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4 農林水産省 消費・安全局長賞 <農林漁業分野> 愛南町ぎょしょく普及推進協議会

地域ぐるみで取り組む「ぎょしょく教育」〜食育で水産と地域を紡ごう〜

発表者:浜田伊佐夫さん、兵藤重徳さん、若林良和さん、阿部覚さん

 愛媛大学農学部の若林です。それでは、私たち、愛南町ぎょしょく普及推進協議会の取り組みを発表させていただきます。私たちの活動には、3つのポイントがあります。

 第一に、産・官・学、つまり、愛南漁協、愛南町役場、愛媛大学の三者と、地域の人たちの間で、食育活動について連携・協力・支援する体制が構築できたことです。
 第二に、水産分野の食育活動を通して、地元の水産業を理解することができ、地域のことを理解する教育、つまり、「地域理解教育」が実践できたことです。
 第三に、魚・水産版の食育である「ぎょしょく教育」プログラムが実践できたことです。私たちは基盤プログラムと展開プログラムを設けましたが、今回の報告では、時間の制約上、基盤プログラムを紹介させていただきます。ご了承ください。

 愛南町役場水産課の兵頭です。では、愛南町の概要を紹介させていただきます。愛南町は四国の西南地域、愛媛県の最南端に位置し、高速道路も、鉄道もなく、交通の不便なところです。平成16年10月に、5つの町村が合併して愛南町が発足いたしました。「5つの町と町が一緒になっても、まだ、市にならないの」と、よくいわれるのですが、人口27,335人の町です。

 愛南町には特産品として、いろんな農水産物があります。和製グループフルーツと呼ばれる河内晩柑は日本一の生産量を誇っています。カラフルな貝殻が特徴のヒオウギ貝も、生産量日本一です。
  それ以上に、カツオです。カツオといえば、高知県が有名ですが、カツオの水揚量が四国一の漁港は、愛南町の深浦漁港なのです。愛南町と愛南漁協は目下、「町の魚」としてPRしながら販売促進に努めております。その他に、養殖マダイは全国の生産量の約1割を出荷しています。

 また、海岸の景観としては、絶景のリアス式海岸があり、磯釣りのメッカとして全国から釣り客が訪れます。それから、日本で最初の海中公園には、サンゴ礁が点在しており、グラスボートで見ることができます。そして、昨年、水産庁の「未来に残したい漁業・漁村の歴史文化財産百選」に選ばれました石垣の里「外泊の石垣」もあります。このように、愛南町は自然が豊かなで、風光明媚な町です。

 しかし、愛南町の基幹産業の一つである水産業は大変、厳しい状況が続いています。平成に入ってからも、漁業や養殖業の生産量、生産額ともに減少の歯止めがかかりません。特に、昭和57年に400億円近くあった生産額は、平成12年以降、200億円に落ち込んでおり、地域に大きな影響を与えています。他方、食生活での「魚離れ」が進んで、魚の消費も厳しいものがあります。そこで、地元の水産業を地域の人たちに理解してもらいながら、地元での水産物の利用拡大も図るために、魚食普及に努めております。

 合併前の旧城辺町に「城辺町魚食普及推進協議会」があったのですが、合併して、「愛南町魚食普及推進協議会」になりました。その協議会では、どこでもやっているような、調理実習と会食で魚の利用拡大に努めたり、学校給食でタイを利用したりしていました。しかし、ただ「食べる」だけでは、なかなか利用拡大につながらず、食育活動にならないという疑問を感じていました。そんな時に、地元の愛媛大学から「ぎょしょく教育」の話がありまして、一緒になって新しいプログラムを実践することにしました。また、協議会の名称も「愛南町ぎょしょく普及推進協議会」と、ひらがなに変えました。

 県名にも町名にも「愛」が付く町は、愛南町だけです。「愛」がいっぱいの愛南町から、「ぎょしょく教育」発祥地として、今後も「ぎょしょく教育」の発信をしていきたいと考えています。

 兵頭さんから、愛南町の概要と「ぎょしょく教育」導入の経過を説明してもらいました。ところで、私たちは、「ぎょしょく」を漢字ではなく、ひらがなで表現しています。というのも、私たちは、「ぎょしょく」に特別な意味を持たせているからです。では、具体的にどのような意味があるのか、私どもの大学院生の阿部くんから説明してもらいます。

 愛媛大学の阿部です。それでは、「ぎょしょく教育」のコンセプトについて説明させていただきます。従来の魚食に加え、魚の生産から消費までのフードチェーンを意識し、さらに、文化的な面まで含んだ、広い意味の「ぎょしょく」です。その意味は全部で6つあります。簡単に紹介しましょう。

