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4 農林水産省消費・安全局長賞 <農林漁業分野> 東京都日野市
 日野産大豆プロジェクト(若手農業後継者会)

「日野産大豆プロジェクト」 〜日野産大豆を学校給食に!〜

発表者:小林和男 さん

■農家が始めた地産地消

 皆さん、こんにちは! 私は、日野産大豆プロジェクトの代表をしております小林です。私は、今までの発表の皆さんがたとは違いまして、農家、生産者です。
 ですから、書くこと、しゃべること、高いところは苦手なものですから、活動の内容について映像を観ていただいてもらえば一番良いかと思いまして、それを中心に行っていきます。よろしくお願いします。

 東京という大消費地のなかで、私たちの農業というのは地産地消が簡単にできると思いがちなのですが、実は宅地開発などによって私たちの農地は住宅に囲まれています。そんななかで農家と消費者の仲をどのようにしていけば良いかということで、まずは地域に根ざした活動をはじめることにしました。
 日野市は、東京のほぼ中央に位置していまして、多摩川と浅川の水資源にも恵まれて、水田地帯として発展してきました。東京都のなかでも随分農業が盛んな地域であります。地形を見ますと、1955年、これは私の生まれた年になりますが、この年は市面積の半分以上が緑地帯や水田、畑でした。

 ところが1990年にはこのような状態で、市面積の一割ほどが農地です。現在では、約200ヘクタール、減少の一途をたどる現状になってきています。そんななかで、生活には農環境が絶対に必要だということで、全国に先駆けて日野市農業基本条例ができました。
 日野市農業基本条例というのは、簡単に申しますと、先ほど述べたように「私たちの生活のなかで農環境が絶対に必要だから、そういうことを守っていこう」ということになっています。

■「安全な大豆のお豆腐を子どもたちに食べさせたい」

 日野市の学校給食について説明いたします。学校給食は、小学校17校、中学校8校で約1万3,000人の児童・生徒たちが日野市の学校給食を食べています。形態としては、単独校方式です。各学校に調理室があり、栄養士が存在しています。地元野菜を活用して約30年になろうとしています。

 今回、偶然の一致なのですが、実は2002年のこのコンクールにおいて、私たちは「地元野菜活用」(地場産物活用分野)で賞をいただきました。そのときも、なんと平塚の農業高校さんが受賞されています。偶然の一致なのですけれども、こういう運命的な出会いというものを感じました。

 日野産大豆プロジェクトなのですが、学校給食の栄養士や調理員さんたちが「安全な大豆で作ったお豆腐を子どもたちに食べさせてあげたい」という願いのなかで、私たち農家に投げかけてきたことがありました。
 私たちもJAの農の指導員や普及センターに相談しまして、「ならばやってみようか」ということで日野産大豆をつくって、子どもたちに食べさせようということで、今から7年前にスタートしました。

■草取りから始まったプロジェクト

 まずは、畑をつくるための土地を確保しなければなりません。展示ブースの資料にありますが、3名の農家が協力してくれまして、だいたい5000平米くらいの農地を今では耕すことができています。

 皆さんが参加して、まずは草取りから始めまして、私たち農家がそれを耕運する。子どもたちも参加しまして、こういうことに大興奮をしているというような状況です。そして、除草作業が大変なものですから、黒のマルチを機械で引きました。
 このTシャツなのですが、学校給食の調理委員さんたちが皆お揃いでつくった「日野ビーンズプロジェクト」というお豆ちゃんのTシャツをつけて一生懸命がんばっているところです。

 調理員さんたちも、3年4年5年になりますと、もう慣れた手つきです。これは手動のマルチ引きなのですが、このような状態できれいに引いてくれています。
 皆さん、この手袋をしているところが目に付くと思うのです。やはり、給食を作る調理員さんたちは手袋をして手を汚さないように大事にしています。そういう心遣いというものが感じられました。逆にいうと、農家さんは「何で手袋してるんだ! そんなのだと作業できないぞ」と、怒られていた調理員さんもいます。

 そして、皆で種まきです。子どもたちや栄養士さんたちも自分たちが食べるものを一生懸命にやってくれています。最初の年は、愛知県産の「フクユタカ」……、豆腐にして一番いい品種で、国産の証明があるものを手に入れて、それを増やしていって、今は日野産の「フクユタカ」を種にして毎年更新しています。
 現在では日野市内17校のうちの13校で、小学校の学童農園でも大豆の栽培をしています。

