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ニッポン食育フェア
食育推進全国大会
 

ニッポン食育フェアin福井 ―いのち感じる 大地からの食育

食と農の応援団劇場

 「いのち感じる大地からの食育」をテーマに開催された〈ニッポン食育フェアin福井〉。
  会場に設けられた「食と農の応援団劇場」では、2日間にわたって合計9プログラムが組まれ、食育や健康についての力あふれる講演や実演が行われました。

郷土の先人 石塚左玄に学ぶ食・健康・環境・農業
〜講師:岩佐勢市(福井県厚生農業協同組合連合会(県厚生連)理事)〜

6月10日10:30〜11:00 講演

 福井県は平均寿命が男女とも全国2位の長寿県です。といっても多くの人が家族や自分の健康に不安を抱いている。県厚生連として、寝たきり予防運動などに取り組むなかで石塚左玄を知り、左玄の提唱した健康法は現代人にこそ大切だと考えるようになりました。

 石塚左玄は幕末期に福井の町医者の家に生まれ、藩の医学所で学び、やがて陸軍の軍医になります。45歳で軍医を退いた後は、食事で病を治す「食医」として診療にあたり、明治42年に58歳で亡くなる直前まで全国を講演し、健康の基本は食にありと説きました。

 左玄にはふたつの大きな功績があると、私は思います。ひとつは明治31年に著した『食物養生法』のなかで、日本ではじめて「食育」という言葉を使っていることです。「命は食にあり」と、子どもにとっての家庭での“食育”の大切さを主張しています。もうひとつは明治維新後の文明開化によって食生活が大きく変わりつつあるが、肉食など西洋風の食文化は、病気を増加させる原因になる、日本人には日本人にあった食生活があると警鐘を慣らしていることです。まさに先見の明といえるでしょう。

 では、左玄の提唱した健康法とはどんなことかというと、まず、人間の歯の6割は食物をすりつぶすための臼歯なのだから、人間の食物の基本は穀物である。さらに“風土論”として、「郷に入りては郷に随ふ食養法を実行すべき」と、地産地消・身土不二の大切さを指摘しています。また、米は精米しないで玄米で食べるほうが健康によい、玄米に次いで大事な穀物はソバである、料理は畑のもの海のものをバランスよく食べるべし等々の教えを残しています。

 今から100年も昔の明治時代に、現代でも充分に通用する食育の教えを説いた石塚左玄。福井が生んだ先人のことばを大切に守りたいと思います。

神戸発信! 防災の食育
〜講師&実演:坂本廣子(神戸市・サカモトキッチンスタジオ主宰、食育・料理研究家)〜

6月10日12:30〜13:00 実演・試食

 阪神・淡路大震災を体験していえることは、普段どんな暮らしをしているかがドーンとつきつけられたということです。震災後、私たちの住んでいた地域におにぎりが届いたのは7日目の晩でした。公的な助けが期待できない状態では、自分たちのいのちは自分たちで守らなければならない。いちばん守らなあかんのは子どものいのちです。食物の補給がなくなって栄養失調になったら、子どもの脳に影響が出てきます。そこで私がおすすめしているのがお豆さんです、必須アミノ酸が含まれていますから。ですから、避難袋にはチョコより、ようかんなど豆を使ったおやつを入れておいてください。

 ライフラインがとぎれたとき役に立った食料は、豆や昆布、切干大根などの乾物類、缶詰、スキムミルク、米粉や小麦粉、常温で保存できるジャガイモなどの野菜でした。ポリ袋に小麦粉と米粉、水を入れて混ぜ、袋の先をちょこんと切って鍋に入れ、乾物や根菜類と煮こめば、「ありものすいとん」ができあがります。防災のためにも普段から乾物類を常備しておくこと、そして子どもたちに豆や乾物類を食べ慣れさせておくことが大切です。

 調理法で役に立ったのは、「空中調理」と「紙一重調理」でした。水がないので食中毒を防ぐために手をポリ袋に入れて、キッチンバサミを使って空中で切る。また、新聞紙で皿やコップを作って、その中にアルミホイルやポリ袋を入れれば、紙一重で熱いものでも食べられます。たいへんなときほど、ちゃんと食べて元気にならなあきませんから。

 もうひとつ実感したことは地域の助け合いです。コミュニティがこわれてしまったら二度と元にはもどりません。昔から続いているお祭りなどは、じつはすばらしい地域の防災の備えだということを再確認しました。平和なときこそ防災に備えるチャンスです。

関連項目:地産地消のおすそわけ「サカモトキッチンスタジオ〈神戸発!防災の食育〉」

「食事バランスガイド」で健やか食生活のすすめ
〜講師:永原真奈美(福岡女子大学早渕研究室チーム)

