 また5年生は、黒石にあります県の農林施設で、専門的な勉強もすることができます。

 そして、8月中旬に稲が花をつける時期、たった2日か3日の時期ですが、五年生はそれを逃すことなく、今年度も立派な稲が実りました。学校の周りのフェンスに自然乾燥させ脱穀し、それから地域の精米所に持って行き、133kgのもち米「あねこもち」ができあがりました。

 本校では10年以上、三世代が交流する夏祭りと、秋の収穫感謝祭を行なっております。200人近い地域の方々を集めて、餅つき・試食会・収穫感謝祭を行ないます。白い頭巾をかぶった老人クラブのおばあちゃん方の「合い取り」のもと、73名の子供一人一人が杵を持ち、60kgのもち米を搗きました。杵を持たない子供達は、合間におはじきをしたり、お手玉をしたり、あやとりをしたり、地域の方々とふれあう機会ももっております。
 6年生は同じ総合学習の時間で、りんごの栽培学習をしました。4月下旬、マメコバチ(りんごの授粉作業をたすけてくれるハチ)が動く時期から学習が始まり、良い実をつけるために花をどうしたらよいか、りんご農家から学び、無駄な花を取る花摘み、袋かけ、そして非常に苦労がいる袋はぎ学習をしました。

 まず、一人3個のりんごを受け持ち、名札を付けます。自分が作ったシールや、「祝卒業」という絵文字のシールを貼ったりんご(卒業式の式場に飾るため)が、自分の分担です。秋に赤く色づき、実ったこの自分用のりんごは、3月まで貯蔵してもらいました。
 さらに、そのほかのりんごは、りんご農家の方が経営する加工場に持って行き、子供達が加工場でジャム、ジュース、シロップ煮に加工しました。2年目の今年も、540本のビンに(みんなの)集合写真をシールにしたラベルを貼りました。これらは道の駅で町の一人として、販売活動もしています。子供達は売る体験まですることで、地産地消・産地直送・地場産品の愛用の学習ができました。

 さらに今年はお父さんやお母さんが、減反政策で米をつくらなくなった田んぼに、大豆をつくりました。道の駅の隣に大豆加工センターがオープンし、テンペ・がんもどき・豆腐・米の粉を利用した米粉パンなどの加工直売所が始まったことから、私達も大豆を使って調理をしたいという声があがり、生活改善グループから技術的なことを教わって、親子で調理実習に挑戦しました。

 一晩、水に寝かせた大豆を自分達でミキサーにかけ豆乳を作ります。豆乳の温度を計るのは非常に難しいことのようで、私も初めて体験しました。これににがりを入れて、美味しい自分達の大豆で自分達の豆腐ができあがりました。
  生活改善グループの方におからを捨てることがないようにとお願いし、子供達はおからを丸めたり、ねじったり、いろんな形にしてドーナツ作りにも挑戦しました。ほかにお豆腐・おからサラダ・おからを使ったフワフワどんぶり・がんもの煮びたし・そして豆腐の入った玉子スープで、美味しい食卓テーブルができました。

 このように、私達の町に朝ごはん条例ができたことはもとより、地域の基幹産業である米作り・りんご栽培・ぶどう・大豆を教育環境に取り入れ、活動に位置付けています。私の経験上、学校の要望が、地域や保護者のそれと一致することは、なかなか上手く叶うものではないことを体験している今の学校の中、行政や地域の教育力を導入して根づいた、十数年間の教育活動が、本校の子供達に与えられております。
 そして、栄養的な専門知識を町からいただき、父や母の作った大豆・りんご・米を子供達が心のぬくもりとして本当の美味しさを学び、作る過程で学習する課題を見つけ、それを解決する子供達の学習力が身に付きます。親子で食べる心のあたたかさも教えることができます。

 朝ごはん条例を大きなベースにし、地域に根ざした食育活動として教育効果をあげることができました。米文化を継承する子供達、地産地消の学校給食、食育推進食農学習、そして生活リズムの立ち上げにより、本校は100%朝ごはんを食べて来るようになり、町全体でも98%の児童生徒が、朝ごはんを食べて来るようになりました。
 この早寝早起き、朝ごはんと相関させた教育活動は、行政並びに学区民の協力的な支援指導が地域に根づいているからこそできる、大きな教育効果だと思っております。

(要約文責:地域に根ざした食育推進協議会 事務局、撮影:倉持正実)


【表彰式に戻る】