【「表彰式・ステージ発表会」に戻る】

1 農林水産大臣賞 <地場産物活用分野> 熊本県熊本市 
 熊本県立熊本農業高等学校

「くまおに・くまべん・ひご野菜」
〜弁当づくりと伝統野菜が伝える地元農産物の魅力とこころ〜

発表者:田尻美千子 さん本郷美音 さん

■熊本農業高等学校の概要

 このような素晴らしい栄えある賞をいただきまして、本当にありがとうございます。

 まず初めに、本校の概要からご紹介いたします。本校は明治32年に熊本農業高校として創設されました。創立111年という、歴史と伝統のある学校です。写真左は、初代校長河村九淵(ちかすえ)先生です。明治の頃、札幌農学校で学ばれ、クラーク博士の精神を受け継いでおられる先生です。写真右は、松田喜一先生。本校3期生であり、昭和の農聖と呼ばれ、多くの農業者を育成されました。
 現在、自営4学科、関連3学科の全7学科、生徒数850名・職員数90名の大規模専門高校です。卒業生は2万名を超え、県下はもとより全国各地で活躍しています。

 本校では、JAの協賛を仰ぎ、「お米を食べよう」などのステッカーを制作し、米の消費拡大運動に取り組んでいます。作成したシールを公用車や自家用車に貼るという活動ですが、県内の農業高校をはじめ、農業関係団体にも呼びかけています。この活動は全国に波及し、現在では北海道・岐阜県・埼玉県などでも同じ取組みをはじめ、全国的に広がっているとうかがっています。本日、展示コーナーにこのステッカーを持ってきています。今日明日中に必ず車に貼っていただける方に限ってのみ、お取り下さい。
 熊本県では、平成17年度県下12校すべての農業高校を食育推進指定校として指定され活動したり、平成15年度〜20年度までは農政部と高校家庭部と連携し、食育ボランティア活動を続けました。現在は形を変えて継続活動中です。

■校内での食育の取組み

 本校では、「地産地消」を念頭に、校内・校外共通の柱として生徒達が自分で育てたり、自分の家族が関わって育てた農産物に関心を持ち、農産物の命へ、農産物を作って下さった方々へ、そして料理を作って下さる方々への感謝の気持ちを「つながって感じる」きっかけとし、取組みを行いました。
 最初に、校内の食育活動を紹介いたします。

 高校の家庭科技術検定食物調理では、このような実技試験に取組みます。2級のテーマには、弁当献立のテーマがあります。家庭科を専門科目に持つ本校生活科では、この2級に毎年取り組んでいます。自分で考えた献立に基づいて、家で朝から作って学校に持ってくるという宿題に取組み、練習を積み重ねていきます。
 学校に持ってきた弁当は、朝から写真撮影を行い、振り返りのレポートに写真を貼って感想を記入します。この振り返りのレポートを積み重ねていくことで、調理技術の向上だけでなく、自信もつけていくことができます。
 それではここで、2週間前に本校生活科の生徒達が受験した家庭科技術検定食物調理2級の生徒作品をご覧下さい。

 

■学校全体で取組んだ「弁当の日」

この生徒達が大きく成長できる「弁当」を取り組んだみんなが笑顔にあふれ、うれしい気持ちでいっぱいになる取組みである「弁当の日」を熊本農業高校全体で取り組むことはできないか、と考えました。

 それでは、取り組むにあたって工夫したことをお話します。取組みは、生徒一人ひとりが自分で参加しようとする気持ちが高まっていくように、文化委員会主催の行事として取組みました。
 まず、プレゼンテーションを活用した情報提供を行いました。これは、保護者会においても上映し、保護者の方々へ取組み状況を伝えるよい機会となりました。
 つぎに、文化委員会新聞を発行し、趣旨説明や基本的なおにぎりの紹介、感想のまとめなどを行いました。保護者への説明と協力依頼の文書を配布し、理解と協力のお願いをしました。この文書は本校ホームページでも公開しました。

