【「表彰式・ステージ発表会」に戻る】

3 農林水産省消費・安全局長賞 <教育分野> 徳島県美馬市立岩倉小学校

見直そう!ぼくのわたしの食生活! 〜給食食材の自給自足を通して〜

発表者:佐藤益正 さん

■地域の理解に支えられて

 徳島県美馬市立岩倉小学校からまいりました佐藤と申します。それでは本校の取り組みを発表させていただきます。
 最初に、本校について簡単にお話します。本校は徳島県北部のほぼ中央に位置し、四国三郎吉野川が形成した河岸段丘の上にあります。自然に恵まれた非常に美しいところにあります。剣山山渓を含む四国山地が南側に、北側には讃岐山脈があり、大変きれいなところです。本校は児童数177名、学級数8、職員数19名の小規模校です。また、共同調理場も併設されており、隣の幼稚園、他の山の方にある学校へも給食を配送しております。

 本校区はかねてより米作が中心で、農業の盛んな地域でありました。現在は、高齢化はしておりますが、児童のまわりにも農業関係者が非常に多い地域です。また、地域全体に学校教育に対し理解があり、さまざまな学校教育活動に対して協力的です。


■テーマ設定の背景

 今回、研究をすすめるにあたって、テーマは「見直そう! ぼくのわたしの食生活!」、サブテーマとして生活習慣病予備軍にならないために「給食食材の自給自足を通して」としました。

 このテーマを設定した背景には次の二点があります。第一点は、ご存じのように徳島県は糖尿病による死亡率が全国一位という不名誉な記録が14年間も続いておりました。第二点は、毎年本校の5年生に対しておこなっています血液検査の結果で、本校の児童のコレステロール値とか平均体重などが少し高めにあったということがあります。

 この二点から、小学生の段階から食や健康に関心をもたせて正しく理解させることにより、将来、生活習慣病予備軍にならないように、自分や家族の食生活に気を配ったり、すすんで運動したりする子どもを育てようと考えました。

■問題も一つひとつクリア

 給食食材を年間通して自給自足するという取り組みを現実化するためには、クリアしなければならないさまざまな問題がありました。でも幸いに、(1)本校は校区が農業の盛んな地域であること、(2)児童の身の回りに農業関係者が多いこと、(3)学校に共同調理場が併設されていることの三点から、やったらできるのではないか、と考えました。

 また、本校は以前から米作りの体験活動や、生活科・総合的な学習の時間で、各学年が野菜作りや米作りをしていました。それらを整理しなおして系統的に計画し直せば、給食食材の自給自足が可能であると判断してスタートしました。

 しかし、年間を通して食材を確保するためには、細かな点で問題がたくさん浮かんできました。
  一つめは、年間を通してサイズ・品質など、食材の安定供給ができるかという点です。二つめは、これまで給食食材を納入していた業者への対応。三つめは、納入時の野菜の状態による調理員さんの負担が増えるということ。四つめは、大量になる野菜類の保管について問題が出てきました。
  一に対しては営農指導員さんの指導の元に育成し「大丈夫だよ」というOKをもらいましたのでクリアしました。二つめは、納入業者に対して十分に研究の趣旨を説明し、ひいては地域の発展につながるのであることを説明し、理解してもらいました。三つめは、全教職員で準備段階から情報を共有して、「みんなで話し合い、計画をする」ことで非常にスムーズにクリアしました。四つめは、JAの予冷庫をレンタルするというかたちで解決しました。

 また、ねらいとして二つをあげました。
 一つは、生活習慣病の予防に気をつける子どもを育てる、二つめは健康志向を高め児童も地域も含めて健康志向を高めることです。
 期待される成果として、一つめは、児童の偏食傾向を減らして、バランスの良い食事をとれるようにする。二つめは、将来生活習慣病を防ぐためのきっかけになったらいいのではないか。それから三つめは、地域をあげて健康志向を高めることができるのではないか。四つめは、農業のすばらしさに気づいて、ふるさと岩倉を愛する気持ちを育てることができるのではないか、と考えました。

■食育、健康教育、体力づくり、三つの観点から

 この研究をすすめるにあたっては、食育、健康教育、体力づくりの三つの観点から迫ることにしました。少し見づらいのですが、これが年間計画です。今の三つを細かく、いつ何があるかということをわかりやすくしてあります。各学年のもっと細かい計画は、食育全体計画というふうに現しています。研究の概要なのですが、大きく二つあります。給食食材の自給自足ということ。二つめは、専門家による料理や健康教室。その二つに分けました。本日は食育に関することについてお話させていただきます。

