地域に根ざした食生活推進コンクール2001 【前のページに戻る】

地域に根ざした食生活推進委員長賞

農林漁業分野

「温故知新・郷土食にこだわって、今むらが変わる」

京津畑自治会(岩手県東磐井郡大東町)

【活動の内容】

●はじめに(活動の背景)
 大東町京津畑地区は、岩手県北上山地の南端に位置し、四方を山々に囲まれた標高350mの農山村集落です。宮澤賢治がこよなく愛して数々の童話のモチーフとなった種山ケ原に接し、かつては穀物の生産が難しい状況の中で、薪炭業が栄えた自然豊かな地域です。
 現在は、世帯数60戸で、人口は約200人。地区の高齢化率は42.7%(県平均21.4%、町平均30.8%)であり、65歳以上人口は85人です。また、この地区に全校児童数14人の町立京津畑小学校と園児6人の町営保育所を有するも、子供の減少化に伴い、町の統合計画問題に地区民の心は揺れています。
 専業農家は2戸、非農家3戸で、他はそのほとんどが第2種兼業農家です。農業の経営作目は米、繁殖牛、野菜、葉たばこ、シイタケと続きます。若い世代の家庭は共働きで、地区外通勤のサラリーマンが多く、土日農業が主体をなしています。


 少子高齢化の問題が横たわっているものの、当地区では平成3年に京津畑自治会を結成し、以来、地区民の融和と活性化を命題に、子どもからお年寄りまで総参加型の活動を活発に展開している。特に、環境保全活動、京津畑神楽の伝承活動、地区の秋祭り(京津畑まつり)、青年会活動などは他地区の模範となっておりこれらの活動が認められ、平成12年12月に岩手県知事より「いきいき中山間賞」を受賞しました。
 また、小学校も地区公民館的役割を果たしており、全戸加入の小学校PTAと自治会がタイアップしての運動会、学芸会、祖父母学級など超小規模校のフットワークの良さを生かした、学校と地域の交流活動が評価され、平成13年10月には京津畑小学校が「厚生大臣感謝状」を受けました。


〔食に関するイベント〕 京津畑まつり「食の文化祭」
(1)実施期日   平成12年11月12日(日)
(2)会  場  大東町立京津畑小学校体育館
(3)参加人数  350人
(4)経  費   419,275円
(内訳)材料費    69,563円
    宣伝費    50,420円
    消耗品費   65,000円
    印刷費    18,007円
    報償費   183,775円
    事務費    32,510円
(5)活動内容
・主な内容
  「温故知新・郷土食にこだわって、今むらが変わる」をテーマに、集落の青壮年、婦人、お年寄りたちで実行委員会を組織して、忘れ去られようとしている集落の食文化にスポットを当てる「食の文化祭」イベントに取り組みました。
  戦前戦後の食糧難時代に当地域で食されていた、当時の「食事メニュー」や「昔おやつ」「飢饉食」「保存食」「山仕事弁当」「漬け物」「甘酒、濁り酒」及び「食に関する文化財」を各家庭から持ち寄って、一堂に展示しました。出展品を観賞して昔を振り返りながら、町内外の人たちと試食会において、懐かしい味を楽しみました。   また、ステージでは地区の伝統文化「京津畑神楽」と、近隣町村の「創作太鼓」及び「新舞踊」の生のステージを楽しみながら、収穫の秋をみんなで祝いました。