■一番大変なのは除草作業

 これは第一小学校での昨年の栽培のようすです。

 発芽の状況です。このようなかたちで農家の指導のもと、マルチの1穴に3粒ずつ、種を蒔いています。
 草取りが一番重要です。マルチの敷いてあるなかでも、除草作業は一番大変です。ないところはもっと大変。このようなかたちで地域の大学の学生さんたちも参加して作業をしています。そして、大豆のピンク色の花が咲きまして、サヤが生りまして、このようなかたちで実がつき、良い感じでできています。
 子どもたちに食べさせてあげたいということで、安心安全をうたっていますから、農薬は使わず、虫にも食われますが、一切そのようなかたちで6年間通してきております。

 色づきはじめて、収穫前の今年の状態です。収穫作業も、枯れてから全員が参加して行います。すべて手作業です。
 これは、全部枯れた大豆の根を抜きまして、ジュート紐で結んで逆さまにして乾燥させるといった作業を、学校給食の栄養士さん、調理員さん、農家の方、そして消費者団体のボランティアの皆さん、あと地域の大学である実践女子短期大学の学生さんと職員の皆さん、そういった方々と今年からは法政大学の学生さんたちも「地域に出て行く」ということで、日野市をベースにして参加してくれるようになりました。

■地域住民の協力で成り立つ作業

 これが、収穫が終わって乾燥させてある状態です。今年は、地域の皆さんにもどういう活動をしているんだ、何をしているんだということがわかるように、この日野産大豆プロジェクトの旗を作りまして、地域にも「こういう活動をしているんだ」ということをアピールしました。

 この風景が、今年の東京都の第13回東京農の風景・景観コンテストで、「東京都生活協同組合連合会長賞」と「同コンテスト実行委員会長賞」をいただきました。東京ではなかなか見られない風景だと思います。それで、この収穫を手伝ってくれた皆さんとの記念写真のようすです。

 脱穀作業ですね。これでやはり一番問題なのは、都市の中にありますので、埃が一番問題になります。これは、地域住民の皆さんにもお知らせしまして、「脱穀のときには埃がたちます。
 申し訳ございませんが、子どもたちのためにやっていることですから、ご了承下さい」と、皆さん泥だらけになりながら、このようなかたちで作業をしています。

 選別作業になります。これは15年度から活動しているわけなのですが、私たちの活動を行政のほうも認めてくれまして、平成19年度に行政が脱穀機と選別機を導入してくださいました。
 私たちの活動が行政にも認められたのかなと思っています。選別作業も、脱穀したものを当初はハウスの中に入れて乾燥させて選別機にかけてゴミを取り除き、機械で選別したものを集めていました。ここですと、ちゃんと消毒をしていればいちいちこれ以上選別する必要がないのですが、無農薬にこだわっています。

 そういった関係でこのように虫に食われたもの、紫の紫斑病のあるもの、こういったものが多々あります。こういった作業はほとんど地元の消費者団体である日野市消費者運動連絡会の皆さん、学校給食の調理員の皆さんが中心となって手作業で必死に行い、すべては子どもたちのためにと一生懸命協力してくれています。

■濃い味のお豆腐にびっくり!

 小学校でもこのように殻から出す脱穀作業を手作業でやったり、選別作業をして、農家の苦労を身を以て体験するということを手作業で行っております。

 残った大豆の殻ですが、これは来年の生産、また私たちの農業資源として、堆肥の材料となって全部リサイクルとして利用しております。
 そしてできた大豆は、大豆プロジェクトの試食交流会ということで皆さんに集まってもらって、1年間の活動報告をし、そしてお豆腐屋さんに協力をしていただきまして、お豆腐、それ以外に湯葉、それと先ほどあった虫食いなどのB品の大豆があったと思いますが、こういうものはすべて油揚げに加工していただいて、皆で食することができました。

 これを皆さんが最初に食べたときに、普段市販されているお豆腐とちがって、濃厚でとても味が濃いお豆腐でビックリしたことを今でも覚えていますし、毎年、このようなかたちで収穫のあとは試食交流会を行っております。

 おからなども豆腐屋さんに持ってきてもらって参加した皆さんにお持ち帰りいただいて、すべてほとんどが子どもたちのために大豆が使われますので、こういうときにこそ手伝ってくれた皆さんに少しでもお裾分けできるようなことをしています。

■日野産大豆を小中学生の給食に

 そして、だいたい毎年3月に日野市内の小・中学校約1万3,000人の子どもたちに、学校給食として食べていただいています。これは、昨年の3月、東光寺小学校で作ったときの給食のお鍋の状態です。

 これは小学校の給食のメニューなのですが、一食当たり260円です。牛乳、おからのお団子、パン、そしてお豆腐の料理です。これが中学の給食になりますと、このようなかたちです。ご飯ですが、量も多いです。中学生になると、一食あたり300円です。このようなかたちで、子どもたちに日野市産のお豆で作った豆腐を試食してもらうということをやっております。

