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地域に根ざした食育コンクール2009 表彰式・活動発表会


◆審査講評

地域に根ざした食育推進協議会 会長 坂本元子

 本日はみなさまおめでとうございました。審査委員会を代表して、講評を述べさせていただきます。
 農林水産省の提唱で開催されておりますこの食育コンクールは、「地域に根ざした食育」をテーマに回をかさねて、本年度は通算9回目の表彰ということになります。今回はカテゴリーを変えまして、「食生活向上」「食農体験学習」「地場産物活用」の3つを募集分野として実施いたしましたが、合わせて211事例の応募がありました。

 昨年より応募数はやや減りましたが、全体にレベルが高く、8人の審査委員はどなたをどうしようと、選考にたいへん苦労いたしました。お手元に、受賞団体の活動概要の資料をお配りしておりますので、ご覧いただきながら、お聞きいただきたいと思います。

 

 

 

 

最優秀賞 農林水産大臣賞

 今回の応募の特徴は、農業高校のユニークな活動が数多く応募されたことです。ひとつには、募集分野に「食農体験学習」というのが入ったことで農業高校の得意技が活かされたのかもしれません。

 激戦のなかで、最優秀賞の農林水産大臣賞を受賞されたのは、熊本県立熊本農業高等学校の「くまおに・くまべん・ひご野菜」と題した取組みです。
 農業高校生が農業の当事者になるための学びを深めるだけでなく、食の当事者・食事のつくり手として自分を磨こうと学校内に呼びかけて、「自分でつくる弁当の日」を2年続けて開催しています。手作りの「熊農おにぎりの日」を助走の取組みとして、翌月には「熊農弁当の日」を実施し、生徒それぞれが「食べ物への感謝」「生産者への感謝」、そして家庭にも温かい笑顔が広がる取組みになっています。

 同時に学校の農場で、熊本伝統の「ひご野菜」を生徒たちが栽培し、学校外に向けて、育て方・食べ方を伝える「地産地消」の交流活動にも取り組んでおられます。
 農業高校が、食と農を結ぶ拠点として、生徒の誇りを高め、地域での存在感を強めていることが、高く評価されました。

 実は「自分でつくる弁当の日」とは、このコンクールの審査員の中に竹下和男先生がおられますが、その方が第3回の最優秀賞を受けた香川県の滝宮(たきのみや)小学校から始まったもので、この取組みが今、熊本だけでなく全国の小中高、大学、さらには企業の方は「ぼく弁」と称してお作りになっておりまして、現在、学校にして560校を越えて広がっていることも、コンクールの主催者として大変うれしいことです。

優秀賞 農林水産省消費・安全局長賞

 今回のコンクールでは、他にも農業高校の、地域に根ざした優れた取組みが目立ちました。次も「食生活向上分野」から、優秀賞の農林水産省消費・安全局長賞を受賞したのが、神奈川県立平塚農業高等学校食品科学研究班の取組みです。

 この研究班では、「ゆっくり・やっぱり」を合言葉に、地元の園児や小中学生などへ食育活動を続けてこられています。2009年からは、約100年以上も前、地元平塚にいた、村井弦斎(げんさい)という食育の先達を研究テーマに選び、弦斎先生の「食育」を現代に活かす活動に取り組みました。 私の大学でも弦斎先生の全集が並んでおりまして、それを見ますと、明治の時代にそれはそれはおもしろい栄養教育の本を書かれていて、それに非常に健康的なメニューがありました。おそらくそういうものを活用しながら一緒に勉強されたのだろうと思いまして、あの全集はみなさまにおすすめしたいという本です。
 この取り組みは、健康な食生活のあり方を、地域の先人から掘り起こし、改めて地域の人たちに伝えていく“創造性”が、高く評価されました。

 同じく優秀賞を、「食農体験学習分野」から受賞したのが、福島県南相馬市立福浦小学校の「大地の恵み“福浦 食の楽校(がっこう)”」の活動です。
 「食育」を、地域に開かれた学校経営の土台に据えた取組みで、中心となる活動は、自然のめぐみを実感し、感謝のこころを育む「食農体験」です。子どもと保護者、父母や祖父母が、田んぼや畑をフィールドに世代間の交流をし、イネ、野菜、きのこなどを栽培して、食べる楽しさにもつなげた体験を重ねてこられています。

 地域の産物を活用した郷土料理「花寿司」などの調理体験も親子で行ない、伝統的な食文化にふれることで、子ども一人ひとりに「郷土愛」が育っていくという様子がみられます。
 「食育で、子どもに育つ郷土愛」を大きな成果として、子どもたちの生きる力、学ぶ力も伸ばしている、「地域に根ざした食育」の優れた到達点として、審査委員の高い評価を集めました。

 次に、「地場産物活用分野」で優秀賞を受賞されたのが、東京都日野市の日野産大豆プロジェクトです。
 都市化がすすむ日野市で、国産の安全な大豆を地元の畑で栽培し、豆腐に加工して、市内の小中学校の給食で子どもたちに食べさせたいという栄養士の願いから、2003年、平成15年に、市の産業振興課が事務局となって始まった取組みです。