 @昔の食事展示コーナー(約110点)
  懐かし家庭料理:昭和20年〜40年代の各種家庭の食事
  保存食:すんもず(凍み餅)、ほすか(干しイモ)、山菜及び野菜の各種漬け物など
  戦時食:糧飯、ヒエかゆ、アワ飯など
  行事食:晴れ膳、精進料理、田植え料理、果報団子など
  昔弁当:山仕事(ひつこ)弁当やアルマイトの弁当
  学校給食:学校給食が始まった昭和40年当時から現代のものを再現
  昔おやつ:がんづき、げんべた、葉やき、みそ焼き、いも団子など
   手作り酒:どぶろく、甘酒、山葡萄酒、梅酒など
 A食の文化財コーナー(約35点)
 各家庭において倉や納屋に眠っていた、かつての農家の食を支えた品々の展示  B産直販売コーナー
 地元野菜、穀類の販売
 作りたてバナナクレープ、お好み焼きなど手作りおやつの無料サービス
 Cステージ鑑賞
 京津畑神楽: 演目「鶏舞」「羽衣」「橋弁慶」
 創作和太鼓: 東山郷太鼓組(大東町)
        げいび大獅子の会(東山町)
        新舞踊 : 花柳流 穂玖扇志誉舞さんほか


(6)工  夫
 @実行委員会を組織して各係を設置し、係ごとの創意工夫と自主活動を尊重する。
 A全戸に周知文書と自治会会報紙「結いっこ新聞」を2回発行して、主旨を伝え出品参加を呼びかける。
 B地区を越えてポスター、チラシ、町の防災無線でPRを図る。
 C数日前から横断幕とのぼり旗を沿道に設置して、前景気をあおる。
 D恥ずかしがって出品を渋る、おばあちゃんやお母さん方に粘り強く説得して廻り、協力を得る。
 E 展示観賞の時間とステージの時間を区切って、ステージ部門観賞後に試食会を行う。
 F地区外のお客さん方へ、家族のおみやげ用として「昔おやつ詰め合わせパック」を贈呈する。
 G来場者へ特製「京津畑まつり記念タオル」を贈呈する。
 H女性実行委員はそろいのエプロンを着用し、一般客との識別及びチームワークを図る。


(7)ねらい
 @忘れ去られようとしている、かつての食の数々に光を当てて、当時の食文化を見直し、これを次世代に伝承する機会とする。
 Aひもじい時代にあっても親の愛情伝わる当時の家庭料理を思い起こし、健康的食生活や自家野菜などの食材を使用した食卓づくりを考える場とする。
 Bひとつのイベントの成功に向け、老若男女、全戸で参加協力することにより、相互の交流とお互いの助け合いや共同参画意識の醸成を図る。
 Cイベントを一過性のお祭りと考えずに、根底に地区の活性化があることを認識してもらう。
 D昔おやつや・郷土食を地区内で商品化にむけ、農家婦人達の現金収入を得る足掛かりとする。
 Eお年寄りを主役に引き立て、生きがいづくりと社会参加を促すと共に、お年寄りの過去の経験に学びこれを未来の集落づくりに活かしていく。
 F町内外の人々が注目して訪れることにより、地区内の住民の自信と誇りを持つことができる。
 G地域の人々が一丸となって、イベントに取り組む姿を子ども達が見聞きすることにより、子ども達の地域理解と社会教育の効果がある。


〔食に関する記録誌の発行〕
食の文化祭記録誌「やまあいの絆」
(1)発行日    平成13年5月1日
(2)発行部数   300部
(3)編集スタッフ 4人
(4)経 費    365,709円
         (内訳)印刷製本費 346,500円
          消耗品費  9,303円
          事務費   9,906円
(5)活動内容
 ・主な内容
 食の文化祭に展示出品した品々を写真やレシピにまとめると共に、お年寄り達の食の思い出話などを書き留めて、次世代に伝承する資料としました。また、資料編として、このイベントの取り組みを今後に活かすための関連資料も織り込みました。
 印刷製本以外は、すべて農家の主婦が覚えたてのパソコンで編集しました。
 全73ページ(カラーページ13p、白黒ページ60p)
(6)工  夫
 @予算を切り詰めるため、編集作業はすべて自前の素人スタッフで原稿を作りました。(原稿の依頼と編集には時間と手間を要し、挫折しかかりましたが。)
 A制作費に不足をきたしていたため、集落配布分と協力者配布分以外は頒布しました。(全冊完売)
 B記録誌発行を新聞等に取りあげてもらい、県内外の注文も相当数ありました。
(7)ねらい
 @食の文化祭を単なる一過性のイベントに終わらせることなく、記録として残し今後の地区にむらづくりに活用していく資料とする。
 Aお年寄り達の歩んできた経験や食の業や意識にスポットを当て、過去に学び未来を志向する資料とする。
 B食の文化祭の取り組みを、記録を通して振り返り、貴重な体験として認識すると共に、当地区に おける食文化のすばらしさを再確認する。


