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地域に根ざした食育コンクール2008表彰式・活動発表会


◆審査講評

地域に根ざした食育推進協議会会長 坂本元子

 地域に根ざした食育コンクール2008受賞者の皆さま、本当におめでとうございました。長い間のお力、活動が見事に実った年だと思います。
 受賞された30事例について、応募の分野別に審査の評点等を中心に、簡単に講評させていただきます。

【食品産業分野】

 今年の特徴として挙げられるのは、食品関連企業の、地域に根ざすことを目指した意欲的な活動の事例が非常に多く応募されてきたことです。そのなかから、今年の最優秀賞(農林水産大臣賞)として、「あいち食育サポート企業団」が選ばれました。
 この「あいち食育サポート企業団」は、愛知県発祥の食品製造、流通関連企業8社が自発的にお集まりになり、お互いの得意分野のノウハウを持ち寄って、愛知県内で料理教室や地産地消レシピコンテスト、あるいは農業体験の支援など、幅広い活動を実施しておられます。
 特に幼少期からの幅広い県民を対象に、「おいしく、たのしく、バランスよく」をモットーに、愛知の伝統的な食文化や食材を活用した食育活動を、県や食育関係団体と連携して取り組んでおられることが、評価のポイントになりました。

 このほか食品産業分野からは、京都市のNPO法人日本料理アカデミーの「日本料理に学ぶ食育カリキュラム」が優秀賞に選ばれました。この法人は、日本料理店の店主、それから調理師学校の先生などによって組織されたもので、本格的に日本の食文化を伝承していこうというねらいがあります。京都固有の食材の栽培体験や、だしのうま味の味覚体験など、調理だけでない総合的な食育を、小学校の先生との連携で立ちあげた、非常に先進的な実践でした。

 優良賞に選ばれた「たねや・おにぎり保育園」は、菓子製造企業の企業内保育園として、その名の通り、ご飯中心・野菜たっぷりの献立で、子どもたちの「食べる意欲」、「生きる力」を育んでいる優れた事例でございました。
 現在では、企業が独自に保育園を経営し、社員の労務支援を続けておられるところはいくつもございます。企業の工場に囲まれた保育園で日本食中心の昼食を提供するという、和菓子企業ならではの活動ということで、表彰されたものです。

 同じく「食品産業分野」で奨励賞に選ばれたのは、日本生活協同組合連合会です。「たべる*たいせつキッズクラブ」の取り組みは、全国の生協がその地域ごとに、家庭でできる食育を「おたよりカード」のやりとりで応援しておられる活動です。子どもがワクワクする教材をつくり、それをサポーターの生協スタッフの方々(だと思いますが)の支援の努力が評価されたものです。最近ではこの企業のネットワークづくりが各地で活発な活動を始めるようになりました。

【食生活改善分野】

 食生活改善分野では、島根県川本町の「単身赴任お父さんの料理教室」が優秀賞を受賞しました。食生活が偏りがちな単身赴任者の食生活を地域の仲間で支え、お父さんや独身男性の支援に始まったのがこの会でございます。交流をはかるだけでなく、料理の腕前を発揮する場として、「食べる」ふれあいを地域に広げる「料理サミット」も開催しておられます。
 そういう業績や、あるいは関西の災害の時だと思いますが、近郊で起こった災害には、食事支援に積極的に参加されたという立派な業績もあり、20年以上も続く活動の継続性と発展性が評価されております。

 ほかに食生活改善分野の受賞事例では、市町村自治体の食育・健康福祉担当と市民や町民、地域団体との連携活動に意欲的な取り組みが目立ちました。
 たとえば、静岡県富士宮市の「いただきます検定」、東京都武蔵野市の「親子食育ウォーキング教室」、群馬県玉村町の「子育て支援ボランティア活動(和い輪いネットワーク)」、長野県佐久市の「佐久ぴんころ長寿いろはかるた」、広島県尾道市保健推進員連絡協議会向島地区(むかいしまちく)の「エコ・クッキング」、福岡女子大ボランティアグループの「遊んで学ぶ食育活動」など、いずれも活動内容の「創造性―新たなアイデアや工夫」が評価のポイントになって受賞されたものです。

【教育分野】

 教育分野は今年から少し様相が変わりまして、食育だけでなく食農教育が活発に見られるようになりました。

 給食から地域の自給力を見つめた徳島県美馬(みま)市立岩倉小学校の「見直そうぼくのわたしの食生活〜給食食材の自給自足を通して」が優秀賞に選ばれました。この学校では、給食の食材の「自給」栽培を手がかりにして、学校区や地域の農業が生み出す食べ物の大切さを学ぶ取組みです。
 農地を借りて、子どもたちが育てた野菜を学校給食に使う、あるいは自作した野菜が地域の食物の「自給率」の向上に貢献したのはどうしてか、という検証もされており、どれくらい自分たちの手で自分たちの町の自給率を上げたかという、教育的要素が含まれている点が評価されました。