6月9日13:30〜14:00 講演

 朝ご飯を食べないで登校する子ども、欠食の多いひとり暮しのお年寄り、さらにはメタボリックシンドロームといわれる肥満者が増えるなど、国民の健康が大きな問題になっています。そこで2005年6月、「食事バランスガイド」という、コマのかたちの指針が作られました。なぜコマかというと、コマは回らないと倒れてしまいます。食事だけでなく、運動も大切だというメッセージがこめられています。

 この「食事バランスガイド」には3つの大きなポイントがあります。
(1)1日に何をどれだけ食べたらよいかを、食材でなく料理で示しています。いちばん上にご飯や麺類などの主食があり、次の段は肉や魚料理ではなく、ほうれん草のおひたしや芋の煮っころがしなどの副菜です。ですから、野菜が大切だということを強く示しています。
(2)栄養指導の専門家でなく、一般の人がいつでも気軽に使うことにより、よりよい食生活がおくれるように工夫されています。とくに食事のバランスがくずれ、コマが倒れそうな食生活の人に少しでも役立つよう作られています。
(3)それぞれの料理は主食、副菜…のどれにあたるかを覚え、料理の種類はひとつ、ふたつと数えます。そして性別、年齢、活動レベルによる目安を参考にしながら、自分に合ったコマを作って活用します。

 コマは倒れそうでも倒れないという利点があります。毎食毎食バランスを整えるというのではがんじがらめになるので、今日は主菜が多いから明日は少なめにしようなどとコマをコントロールしながら、楽しい食生活をおくりましょう。
関連項目:食育体験ワンダーランド「お役に立ちます 食事バランスガイド」

そのほかにも、さまざまな講演が

食育人形劇(実演:かぼちゃ会代表・原哲子/坂井市三国町)
6月9日12:30〜13:00 人形劇

 子どもたちの食生活のみだれを何とかしたいと活動をはじめた、「かぼちゃ会」の10人のおかあさんたちによる人形劇。サツマイモ、ピーマン、トマトなどの人形で「朝ご飯をしっかり食べよう」と呼びかけたり、「ごんべさんの赤ちゃん」の替え歌を歌いながら、好き嫌いをなくして、大きくなろうと会場の子どもたちに呼びかけました。


知らなきゃ損する 今が「旬!」梅ぢから&らっきょう三昧
(講師&実演:中山美鈴/食文化研究家、藤清光/ふるさと料理人
6月9日14:30〜15:00
6月10日11:30〜12:00
実演・試食

 息の合った2人による、ユーモアあふれる語りと料理実演のテーマは、梅とらっきょう。これにゴーヤをプラスして「夏を乗り切る3点セット」と、簡単な梅の漬け方、らっきょうを生で食べる工夫やおいしい漬け方、さらにはゴーヤの調理法を実演し、参加者から拍手喝さいをあびました。らっきょうの生食ははじめて、という人も多かったようです。


特別講演〈土からの食農教育〉(講師:竹熊宜孝/菊池養生園名誉園長)
6月9日15:30〜16:30 講演

 聴診器をもつかたわら、畑で野菜をつくり、馬を飼いながら、公立菊池養生園(熊本県)で週2回の「養生講座」などを行っている73歳の現役医師・竹熊さん。竹熊さんの話を聞きたいと、養生園には年間30万人もの人が訪れるとか。特別講演では「今の日本の政治や経済はいのちが見えなくなっている。農業を大事にすることは地球のいのちを大事にすること。だから“食農”教育が大切なんです」と熱く語りました。


知らなきゃ損する おいしい堆肥の使い方(講師&実演:武田健/AML農業総合研究所所長)
6月10日13:30〜14:00 実演・試食

 農業に計量システムを取り入れることにより、採算の合う農業経営を目指して研究活動を行っている武田さんは、今回、堆肥の上手な作り方と使い方を指南。ふわふわした土では発芽のばらつきが起きるので、培養土をぎゅぎゅっと押す「鎮圧」をかけることが大切という話に、参加者は大きくうなづいていました。料理研究家でもある武田さんによる、青森産の山いもをすりおろして焼いた、山芋ステーキの実演と試食も好評。


関連項目:食育体験ワンダーランド「知らなきゃ損する 堆肥のビックリ教室」

野性動物と知恵くらべ―野性の猪肉を味わう(講師:江口祐輔/麻生大学獣医学部講師)
6月10日14:30〜15:00 実演・試食

 人と野性動物のよりよい共生をめざす「ワイルドライフマネジメント」の研究者である江口さんは、イノシシによる農作物の被害を防ぐための方法をさぐっています。イノシシの害が相次いだ島根県美郷町では年間700頭を捕獲し、イノシシ肉をおいしく食べる処理システムを作り上げています。会場では美郷町で捕獲されたイノシシ肉の試食も行われ、「少しも臭みがない」「やわらかくておいしい」と、驚きの声があがっていました。

関連項目:いきもの出会い広場 「野生動物と知恵比べ」


(※)撮影:坂本文明、文責:ニッポン食育フェア事務局 このサイト内の文章・写真の無断転載を禁じます