 それと、地域のお豆腐屋さんに協力してもらいまして、子どもたちが学校農園で作った大豆であるとか、ないところでは私たちの収穫した大豆を提供いたしまして、子どもたちがお豆腐を作っているところです。

 ある学校では、味噌作りもしています。5年生の秋に収穫した大豆で5年生の冬に作りまして、6年生の9月になったときに調理実習でお味噌汁にして調理するというような活動を行っています。これも定期的に、2、3の小学校が行っています。これも、日野産大豆が使われております。

 そして、秋の日野市の産業まつりにおいては、一般の人たちに日野産大豆でつくったお豆腐の試食ということで、このようなサービスも行うようにして、PRと参加を呼びかけております。

■1トン収穫できるようになるまでがんばる

 今年は、「一歩すすんだ活動をしよう」ということで、この大豆を使いまして、このようなかたちで納豆を作ってみました。

 これは新たな試みなのですが、包装紙も皆で考えまして、「日野産大豆で納豆作っちゃいました」というものを作りまして、産業まつりでこのようなかたちで無料配布したところ大好評でして、列ができるくらい100名以上の方が並びまして、あっという間に配布を終えてしまいました。この産業まつりでは、このように日野産大豆のお豆を販売したりですとか、日野産大豆プロジェクトの活動内容をこのようなかたちでPRしているということです。

 日野産大豆の収穫量の推移なのですが、平成15年、一番最初に栄養士さんの願いからはじまり、私たち農家も作ったことがなかったわけですね。最初の年に面積も300平米で128キロだったものが、平成20年度には面積がだいたい4,500平米で目標の1トンに到達しました。
 目標の1トンというのは、1トン穫れると、生産量が1という数字が統計上載るのです。そういった意味で、5ヶ年計画ではありませんが、とりあえず1トン穫れるまでがむしゃらにがんばろうということで皆さんが協力してくれて、このようなかたちでがんばってきました。

■無理せず長く続けていくために

 日野産大豆のネットワークなのですが、このようなかたちで栄養士さんであり、農家であり、学校給食の調理員さんであり、私たちをサポートするJA、また行政はもちろんのこと学校給食に出すために学校の皆さん、これらが一つになって思いが重なるわけですね。

 ここに、今では地域の豆腐店や消費者団体の皆さん、子どもたちの保護者であり、実践女子短期大学の学生さんたちが協力してくれています。この短大の食物栄養科の学生たちが、「現代的食育ニーズの取り組み支援プログラム」の一つとして地域に出て行く。
 つまり実践女子大学の創設者である下田歌子氏の建学の精神、まさに実践教育としてこのような活動の輪に加わっている、と。そして、先ほど映像にもあったと思うのですが、ここの活動のなかに学校の子どもたちも今、入ってきています。こういうかたちで、日野産大豆のネットワークの輪が大きく広がってきております。

 今後の活動として、まずは無理せず長く続けていくことが大切なのではないか、と。実際問題として、私たち農家は非常に無理をしてきました。このままではいけないなということを感じています。そして、学校給食への日野産大豆はもとより、今年の3月、すべてではありませんが納豆を作りまして、これを学校給食として3月に出します。これはもう給食の予定に入っております。
 そして、援農や消費者との交流、PRなどが重要になってくるかと思います。また、日野産大豆を通じて、児童の食育体験の拡大です。ただやるのではなく、もっともっと拡げていく必要があるのではないかと考えています。

■みんなが笑顔になる「日野産大豆プロジェクト」

 皆さん、見てください。これが日野産大豆の圃場(ほじょう)です。7階のマンションを建てるのと、日野産大豆の圃場が2,000平米あるのと比べた場合、どうでしょうか。環境にも配慮し、CO2削減にもつながるのではないか。

 このような大豆畑が色を変えていく四季ですが、こういうものというのは市民の皆さんにも色を見せる、癒しの場を与える空間にもなっているわけです。このようなかたちで、皆さんが参加した日野産大豆プロジェクト。大変なのですが、ほんとうに皆さん、笑顔いっぱいに協力してくれています。

 今回のこの表彰式発表に参加させていただいて、農業高校の学生さん、若い力はすごいな…と感じました。年寄りの私たち農家もがんばらなくてはいけないな、と。まだまだ日本の将来、見捨てたものではないなというふうに思いました。私たちの農業、都市の農業、また国内の農業、日本の農畜産物を皆さん、もっともっと応援してください。ありがとうございました。

(要約文責:地域に根ざした食育推進協議会 事務局)


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