〔食の文化祭関連事業〕
食の時節「昔っこ語り会」
(1)実施期日   平成12年11月30日
(2)会  場   京津畑小学校
(3)参加人数   34人(語り部のお年寄り6人、児童16人、先生6人、一般者6人)
(4)経  費   0 円
(5)活動内容
 ・主な内容
 京津畑地区で昭和30年代頃まで行われていた一年間の習わし行事を、当地区では時節(ときせつ)と呼ぶが、京津畑小学校の古里学習「郷土食づくり」授業に自治会が共催して、お年寄り達の食に関する時節(ときせつ)「昔っこ語り会」を実施。6名のお年寄りの皆さんが、子ども時代に体験した伝統行事を、児童達や先生方に懐かしく語り聞かせました。
 食の文化祭記録誌編集スタッフは、これを筆記し「やまあいの絆」に掲載しました。
(主な食に関する時節の話)
 「旧正月(さら正月)」「かせどり」「モグラぼい」「成り木ぜめ」「節分」「果報だんす」
 「藁のあったかさ」などの昔っこ語り


〔活動の成果〕
 @平成9年、10年に開催した「昔おやつまつり」の経験を活かして取り組んだ「京津畑・食の文化祭」は、地区のおばあちゃん達が主役となって、当時を思い起こして懐かしい味を再現したり、今のお母さん達に手ほどきしたりしました。全戸が一丸となって出品参加した、活気ある食イベントとなり、まず、参加者自身が楽しんだ企画となりました。
 A単に郷愁に触れるだけのメニューではなく、実際に試食してみて、その素朴な味わいと安全で周辺の食材を用いた郷土食の普遍性が感じられ、現代の食卓に取り入れるメニューや商品的価値のあるメニューも多数見受けられました。
 B京津畑地区の食に関する文化祭という、ユニークな企画は多くの人の関心を呼び、町内外及び遠方の市町村からも来場者があり、試食会などを通じて初対面のお客さんとの楽しい交流が持てました。また、辺地である当集落を広く知ってもらう良い機会となりました。
 C当初、実行委員は「食事メニューと文化祭」というイメージを描ききれずに、苦心もありましたが、試行錯誤をしながら出品を募り、予想以上の点数が確保されました。
 D実行委員は家事や仕事の合間をぬって、家庭をも犠牲とした部分もありましたが、多数の出品参加者、参観者に喜ばれ、大きな自信と励みになり、京津畑の活性化を一人ひとり真剣に考えるようになりました。
 E食の文化祭記録誌「やまあいの絆」の発行は、一過性のイベントに終わらせず、貴重な資料として残すことができました。また、この記録誌は県内外からの問い合わせも多く、在庫が尽きるほどの反響がありました。
 H食に関する時節(ときせつ)「昔っこ語り会」は、児童はもとより30代40代の父兄も知っている者はなく、お年寄り達の貴重な話を聞くことができました。


〔今後の課題〕
 @一連の食イベントを通じて、地区内における郷土食とそれを活かした地域おこしへの理解は深まってきています。次の段階として、食の生産加工に関心のある仲間達のグループ結成化を勧め、収益性のあがる販売活動へ展開を図っていきます。
 A遊休化している畑での野菜等の栽培を振興して、産直販売や漬物加工品の販売へ結びつけていきます。
 Bお年寄りも参画できるような、「京津畑昔おやつ」の商品化を図っていきます。
 I地区内に産直施設とレストラン、交流イベント広場、集会所等の機能を併せもった総合的なセンターを整備しながら地域活性化を図り、子ども達もお年寄り達も楽しく安心して暮らせる地域づくりを進めていきます。



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