 始めて2年目に、市内の全小中学校の給食に日野産大豆の豆腐を提供しました。畑の面積やメンバーが次第にふえて、6年目の2008年には目標だった収量1トンを達成。とはいえ面積が増えると、暑い夏の草取りなどは大変な作業でございます。
 3年前から、このプロジェクトで採れた大豆は、小学校の栽培・加工体験のタネにもなり、いまは市内の小学校13校の学童農園で、児童が育てた大豆で、給食や豆腐作り体験に活用されています。

 今年度のプロジェクトの収穫大豆は、納豆としても給食に登場したとか。都市化の中で緑の農地を守り、子どもたちの給食につないでいく、心のこもったプロジェクトの継続性が高く評価されました。

優良賞 地域に根ざした食育推進協議会会長賞

 次に、優良賞・地域に根ざした食育推進協議会会長賞として、6つの活動事例が選定されました。

 長野県泰阜村(やすおかむら)のNPO法人グリーンウッド自然体験教育センターの、「信州子ども山賊キャンプ」は、参加した小学生が縦割りのグループで自分たちだけで食事をつくり、野菜はすべて地元産のもので、地元の農家との交流も広がる「地域密着型キャンプ」の取組みです。

 愛知県高浜市こども食育推進協議会の取組みは、日本一の瓦産地の食育マスコットとして「カワラッキー」が大活躍し、幼児期から市民全体に笑顔と会話をひろげ、高浜市の食育活動のキャラクターとなっている、ユニークな活動です。

 福井県若狭町立みそみ小学校6年生の、「生き物いっぱいどろんこ田んぼ」の取組みは、田んぼ探しから収穫まで、主として農業学習が主体です。作物も多くの生物と共に生きているという、動植物の命の学習も含まれています。

 和歌山県湯浅町の山田小学校 学校応援団の「プロジェクトS」は、地域の主要な産物を地域の食文化として残す活動です。ここは、醤油発祥の地で、湯浅町の子どもたちが大豆栽培からペットボトル容器の「マイ醤油」づくりまでの体験を、地元の農家や醤油醸造家、行政職員などが「応援団」としてサポートしている、ふるさとの誇りを育てる活動です。

 石川県立翠星(すいせい)高等学校フードテクノロジー研究会の「翠星ベーカリープロジェクト」は、県内唯一の農業専門高校として、地産地消パンの研究をすすめ、県産米粉で「翠星米粉ロール」を開発し、そのおいしさを広げる出前講座を市内小中学校で展開しています。

 高知県高知市立横内小学校 農業応援隊は、子どもたちの米作りから、商品開発、販売まで「地元でとれた農産物」に目を向けた取組みが、地域の農家や企業、JAなどと連携した「農業応援隊」となって、「こどもがつなぐ地産地消」によって、地域全体に広がっております。

特別賞 審査委員会奨励賞

 今年度も200を超す応募がありましたので、特別賞として、審査委員会奨励賞を、12の事例に贈ることにいたしました。

 時間の都合で手短に受賞事例の評価ポイントを紹介しますと、「たべるんず」というキャラクターで園児に食事バランスをわかりやすく指導している札幌市立手稲中央幼稚園

 山形県立置賜(おきたま)農業高等学校演劇部の愉快な食育ミュージカル。その力作のダイジェスト版はのちほど公演していただきます。国語の先生が詞をつくり、音楽の先生の作曲で、食に関する歌と詞で学校外のところへ出張公演に出かけるという…食育の方法は料理をつくる・食べるというばかりでなく、手法を変えて皆さんへアピールすると言うこと、これも食育の一つの手段だと思います。

 鎌倉市でボランティアグループが、地域に密着しながら、「食」をとおした、ゆるやかなネットワークをつくっているかまくら食育クラブ

 完全米飯給食をめざして、地元産野菜で和食中心の給食をすすめ、市民にも給食メニューを公開している三島市教育委員会

 小児科医院の管理栄養士が核となって、子育て中の母親向けに「食育の会」を開いている、鹿児島県薩摩市の関小児科医院。今、子育て年代で食の管理が不十分な母親がたくさん見られます。この一助はきっと、健康な子どもを育ててくれるだろうと思います。

 地域唯一の診療所のスタッフが参加して「浅めし食堂」「いきいき農園」で地域の食と農を結ぶ取組みを進めている青森県の特定非営利活動法人活き粋(いきいき)あさむし

 小学5年生29人が、10アールの「農家」となって、米つくりのあり方を本気で体験している新潟県上越市立里公(さとこう)小学校

 地域に開かれた小中学校の教育ファーム授業を「給食畑」として活躍しておられる栃木県都賀町教育委員会

 地元の小学校単位にワカメのオーナー制から地域の魚食普及を展開している神奈川県横須賀市の沿岸漁業者、栗山義幸さん

 高校生と小学生が絶滅危惧種の浮草アゾラを利用した環境保全型稲作を体験している長野県立臼田(うすだ)高等学校農業クラブ

 地域伝統の黒豆活用で、健康教育と地域活性化を結びつけた食育をすすめている福島県二本松市立小浜中学校

 100年後まで伝えたい山梨の伝統料理を、若い世代がそのレシピをまとめ、広げている山梨学院短期大学食物栄養科依田ゼミ郷土食班

以上、駆け足ですが、受賞事例の評価点を中心に紹介しました。
 最後に、このコンクールに集まった活動事例がモデルになって、ますます「地域に根ざした食育」が全国に広がることを期待申し上げて、審査講評とさせていただきます。

(文責:地域に根ざした食育推進協議会 事務局、撮影:矢郷桃)


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