 第1の「魚触」は、文字通り、魚に直接、触れる体験学習です。第2に、「魚色」ですが、これは魚の生態や栄養など魚が本来、持っている情報を学ぶ学習です。第3の「魚職」は、小学校5年生の社会科授業で水産業を学びますが、魚の生産・漁獲から、加工、流通に関する職業のことです。漁業には「獲る漁業」と「育てる漁業」がありますが、そのうちの「獲る漁業」の内容です。第4に、「魚殖」は愛媛県が全国屈指の養殖業の盛んな地域であることから、「育てる漁業」への理解を深める学習です。第5に、「魚飾」ですが、祝い鯛や飾り海老のように伝統的な魚文化や郷土料理に関する学習です。そして、第6に、従来から取り組まれている「魚食」です。私たちの「ぎょしょく教育」のコンセプトは、従来の単なる「魚食」ではなく、第1の「魚触」から第5の「魚飾」までの一連のプロセスを経て、第6の「魚食」に到達するもので、魚をより精緻で体系的に捉える教育です。ここに、大きな特徴があるのです。

 では、「ぎょしょく教育」の実践プログラムのうち、基盤プログラムの具体的な内容について、ビデオで紹介したいと思います。プログラムは「講義」・「調理」・「試食」の3部構成です。
 まず、第1部の「講義」では、児童が体育館に集まり、「魚の漢字クイズ」から始めます。児童の保護者も、後ろで参加していただき、一緒に魚のことを勉強してもらいました。難しい漢字も多いのですが、児童が積極的に答えているのは印象的でした。
  なお、「講義」のなかでも、児童は、単に魚のことを聞くだけでなく、愛南町で水揚げされた魚を実際に触れました。そして、魚の名前と実際の魚が直接、一致するかどうかも、大きなポイントです。最初、おっかなびっくりだった、児童たちの表情も、魚を触っているうちに和らぎ、楽しそうでした。また、「魚殖」についても、実物のタイを示しながら、天然物と養殖物の違いも理解してもらい、双方向で授業を進めました。

 次に、第2部は「調理」です。アジをさばいているところです。愛南漁協女性部の方々に指導していただきながら、児童は自ら包丁を握ってさばいています。ほとんどの児童が初めてのようで、悪戦苦闘しています。でも、児童たちの表情は豊かですね。周りにいる保護者の方々の対応も、いろいろでした。その後、愛南町内で魚屋さんを営んでおられる職人さんにカツオをさばいてもらいました。児童はプロの包丁さばきに感嘆したり、自発的に質問をしたりしていました。そして、児童たちはそのカツオをワラ焼きのタタキにしました。

 最後に、第3部の「試食」です。当日の授業の内容をふり返りながら、児童とその保護者、学校関係者、協力者など全員でカツオやタイ、アジを用いた郷土料理を食べました。児童たちは、おいしそうに、残さず、全部、食べてしまいました。

 このような「ぎょしょく教育」授業の実践には、地域の産・官・学に加え、地域全体で、地域の組織ぐるみの協力なくして実現できません。その意味では、第7の「ぎょしょく」として、「魚織」、つまり、「ぎょしょく教育」を実践する組織、つまり、地域協働システムの構築が重要であると感じました。

 では、若林が、今回の活動発表のまとめをさせていただきます。その実践的な効果としては、おおよそ4つにまとめられます。第1に、魚に触って調理する経験、つまり、「五感」をもとにした「体験」の重要性です。第2に、「ぎょしょく教育」の実践により、児童とその保護者に対して、地元の水産業に関する理解が深まったことです。第3に、幼児期から「魚触」を推進することの有効性です。第4に、地域社会の関係を豊かにする「魚織」は重要で、「ぎょしょく教育」で水産と地域をつむぐことができることです。

 それから、今後の課題としては、「ぎょしょく教育」の質的な向上を目指すことで、具体的には、ツールの開発とマニュアルの作成があげられます。私たちは目下、それらに取り組んでいます。まず、ツールとして、食事バランスガイドなどを参考にして、魚や水産のことを楽しく学べる、お魚カード「ぎょショック」を開発しています。さらに、この取り組みを普及させるための「ぎょしょく教育」マニュアルも作成中です。これらのことを通して、「五感」を通した地域水産業に対する理解を深め、地域ぐるみで、更なる紡ぎ合いの支援体制を拡充したいと考えています。

 最後に、今日の発表では、私ども、学の愛媛大学、官の愛南町役場に加えて、産の水産業界の代表者も登壇しています。「愛南町ぎょしょく普及推進協議会」の会長であり、愛南漁協の浜田伊佐夫組合長からも、一言、補足させていただきます。

 浜田です。一言、付け加えて説明を申し上げます。冒頭に紹介がありましたように、愛南町は小さいですが、水産資源に恵まれた町で、50種類以上の魚が水揚げされています。愛南漁協は水揚げした魚を、地元はもとより、全国へ発送しております。その一方で、「魚離れ」が進み、女性の「包丁離れ」、「出刃離れ」の時代になっています。愛南漁協として、愛媛大学や愛南町役場の姿勢と行動を頼もしく思っております。したがって、今後、本協議会としては、三者に加えて、地域の教育関係者や地域の皆さんと、しっかりとスクラムを組んで、水産版の食育活動である「ぎょしょく教育」を推進していきたいと思います。今後も、私たちの「ぎょしょく教育」活動に是非、ご期待ください。では、これで、発表を終わらせていただきます。御清聴、ありがとうございました。

(要約文責:地域に根ざした食育推進協議会 事務局、撮影:倉持正実)


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