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ニッポン食育フェア
食育推進全国大会
 

ニッポン食育フェアin福井 ―いのち感じる 大地からの食育

食育推進セミナー & 食と農の応援団交流会

 大会一日目の午後、フェアの会場をはなれた一室で、「食育推進セミナー」がひらかれました。甲信越地域で食育の実践的な活動をされている4名の講師をむかえ、100名近い参加者が集う盛会となりました。

 このセミナーの特徴は、参加者もまた、各地ですでに先進的な活動をされている方々であること。そのため、講師のお話から自分の実践につながるヒントはないかと聴き入る人、メモをとる人など、会場は静かな熱気につつまれ、「食育」への関心の高さを実感できる場となりました。

学校支援  地域の学校を支援するNPOがすすめる 
学校から始まる地域型食育推進活動〜曽田耕一さん

 一人目の講師は、曽田耕一さん(上越地域学校教育支援センター(以下、JSIRC) 常務理事、学習支援センター長)。

 JSIRCは、「地域の子どもは、地域で育てる」ことを目標に掲げたNPO法人で、平成14年度から活動をしています。市内76校を抱える上越市は、3〜4校に1人しか栄養職員がいないこともあり、「学校の先生方に負担のかからない食育をどのようにおこなえるか」が大きな課題となっています。
  そこで曽田さんが担当されている学習支援センターでは、児童・生徒の「食への気づき」ができる場を提供することで、ひいては家庭や地域にその気づきが広がることをめざしています。

 行われる活動は、小・中学生と地域住民を対象にした「食育意識調査アンケート」、機関紙への食育記事をのせるなどの「広報活動」、花ずしやおむすびなどを子どもが自分でつくる「体験型食育活動」など、多岐に亘ります。

 ただし悩みは…、と曽田さんは、
「同じ学年の子には同じ体験をさせてやりたいんですが、クラスの数が多くなると、体験の受け入れ先がなくなってしまいます。また、食育の推進だけを目的にした体験授業は、先生方にとって負担が大きくなってしまうんです。そこで【水餃子を食べながら異文化交流】というように、ほかの目的とも組み合わせた企画をたてることも大切なんです」と、お話されていました。

 地域ぐるみで息の長い食育活動を続けるためには実状にあった支援が必要であるという内容には、会場のみなさんも大きくうなずいていました。

講師の曽田耕一さん

食品産業  味噌から学ぶ 「いえ」「むら」の食育
「のぞいてごらん! 小さな麹の大きな仕事」〜新村義孝さん

 二人目の新村義孝さんは富山市内で醸造業を営む「麹屋さん」です。味噌や醤油を発酵させるのにかかせない麹をつくっています。

 「こんなふうに注目される前から、食育はしていたんですよ」とにこにこしながらおっしゃる新村さん。というのも、家業のことを精いっぱいやるためには、この仕事の大切さを伝えるしかないと思っていたからだといいます。
  「富山も福井も、米・水・塩・大豆のおいしいところです。だから農家は自分の家で味噌も醤油も手作りしていたし、麹屋も、いうなら今のコンビニと同じくらい町内に店を構えていたんです」

 そのようすが大きく変化したのが、昭和30年代の高度経済成長時代と、その後の「バブル」と呼ばれた時期。自宅で味噌を作る人が減り、麹屋が激減してしまいました。結果、
「消費者の方が値段に見合った味の違いがわからなくなってしまったんです。ただしね、バブルにもひとつだけいいことがありました。こんな時だからしっかりしたものを作りたい、と本物の味噌を手作りする味噌屋さん、それを買いたいという人がでてきてくれたんです」
  その動きはやがて、新村さんのつくった「とやま麹の里研究会」につながっていきます。

 「まず大豆を2〜3時間煮ないといけないのでたいへんなんですけれど」という出前講習会、「家庭がダメなら工場に来てください!」と工場での味噌づくりを体験してもらうなど、食べる楽しさ・つくる楽しさをみんなで味わう活動が始まりました。

 観察用の味噌セットを使った体験授業では、「味噌がかわいくなってきた」「お父さんとお母さんにもつくってあげたい」「自分でつくった味噌は今まで味わったことのない味でした」と、子どもたちの新鮮な感動が伝わる感想文が、新村さんの手元にいくつも届いたそうです。会場でもそのいくつかが紹介されました。