 2・3年生では「家庭総合」の授業を活用し、お弁当の詰め方のシミュレーションや栄養価計算、弁当作りの準備などを実施しました。1年生は家庭科がありませんので、家庭科がないクラスでは担任の先生方の協力をいただきました。
 この取組みは、様々な形で積極的に盛り上げようとする多くの職員の姿がありました。まず、図書館では弁当作りの図書を購入していただき、特設コーナーが設けられました。

 各学科からの「試食食材の提供」という協力もありました。希望者への食材提供は、園芸・果樹科から、「ひご野菜」である「水前寺菜」「熊本赤ナス」、その他キュウリ・トマトなど、生活科からはダイコンとサツマイモなどでした。
 放送部も協力してくれました。生徒達の雰囲気を盛り上げるため、行事の前後、取組みの呼びかけなどを昼の放送の話題としました。また、「くまおにの日」前日の昼、校長先生より一斉放送を実施していただきました。

■先生も生徒も保護者も一緒に「弁当の日」

 行事は、取り組むだけではただのイベントで終わってしまいます。実施後には、全員感想文の記入を行い、その感想文には各自のおにぎりや弁当の写真を貼る作業をセットにしました。振り返りを大切にすることで、「食べること」だけに留まらず、農作物の「いのち」、農作物を作ってくれる人の「いのち」、そして料理を作る人の「いのち」、そして自分の「いのち」がつながって感じられるようにしました。

 おにぎり・弁当それぞれの作品を文化委員と担任の先生とで一つずつ写真撮影をしました。衛生面を考えて、テーブルクロスの上で撮影しました。
 「くまべんの日」は、全校生徒が芝生の前庭に出て、全体での写真撮影の後、クラス別に会食しました。
 取組みの成果として、おにぎり・弁当の写真を全部集約した作品を制作しました。また、実用性のある作品として残すため、クリアフォルダーを制作しました。

 活動の成果です。この活動のシンボルとなっているのがオリジナルキャラクター「スマイリ」です。昨年度の卒業生高橋歩維さんによるものです。畜産家に所属した彼女は、教材である動物に大変愛情を持って接し、なかでも豚に深い愛情を注いで、日々の世話をしていました。このキャラクターはその愛情が表現されたものです。
 また、創作書道による作品で、ロゴも制作してくれました。昨年度卒業の田尻栞さんによるものです。この2つの作品によって、この活動が盛り上がったものになったと感じています。

 この取組みを通して、改めて生徒達の素直さと創造力の素晴らしさが感じられました。また、先生方の楽しんで取り組もうとする姿こそが、生徒達の意欲に直結しているということも強く印象に残りました。
 取組みを進めるなかで、数多くの先生方から様々なアイデアをいただき、改善を加えながら進めていくことができ、職員のあたたかな協力体制を実感しました。
 生徒も職員も保護者も一緒になって笑顔になることができる取組みであること、それが「弁当の日」の力であると感じています。

■「ひご野菜」で地産地消活動

つづきまして校外活動の紹介をします。校外活動の一つとして、本校の園芸・果樹科では、熊本の伝統野菜である「ひご野菜」を通した地産地消活動を行っています。  熊本市が認定した「ひご野菜」は、15品目あります。熊本で古くから栽培されてきたもの、地名や歴史に因るものなどから選ばれています。野菜によっては、栽培場所が限られているものもありますが、本校は10品目の栽培を行っています。

 ひご野菜は、(1)生産農家の高齢化 (2)流通しにくい (3)認知度が低い という問題点があります。そのため、ひご野菜を周囲に知って、食べてもらうことが伝統野菜を通じた地産地消につながると思い、活動をはじめました。

 まず、これからどのように活動すればよいかを話し合うために、産・官・学連携した「ひご野菜会議」を実施しました。参加者は、この通りになります。農家をはじめ、多くの方に参加していただきました。
 農家さんからは、「まずは、熊本の人たちに食べてもらいたい」「子どもたちにも伝えていきたい」など多くの意見が出てきました。また、普及活動や交流会を行うために、活動を行う際にはぜひ協力してもらいたいというお願いをしたところ、農家さんだけでなく、多くの人たちから賛同していただきました。

 本校では平成18年から栽培をはじめ、ひご野菜の見本園を作り、授業、実習などの教材としてだけでなく、保育園児や小・中学生との交流の場になっています。そして、数多くの活動を行ってきました。