 食材を自給するといってもすべてできるわけではありませんので、年間の使用量すべてを自給するものとして、ジャガイモ、タマネギ、ブロッコリー。一部を自給するものとして、スイートコーン、大豆、米、ナス、ピーマン、ダイコンとしました。専門家による教室の方には、親子教室とか各学級における料理教室。健康教室は講演会とスポーツ教室、それと学校でおこなわれる毎日の体育的な行事です。

 これは年間の育成計画です。育成する作物を決定するにあたっては、平成18年度末に児童に対して「どういう野菜が苦手かな」という意識調査をしました。その結果、ピーマン、ナス、ブロッコリーがあがりました。平成19年度に、ピーマン、ナスはほぼ100%の自給をして、食べることができるようになったというので本年度ははずしています。ピーマン、ナスはほんのごく一部だけ、1年生が体験していませんので、1年生が少しだけ作ることにしました。米やジャガイモ、タマネギは、保管がきくということで決定しました。

■取り組みのようす

 次に、これからは実際の取り組みのようすになります。

【すべてを自給するもの】

●ジャガイモ
 6年生が中心になって、約300キロ使いました。3アールほどの畑に秋植えと春植えの2回植えました。本年度は天候の不順により、秋植えの分がほとんど使えないという状態になってしまいました。聞きましたら、地域の近くの農家も、ジャガイモは今年、非常にわるかったという話です。

●ブロッコリー
 4年生が中心になっておこないました。写真では非常にわかりづらいのですが、畝が非常に広くなっています。営農指導員さんにより、プロの出荷用の作り方で作っています。ですので、世話をするのに子どもが「畝が広すぎてやりにくい」という面もありました。

●タマネギ
 平成19年11月に植えて、今年は1200本ほど植えたのですが、これも育成の途中で天候の不順によって、薹(とう)が立つというのですが、中にスができてあまりおいしくない状態のものが多くありました。それでも給食には使えるということで使っていきました。

【一部を自給するもの】

●大豆
 1年生が中心になってやりました。種の植え付けから苗を作って、苗を定植して枝豆として収穫して使う分、それから大豆として収穫して使う分としておこないました。2月4日にこの収穫した大豆の一部を使って、1年生の子どもが生活改善グループの方の協力を得て豆腐を作りました。その次の日の給食に、1年生が作った豆腐を使っています。それから、昨年度できた大豆の一部を味噌に加工して、今年の11月からは給食に今の2年生が仕込んだ味噌を使っております。

●米
 米は1300キロほど収穫がありました。これも近くの25aの田んぼを借りて作っています。5年生を中心にしますが、これはもう全学年が関わって育成をしていきます。ここで「かかしの設置」というのがあるのですが、5年生が主に育成しましたが、かかしは4年生の子どもたちが「食べられたら減るから」と言い出して、図工の時間に急遽、工作として作って、それを4年生が設置してくれました。

●スイートコーン
 プロの作り方ということで非常に広い畝で、子どもたちはほんとうに世話がしにくかったのですが、子どもたちはがんばって育成してくれました。見ていただくと、あいだに草がいっぱいはえていますが、農家の方がやっているように手間がかけられませんので、畝と畝のあいだはそのままです。極力とったのですが、あんな状態が多かったです。

●ダイコン
 ダイコンも結構な量で、200本くらいから作ってきました。これも種まきから、子どもたちが一粒、一粒…、一粒といいますが、一つのマルチの穴に二粒入れていきます。二つ生えてきたうちの一つは間引いて、それも捨てないで給食のときに調理員さんがおひたしにしてくれました。ダイコンは11月より収穫がはじまったのですが、給食に毎日ダイコンが出るようになりました。子どもが結構嫌がるかなと思ったら、「おいしいよ」と言って、自分たちが作ったからということもあると思いますが、ほとんど毎日ダイコンが何らかのかたちで入っていました。一部、「こんなに毎日続いて大丈夫なのですか」という声もありましたが、子どもたちはそんなことを気にせず、「おいしい」といって食べていました。

 子どもたちは生活科や総合の時間でいろいろな作物を育成した経験がありましたが、今回のように大量に育成したという経験はありません。また、失敗したら給食で使えなくなるという、子どもなりのプレッシャーもあったようです。また、畑は歩いて7分くらいのちょっと離れたところにありますので、往復に時間がかかり、とくに低学年の子は暑い夏、大変でした。しかし、自分たちが苦労して育成した作物が立派に育っていくようすや、収穫しているようす、またそれを食べているときのようすを見ていると、学年にもよるのですが、夏場暑い中で苦労したということもすべて吹っ飛んでいるようにみえました。

