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第2回食育フェア
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    「なつかしい未来へ〜地域に大きな食卓をつくろう〜」

    講師:結城登美雄 (ゆうき とみお)

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    ■「食育」を考えるとき気にしたいこと

     僕は1番目の食卓というのは、当たり前のことですけれども、家族がいるところの「家族の食卓」だと思っているんです。けれども「家族の食卓」が、ここ30年の間にずいぶん弱まってきました。その分、「お店の食卓」がたくさん頑張っています。

     これは平成16年の9月に発表された農水省の我が国の食料自給率というやつから私なりに、私というよりも、僕はパソコンができないので息子につくってもらったんですが、これを見ていただくと、1985年、あるいは90年代から、外食だけではなくてお弁当を買う。昼はコンビニ弁当とか、なんとか弁当とか、そうなってきたために、ほとんど半分近くが「家族の食卓」ではなくて「お店の食卓」のほうにシフトしていることがわかろうかと思います。

     僕らが「食育」と言ったときに、少し頭に入れておきたいなということは、もう一つあります。僕は食べる前に食べ物をつくる人たちというのを意識に入れないと片手落ちかなと思っているんです。食育だけだと、お魚に例えれば、お皿にのって「食育」がとってもおいしそうに見えるんですけれども、お魚の裏側が実はとても弱っているんです。その両方がおいしく見えるようにしていかないとあかんなということです。

     これは先進国の食料消費の変化。ここで、見てください。日本がお肉を食べるようになったんです。食べすぎるようになりました。先進国で比較すると、日本は350%という数字がありますけれども、日本はお肉だけは335%に増えています。食べ物は普通一番保守的なものなんです。外国の人は「納豆」と言うと「いやだ」と言う。日本人もお肉なんてそんなに食べなかったのが一気に食べるようになってしまった。これは1965年と2002年の、約40年間に増えたものです。

     それで、日本はお米、穀物がマイナス33です。野菜も減っているんです。そして、油もの、油脂は、この330という数字は間違っていまして、175です。そんなふうにして、地球上の民族で一番食生活が変わったのが日本であります。肉1キロに穀物飼料が10倍の10キロかかると言っています。これが日本の自給率を低くしている一つの要因であって、そういう意味で、悔い改めましょうとは言いませんけれども、もう少し日本の今の僕らの食べ物を、どんなものを食べているかを考えるときに、きょう「なつかしい未来」という大きなテーマでありますけれども、お肉もおいしいけれどもお肉以前の、油をそんなに使わなかった以前の食べ物の世界もまた、食育を考えていくときに大事な場所かもしれないなと思っています。

    ■「食」の向こう側に思いをはせる

     「農家はいいよなあ、保護されて。補助金出て」と東京の人はみんな羨むんですが、実際は農家の人の農業所得というのは102万円ぐらいです。102万円にしかならない。だから、それだけでやれないから他の仕事をやって何とかしのいでいます。もうこれが慢性的になっています。

     その結果、どういうことが起きるかというと、食べ物づくりをやめていくんです。食べ物づくりをやめて「食育」ってあり得るでしょうか。だから、皆さんの地域の食べ物を支えてくれる人たちは、今どんな人たちなんだろう、何人いるんだろう、そんなことも少し「食育」を考えるとき考えてほしいのです。

     もう専業農家なんて44万人しかいません。78万人は自給的農家といって、自分の食べ物をつくるぐらいの農家、その農家のほうが増えています。

     東京は1,200万人です。日本は自給率40%と言われますけれども、東京は自給率1%以下であります。日本中の食べ物を集めて、それに支えられているのが東京だという風な気がするし、それが良い悪いの問題ではなくて、そのことも少し考えないと、食べ物だけが問題になって、それを支える人たちのことを視野に入れられないと、僕は不公平だと思っています。

     今、日本人は1億2,700万人です。その人たちが毎日食べます。朝昼晩食べます。「自給率低いから、3〜4日ちょっと食うのやめよう」というわけにはいかんのです。一方の農家が何人かというと、70年代1,025万人がやっていました。今は368万人です。プラス24万の漁民です。約400万ぐらいの人たちが今、必死になって日本の食べ物を支えています。

     そして、その支えている人たちのお年はおいくつぐらいかというと、60歳以上、女の人多いですね。133万人です。60歳以上の男性は116万です。(男女別・年齢別の農業就業者データ)