■小・中学生の子どもたちと交流

それでは、連携を通した今年度の交流会活動についてご紹介いたします。

 まずは、親子で収穫・調理体験を行う交流会を毎年実施しています。子どもたちに興味を持ってもらえるように、水前寺菜をモチーフとした「水前寺菜レンジャー」というキャラクターを生徒達が考えてくれました。
 内容は、収穫だけでなく、水前寺菜の挿し芽体験など、生徒達がリーダーとなり、準備から行いました。子どもたちからは「何で葉っぱが紫色なの?」という純粋な質問もたくさん出てきました。生徒達は、お兄さん、お姉さんと呼ばれ、日頃は見せない表情や一面を見せてくれました。
 また、収穫した野菜を使った調理体験を行いました。子どもたちは、初めて使う包丁にドキドキしていました。初めて食べるひご野菜も、残さず全部食べてくれました。子どもたちが満足できる交流会となりました。

 つぎに、もっと多くの子どもたちに食べてもらうために熊本市の近隣の小・中学校に給食の食材として提供しました。正月料理の雑煮で食べてもらうことになりました。
 水前寺モヤシと熊本京菜を本校から、熊本長ニンジンを農家さんから提供していただきました。さらに、子どもたちに興味をもってもらうために、事前に手作りチラシを各校に配布しました。
 当日は、3000食分の雑煮が完成しました。生徒達は、中学生と一緒に給食を食べながら学校の話やひご野菜の話をしました。学校給食の活動は継続しており、本年は昨日に5000食分まで提供することができました。

■熊本農校が発案! 大学の学食メニュー

 そして、本校で栽培した収穫物や農畜産物が、熊本県立大学の学食のメニューの一つになりました。熊本県立大学では、毎月19日を食育の日としてオリジナルの学食を考えています。毎年11月19日が熊農の食材を使った学食で、生活科がメニューを考えて提供しています。

 この高大連携をはじめ、ひご野菜の普及を行っているのが、熊本県立大学環境共生学部の松添教授です。私たちは、松添先生からもアドバイスをいただきながら、活動を行っています。学食のメニューに関しては、北野研究室の皆さんと話し合いを行い、試行錯誤しながらメニューを考えました。本校の生徒が栽培したお米や新鮮な野菜を中心に、畜産科からは採れたての卵と牛乳、食品工業科からはソーセージを作ってもらいました。

 メニューは、本校の食材をふんだんに使った「くまコロ定食」です。ひご野菜である春日ボウプラのコロッケをメインにしてくれました。そして、お米は熊農のアイガモ米、毎年好評のプリンと野菜は100%本校で作ったもので、この定食は熊農産90%になります。
 食育の日当日は、熊農生によるプレゼンテーションやメニュー表を作り、ひご野菜の展示を行いました。真剣に聞いてくれる大学生の反応に生徒達も喜んでいました。

■食文化を未来につなげるために〜生徒たちが学んだこと

 今回の活動を通して、生徒が学んだことが大きく二つあります。一つめは誰かが守って行かなければならない地域の食文化があり、農家さんのその思いを伝えていかなければならないということです。二つめは、守って伝えていくためには、自分たちだけでなくみんなで協力することが重要である、ということです。
 この活動を通して、子どもたちから多くの感想や手紙をいただきました。詳しくは後方に展示しておきます。さらに、活動を行った生徒たちの心の変化や、進路にまで大きくつながることができ、3年間地道な活動でしたが、意味のあるものになりました。

 最後に活動を行った生徒の感想の一つです。
 近年、食糧生産として農業が営まれ、農業の築いてきた文化が失われつつあります。ひご野菜は、熊本の水、土、気候でなければ栽培することのできない地域の食文化です。この食文化を未来へつなげていくためには、人と人とが手を取り合い、連携することが重要であるとわかりました。
 熊本に愛される食材「ひご野菜」をこれからも地域や子どもたちの心につなげていくこと、それが熊本の農業高校で学ぶ私たちの役割です。
 以上で校外活動の紹介を終わります。ご静聴ありがとうございました。

(要約文責:地域に根ざした食育推進協議会 事務局)


【「表彰式・ステージ発表会」に戻る】