 「ストーリーのある味噌づくりで地域の食文化を守る」活動からは、人の手のあたたかさが伝わってきました。

講師の新村義孝さん

自治体 市民のライフステージに合わせた魅力ある
食育事業の企画・運営法 〜中田典子さん

 三人目の中田典子さんは、小浜市での活動を紹介してくださいました。平成13年9月に「食のまちづくり条例」を全国で初めて制定した小浜市は、古くより豊かな食文化をもつ地域として知られています。奈良・平安時代から、地元の豊富な海産物や塩を朝廷に献上していたという記録が残るほどです。

 その「御食国おばま」の姿を地域の人に知ってもらうために、中田さんは数々のプログラムを企画・運営されてきました(すでに隔月刊誌『食農教育』(農文協刊)などの多くの媒体で、その活動が紹介されています)。

 「人は命を受けた瞬間から老いるまで、食に育まれます。それを【生涯食育】と名付け、さまざまなライフステージにあわせた食育活動をしています」
 その核となる実践の方針は
1. 栽培する
2. 料理する(火を使う)
3. 共食(コミュニケーションをとりながらみんなで食す)
の三本柱にあります。
  それを、乳幼児・小中学生・成人・高齢者などさまざまな年齢層にあわせてどの方針を強めた活動を行うかを塩梅しながら、イベントを企画していきます。
たとえば、「孤食」が多くなりがちな高齢者の場合、みんなで一緒につくり食べられる、料理教室を企画するといった試みです。

 またなかでも先進的な試みといえるのは、料理を手段にした教育プログラム「キッズ・キッチン」です。すべての就学前の児童(保育園・幼稚園の年長児)が対象であることが、大きな特長です。

 ただしこれは、料理をつくるのが一番の目的ではありません。子どもたちだけで一緒につくり、集団で協力してつくること、他人を思いやることを学びます。さらに食材を扱うことを通じて命の大切さを学ぶ、体験型プログラムなのです。
このような試みを続けたところ、なんと市内14校の学力が、県内でもトップレベルに。その結果をみた親御さんも、体験学習が学力向上に必要だという手応えを感じ始めているようです。

 最後に中田さんは、時代のニーズにあわせた「食育」ができるよう、これからはさらにスタッフを育成・組織していきたいという希望を語っておられました。

講師の中田典子さん

健康福祉 石川県の食育と体験型食農保育の実践〜
手だし口だしなし 子どもが食べる主体になる!〜沼田直子さん

 四人目は沼田直子さんは、石川県健康福祉部で少子化対策監室子育て支援課の課長。
「食育の基本的な考えは、小浜市の中田さんのところとほとんどズレがないことに、驚きました。繰り返しになってしまうかと思ったくらいです(笑)」とおっしゃりながら、石川県での取り組みについてお話しくださいました。

 考え方の基本は、何のため(目的)、どうやって(目標)、そのためには(手段)の3つにわけられています。それぞれ

(1)何のため→生き抜く力、生きる力を育てよう。自己達成感を育てよう
(2)どうやって→自分の体をつくる食事は自分で選び、自分で作って食べられる能力を育てる
(3)そのためには→子どもが主役、体感・経験を重視、周囲の大人の意識が変わる、地域が連携して見守る

という基本路線を決めておけば、実際に企画を立てる時の軸がぶれない、と沼田さんは言います。

 また、県の担当者はあくまでも地域のための黒子に徹することで、食育の主体(=子どもや保護者、市町村の担当者)の「させられ感」が「したい感」に変わっていくとのこと。
 「子どもたちには、自分のことが大好きだと思ってもらいたいのです。そのためには、ライフスキル、つまり自分で選び・自分で作る能力を育てることが大切。地域のノウハウを結集して、子どもが自己達成感を味わってもらうための試みをしていきたいと考えています」とお話しされ、県レベルでも市町村レベルでも、食育は「子どもの自然の力を伸ばす・育てる」ことが大切なことが伝わりました。

会場からは熱心な質問もとんだ 講師のみなさん

食と農の応援団交流会

 セミナーのあと、「食と農の応援団交流会」がひらかれました。年に一度、食と農の応援団のメンバーや、食育を各地で実践している人々が集まり、情報交換と親睦を深めようというこの企画、今回も、参加者がリレー方式で日ごろの活動を自己紹介していきました。
 また、会場ではきりたんぽ・五平餅といったお米の郷土料理もふるまわれ、「交流会」の名にふさわしく、賑やかで和やかな雰囲気につつまれました。

◆リレートークに登場された食と農の応援団のみなさん◆
服部幸應さん

砂田登志子さん

池田玲子さん

小出弥生さん

坂本廣子さん

竹熊宣孝さん

武田健さん
 

(※)撮影:倉持正実、文責:ニッポン食育フェア事務局 このサイト内の文章・写真の無断転載を禁じます