地域に根ざした食生活推進コンクール2001 【前のページに戻る】

地域に根ざした食生活推進委員長賞

食品産業分野

「この街に生きる、この街を活かす―食べ手から作り手へ」

企業組合ワーカーズコレクテイブ凡(東京都町田市)

【活動の内容】

●地場産野菜が食べたいから農業委員会におしかけた
 生協がまだ生鮮野菜を扱ってなかった頃のことです。町田市のような多摩地域には農地が残されていました。目の前にある生鮮野菜がなぜ食べられないのかという思いが、最初の一歩を踏み出させたのでしょう。生活クラブ生協の組合員として納得できる食材を利用したいのに、もっとも身近な生鮮野菜が手に入らない時期があったのです。店舗ではなくトラックで配達するスタイルの共同購入方式では、生鮮野菜の鮮度保持が難しいのです。トラック配達でも生鮮野菜が扱われるようになったのは、ここ十年くらいのことといえるでしょう。

 野菜を仕入れるために、地元の生産農家を紹介してもらおうと、最初に町田市の農業委員会を訪問しました。その農業委員会は、マイクロバスで地元生産農家をめぐるツアーを実施してくれました。農業委員会は、七軒の篤農家を紹介してくれました。でも生産農家を訪問したとき、自分たちが町田の農業のこと、いや農業そのもののことを何一つ知らないのだということにはじめて気づいたのです。


●生産現場に近づいて加工という知恵を発見した
 幸い、篤農家がご厚意で、私たちとおつきあいしてくれるようになりました。それから、どろなわのような悪戦苦闘がはじまりました。生産農家と作付けのうちあわせ、収穫予想にあわせて注文用紙を作り、集計作業をして発注、配達の際には生産者のトラックに同乗しました。まるで、卸売り業者と小売り業者の両方を体験するようなものです。大きな壁は、農産物につきものの需給バランスという難問でした。注文量より収穫量が少なければ、誰かが少しガマンすれば済む。生産者にも消費者にも、利益はないが損失もないから納得できる。しかし、収穫量より注文量が少ないときはそうはいかない。全量引き取りを約束して生産を御願いしておきながら、注文が少ないからといってよそに出荷してくれとはいえない。引き取り手のない収穫物は、食料ではなく損失額に化けてしまいます。
 需給バランスという農産物にとって永遠のテーマに直面して、野菜の加工保存というワザはここにあったのだと実感したのです。夏場のなりもの、冬場のツケナ、みな塩漬け加工すれば新たな保存食となります。生産と消費のバランスがとれないことが問題なのではなくて、収穫出来ないはざかい期があるからこそ保存食という知恵がうまれたと、発想を転換することができたのです。そう考えると、引き取り手のない収穫物が新たな食材に生まれ変わって見えてきたのです。


●家庭の技・くらしの知恵を取り戻したい
 野菜の需給バランスという問題が、食材の加工にとりくむきっかけであったことは確かです。ただそれと同じくらい強い動機は、食品の大量生産・大量消費という現象に対する疑問にもありました。グループ「凡」をスタートさせた頃、日本の食事情は大きく変わりつつありました。大量生産・大量消費という工業の論理が食料農業の生産現場にもちこまれるようになったのです。保存のための加工技術が、消費のための加工技術に変化していったのです。
食卓の現場で感じはじめたことは、食品産業の加工食品はおいしくない、添加物が多すぎるということでした。家庭で作れるものをなぜお金を出して買わなければいけないのか?まして自分で作る方がおいしいなら自分で作ればよいではないか。当初は佃煮などの和風食材を生活クラブ生協の施設を利用して販売し、それなりの販売額に成長しました。その後、生協の施設も使いづらくなり、一度はお店という加工拠点もなくしました。


●東京のブルーベリーに出会った
 初期の加工食品に取り組む姿勢は、余剰産物ができるから保存食品を作ろうという発想でした。一度活動の拠点をなくしたあと、この発想を転換することができたのです。それは自分たちが作りたいと思う完成品をまずイメージして、原料はあとから調達すればよいではないかということでした。既に法人格を取得していたので、今度は自前の加工施設・自前の活動拠点を作ろうと考えたのです。
 加工食品といっても、冷蔵管理が必要なものはコストがかかります。加工後常温流通できるジャムやシロップづくりが、誰からともなく発案されました。そのころ最初に地場野菜でおつきあいを始めた生産農家の息子さんが、町田市内で後継者としてブルーベリーを生産していることを知ったのです。その生産者・浅沼さんはなんと町田市内でも最大規模のマンモス団地のまんなかで、頑固に農地を守っていたのです。ブルーベリーの木は、植え付けから収穫ができるまで、最低五年はかかるという気の長い果物です。先代とのご縁もフル活用して、すでに大手の食品産業に出荷していたブルーベリーの実を「凡」にまわしてくれるようになりました。最初の地場野菜産直がブルーベリーソースにつながったことは、不思議なご縁としかいいようがありません。団地のまんなかで農地を守ることは、居住地域の生活環境を守ることです。私たちの活動も、地域の生活環境を自ら守るという姿勢を貫きたいと思います。


●酸味と甘味が両者を生かす
 佃煮加工からブルーベリーソース加工に移ることに、余り飛躍は感じませんでした。余計な添加物を排除して、素材そのものの良さを最大限生かそうという姿勢に変わりなかったからです。ブルーベリーとひとくちに言っても、さまざまな品種があります。成分や色・形にも違いがあり、いつでも同じ味・同じ色合いに仕上げようとすると添加物を多用しなければならなくなります。原料が農産物なのだから、年によって味が違うのはむしろ自然なこと、いつの年のものでも、同じような味に仕上げることの方こそ不自然です。
 冬場にはカリンシロップが人気商品で、秋口になるといつできるのかと問い合わせを貰うようになりました。お湯で割ったカリンシロップは、冬場の風邪予防に最適です。実際にただ甘いだけのシロップではなく、酸味と甘味の両方がバランスよく調和してすっきりした味わいを作っています。


●動かなければ始まらない(野菜たっぷりカフェまで)
 数少ない町田市の里山に仕事の拠点を作ることはできましたが、もう一歩すすめて暮らしぶりを提案できる拠点を作りたいと思っています。仮店舗と事務所の建物のオーナーが古い建物を壊して分譲住宅を作ろうというのです。ならばいっそのこと、新しく拠点になる店舗と事務所をつくってしまおうと考えました。
 もちろん資金的にも容易なことではありません。しかし、一人の市民としても自らの生活環境を守るためにここは踏ん張りたい。家庭の主婦という立場から、食卓を守りたいという気持ちで始めた活動が、いつしか女性の社会参加を通して、金銭にはかえられないこころ豊かなくらしづくりの提案へと変化成長してきたのです。イメージしている新しい店舗は、その名も「野菜たっぷりカフェ」と云います。


●生産とくらしを創る女性のネットワークを
 「凡」の製品づくりは一定の軌道にのってはきました。少しずつではありますが、労働の対価としての収入も確保できるようになりました。事業的にも、量的拡大が求められるようになっています。しかし単独で規模拡大するのではなく、「凡」と同じような規模の生産拠点と協力して事業を展開するような関係をつくりたいと思っています。小規模ではあっても自立した拠点どうしが手を組んで、全体として事業を拡大するというネットワーク型の活動を目指しています。一カ所で規模拡大をするとどうしても中央集権になってしまい、活動のための組織ではなく、組織のための活動になりかねないからです。小さな経済活動が無数にひろがって、その拠点どうしが手を結ぶときに、より豊かな人と人のつながりができるかも知れません。



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