■自給率も数字で検証

   次に、自給自足についての状況です。本年度は5回、自給自足の日として調味料以外の食材を自分の学校で作った作物と、美馬市内の食材で献立を立てた日を設けました。一回めと二回めだけしかそこには写真を出していませんが、今年度は5回やりました。このときにはお世話になったJAの方、農業支援センターの方、生活改善グループの方、地域でお世話になった方々を変わりばんこに呼んで、ご招待して、試食会も兼ねました。

 このグラフは、1月までに給食に使用した野菜類だけの自給率を表したグラフです。26%、自給することができました。右のグラフは、調味料を除いたすべての食材での自給率です。二つともカロリーベースで計算しています。自給自足したのは野菜類がメインだったので、カロリーが低いのでこのような数字になっています。

 本校では、地域と共に食育を推進するということで、自給自足以外にも地産地消にも力を入れました。地元の食材を使って、旬の農作物を新鮮でおいしく、栄養面でもすぐれているということを報せること。また、好き・嫌いをなくす。そして、生産者の取り組みの思いや、子どもたちに伝えることにより、農業のすばらしさ、しいてはふるさと岩倉の良さというのを報せようとしました。このように、アグリサポート美馬からなるべく学校のある美馬市の中でも岩倉地域の食材を中心とした購入を考えました。アグリサポートさんから献立を立てる1ヶ月ほど前にリストをいただいて、それをもとに学校では献立を作成して発注する。それに、アグリサポートさんが提携している農家の方から納品して調理場へ納入するというかたちにしました。今までなかなか購入しにくかった食材というものが結構地元の農家で作られているということで、いろいろな旬の食材を利用できるようになりました。それで献立の幅が非常に広がりました。また他の納入業者にも、可能なかぎり地元産、徳島県産の食材を納入してもらえるようにはたらきかけました。
 4月から1月までの地産地消率は、品目数ベースで49%となっています。

■料理教室やお弁当の日も実施

   こちらは料理教室です。徳島県の栄養士会の方に来ていただいて、自分たちが作ったもの、また美馬市産の食材を使っておこないました。「野菜を使っておやつを作ろう」というかたちでやりました。昨年度は神戸の坂本廣子先生に学校へ来ていただいて、三日間ぶっ通しで「親子料理教室」をやっていただきました。今年度は徳島県の中でおこないました。

  次は、お弁当の日です。去年、香川県の国分寺中学校の校長先生の竹下和男先生に保護者・子どもを対象に講演していただいて、「お弁当の日がやってきた!」というお話を聞いた後、昨年度の6年生が「私たちもやりたい」ということで、昨年度は3回ほどやりました。今年度は、今の6年生が5回やりました。2月5日には、「伝えよう、お弁当の日」ということで、6年生は最後で「こういうものですよ」というのを伝えるためにおこないました。毎回、こうやって計画と自分が作った反省を担任がとってくれています。

 それから、体力づくりとか健康教室にも少しだけふれさせてください。今年度は、地元出身で元巨人軍の水野投手が来て、まずは「スポーツと健康」という講演を親子で聞き、地域の方にも入っていただきました。その後、全児童とスポーツ教室をしました。また健康教室では、生活習慣病の予防についてとか、各学級を回っての栄養職員による栄養指導もおこないました。


■野菜を食べられるようになった!

 研究の結果、野菜を食べられるようになったという子どもが非常に多かったです。地域柄、もとから食べることができるという子もいるのですが、まったくはじめと変わらないという子は3%ほどで、何で食べられるようになったかというのはやはり「自分たちが育てたから」とか、「料理の仕方がちがうから」という答えが多かったです。それから、自給自足をしてみて良かったという答えも99%です。それから「自然のすばらしさを知った」「農業のすばらしさを知った」「地域の方々の協力があったのが非常に良かった」という理由になっています。

 保護者についても、保護者の方は子どもに比べて少し数字が悪いのですが、多少なりとも気は向けてくれるようになりました。けれども一番端にある「スポーツをする機会が増えましたか」については「変わらない」がほとんどです。やはり、ここらへんが考えていかねばならない点として残りました。

 この研究を通して、自給率を高めたり、子どもや保護者の関心を高めることができました。しかし、天候に左右されて計画に無理が生じることがありました。多少の雨だったら大人でも作業するのですが、子どもなので雨が降ると一切、作業は中止になります。そういうところで非常に無理があって、作物の収量にも影響が出ました。ここで、自給自足の自というのを自分の学校という狭い考えではなくて、自分たちのいる地域という考えにして、もっと地域全体で育成をしてもらったらどうかということになりました。それから、料理教室や健康教室も意識は高められましたが、それを実践化することが十分でなかったので、また今後それを実践化にすすめていくことを考えなければならないと思っています。

(要約文責:地域に根ざした食育推進協議会 事務局)


【「表彰式・ステージ発表会」に戻る】