     高齢化社会日本、年金制度をどうしようか、国会やら行政でも将来に対して消費税を上げなければいけないんではないかと言っていますが、こと日本人の食べ物を支えているのは高齢者なんです。60歳以上の人が67%を占めて、若い人があまりそこに入りきれないでいる。そういうことを全然無視して、目の前にあるおいしい食べ物に栄養があるとか、ビタミン、ドコサヘキサエン酸が多いからこれがいいとかという栄養学的なものになっていったりしないように、食べ物を支えている人、育てている人たちにも思いが届く、想像が及ぶ食育であってほしいなと思っています。

    ■コンビニもない町にある「宝物」


    後ろ手スタイルで歩くばあちゃん

    宮城県宮崎町風景

     そんなのをやるために、僕はこの10年で600ぐらいの小さな集落を訪ね歩いてきました。3,000人ぐらいのおじいちゃん、おばあちゃんに話を聞いてきました。そのおじいちゃん、おばあちゃんたちに話を聞くと、「いやあ、うちは何もねえよ」と言う。日本人は「何かある」というのを、「お金になるものがある」ということの意味で使ってきました。

     「ここはコンビニがない」というふうに男たちがぼやく町がありました。今から7年前のことであります。

     宮崎町―現在加美町は奥羽山脈の雪解けが田んぼを潤していく、こんなありふれた東北の農山村です。その農山村、僕も回りましたら、確かに6,000人も人口があってコンビニは1軒もありません。コンビニは便利です。便利なものがあることは豊かになるんだと、今まで信じてきました。だから、僕もコンビニもないところがどうやって食をやっているんだろうと思ったら、ちゃんと自分のところに畑を持っています。みんな自給の、自分の家族のための畑を持っています。

     その畑のところで、例えばこの右下のおばあちゃん。上は別にサンダルはいて畑を耕しているのではなくて、帰りに「おみやげにダイコンを持っていけ」と言ったからパチャッと撮ったんだけれども、下はのれんではありません。芋がらと言って、サトイモのズイキ、カラドリ、日本中でいろんな呼び名があります。これでおいしいだしがとれます。


    左:90歳の鎌田さん 右:「おみやげにダイコン持ってけ」

     これをつくっている鎌田さんというおばあちゃんがいます。90歳です。お話をいろいろ聞いていくと、「あたしゃ、飯炊きばっかりで」とおっしゃるんです。日本人はこの「飯炊き」だけをやってきた人のことを随分軽んじてきました。20歳でお嫁に来たそうです。今なお6人家族の食事をつくり続けています。それで、おばあちゃんと話をしていたら、「おばあちゃん、考えてみたら、1日に3回家族の飯をつくると、1日3回で365日、何回になるかね。1,095回だね」と言ったら、ばあちゃんは「そうかい。いや、ときどき手抜きもするからね」と言うんで、「1000回」というふうに言ったら、「まあ、そのぐらいはつくっただろう」と。

     20歳から90まで、1年に1,000回です。10年で10,000回です。70年つくっていますから、70,000回であります。この70,000回もつくっていく力、それはお店もないしスーパーもないし、先ほどの畑を耕し種を蒔き、そして家族のためにお金ももらわずに、ようまあ70,000回もつくり続けたと思います。

     そのことを、家族もついついそのありがたさを忘れてしまいます。男は特にわかりません。うちには大したものはねえと思っています。新宿の飲み屋のほうがうめえものがあると思っています。それは当たり前です。金を払っていますから。

     「だったら、ばあさん、家族に請求書を出そうや。死ぬ前に請求書を書いて死んでくれ」と、このごろは言っています。1食4人家族だとします。4人家族で、1人500円いただいたとします。お店の食卓、安いほうです。4人で2,000円であります。2,000円ずつ、1食ごとに家族に請求書を出すと、70,000回で1億4,000万円です。「おばあさん、1億4,000万円請求書を出してからこの世を去ってくれ」と。

     ここには30,000回の方もいらっしゃいますし、40,000回の人もいる。さすが70,000回の人はいらっしゃいませんが、そのことを男たちはよくわからない。金額ではなくて、それを飽きないように、おいしくするように、温まるように、体がよくなるようにと思いを加えたら大変なものなんです。

     ところが、男はわからないから、僕は目にもの見せてくれようと思って。あちこち行くとこういうものが出てきます。ありふれたものかもしれません。けちをつけるわけではありませんけれども、ビニールに入った漬け物にはおいしいものもあるでしょう。でも、一番おいしいのは、桶から出してきてギュッギュッと絞ってザクザクとやって、「はい」ってやったら、お茶が何杯も飲めますよ。おいしいものは外に持ち出せないんです。お餅のおいしいのがあるでしょう。けれども、つきたてのお餅は固くなって、持ち出せないんです。


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