 ほかにも「教育分野」では、栽培体験を土台とした、いわゆる「食農教育」「教育ファーム」の実践が多く集まりました。

 北海道の芦別(あしべつ)小学校山形県の二井宿(にいじゅく)小学校新潟県の美守(ひだもり)小学校などの取組みは、栽培体験の成果物を給食や学校で(休暇中だと思いますが)、全学校で合宿をする時の食材自給に使われているという、いわゆる「課題設定型」の食育活動がたいへんユニークに取り入れられておりました。
 これらの活動は、自分たちでつくった食べ物をいただく、つまり生物や動物の「いのち」をいただいているという、食物へのありがたさと感謝の意を教育の中で取り組んでおられるところが特徴的でございました。

 また、東京都世田谷区雲母(きらら)保育園の「3歳児からの自立型給食」、長崎県柚木(ゆのき)幼稚園の土からつくって自給をされている「生ゴミや牛フンの活用」、東京都足立区平野小学校の「自由栽培活動」、徳島北灘(きたなだ)中学校の「鳴門わかめで元気になる」食育総合活動など、幅広く深みのある食育の取り組みが受賞の対象になりました。

 高校からの応募もたいへん多くなってまいりました。静岡県磐田(いわた)農業高校では、女子生徒が地元の幼稚園児と、マンツーマンでふれあいながら「教えることで自分も成長する」、こういう交流の場の食育活動が優良賞に選ばれました。

【農林漁業分野】

 「農林漁業分野」で優秀賞に輝いたのが、熊本県上天草(かみあまくさ)市の若手農業後継者による4Hクラブの実践です。地域の若手農業者の減少に対して、地域農業の伝承という農業県としての課題と、小中学校での教育活動を結びつける、新たな段階へのチャレンジが評価されました。

 そのほかの受賞活動として、島根県津和野町の「なよし農業小学校」大分市水産物流通加工協議会の「関(せき)アジフライによる魚離れへの挑戦」、これはたいへん贅沢な活動で関アジをフライにして食べる挑戦でございました。福井県勝山市の「おにぎりの会」の取組み、長野県「宮田学校給食を育てる会」の取組み、いずれも地域の子どもたちに、ふるさとの豊かさを伝えようとする農林漁業者の熱い思いがこもった食育活動でございました。

【食育ネットワーク分野】

 今年は食育ネットワーク分野が、たいへん幅広い活動を始めるようになりまして、自治体と他の集団、あるいは個人と集団のネットワーク組織による活動がよく目立ちました。

 優秀賞として静岡県三島市の健康増進課が「三島市食育基本計画」に沿って、市民の心豊かな食卓づくりを支援する取組みが受賞されました。
 三島市食育推進会議を構成する地元の企業や商店と連携して、月に1回19日を「食育の日」に決め、その日は残業のない日にして、早くお家へ帰ろう、お家で楽しく夕食を食べようと、地域と企業が連携して活動をやっておられます。これを「家族団らんの日」と制定しておられるようです。その他、地元産のジャガイモ・メークインを使った「みしまコロッケ」などを、ふるさとの味として定着させるなどの後押しもございました。

 ほかに食育ネットワーク分野の受賞団体では、大分県の「食育ネット」、福岡県の「ふくおか食育軍団」、いずれも、志を同じくする大学の先生などの専門家が集まって、地域に根ざした多彩なプロジェクトを展開しておられます。
 また、埼玉県の「秩父市農業福祉会」は、高齢者のグループが荒れた遊休農地を再生し、子どもたちの食農体験を指導するものもございます。宮崎県の「NPO法人天岩戸(あまのいわと)自然学校」も、行政・民間の垣根を越えて集まった人たちが、地域の産物を生かしたいわゆる「こびる」を、若い世代に伝えようとするユニークな取組みでございました。

おわりに

 以上のように30団体が展開されていますが、このコンクールも8回目を迎えまして、活動の内容ならびにネットワークの拡大など、非常に充実した活動が目立つようになりました。
 また先人の活動には、モデルとなるような普遍性のある活動が多くありましたので、これから新しく始めようとする方々の参考になる活動がたくさんございます。それを自分の地域でどう具体的に生かしていくかという賢い知恵で、企画をされたものがございました。
 幸いにこのコンクールで受賞された活動は、それ以降も継続され、さらに大きく展開されているところが多くございます。個人で受賞された方が、その2年後にはネットワークをつくり、全国規模のネットワーク活動をしておられる場面もございました。
 このあと5つの活動発表、30事例のポスターによるポスターセッションがございます。ゆっくり先人の活動を学ばれ、今後ともいい活動をお続けいただきますことを期待しております。

(文責:地域に根ざした食育推進協議会 事務局、撮影:冨田亮輔)


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