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ニッポン食育フェア
食育推進全国大会
 

ニッポン食育フェアin群馬 ―“食育”は、農業・農村体験から

食と農の応援団劇場

 「“食育”は、農業・農村体験から」をテーマに開催された〈ニッポン食育フェアin群馬〉。
  会場に設けられた「食と農の応援団劇場」では、2日間にわたって合計8プログラムが組まれ、試食や実演もまじえて、食育をめぐる講演が行われました。

群馬の粉食文化「おきりこみ」
〜講師:志田俊子(NPO法人 群馬の食文化研究会 理事長)〜

6月7日・8日 11:30〜12:00 講演試食

 群馬県は、日照時間が長い乾燥地帯であることから、良質の小麦がとれ、小麦粉を生かした郷土食がつくられてきました。
  その代表的料理「おきりこみ」は小麦粉をこねてしばらく寝かし、薄くのばして切り、具材とともに煮込む、自家製煮込みうどんです。

 10年ほど前に県内996軒の農家の協力で「おきりこみ」のアンケート調査を行なったところ、大部分のかたが「あたたかい家庭の味」というイメージをもっていました。

 また、使われる具の種類は合計48種類にも及び、人参、長ねぎ、大根、しいたけ、じゃがいも、里芋、大豆製品の油揚げなど、すべて野菜です。群馬の郷土食「おきりこみ」をふるさとの味として伝えていきたいものです。

●伊勢崎市在住の福田実典さんによる、めん打ちの実演

 群馬では普段の夕飯はご飯ではなく、「おきりこみ」でした。嫁いでから15年間、毎夕2升の小麦粉をこね、家族8人分の「おきりこみ」をつくっていたという福田さん。
  年季の入った手ワザで、固い小麦粉の大玉はたちまちのうちに丸く平らにのばされ、包丁で切って細い麺ができあがりました。


麺の幅がきれいにそろった熟練の技

参加者には「おきりこみ」がふるまわれた。手打ちのめんと、大根、しいたけ、油揚げなどたくさんの具入り

郷土食と「食事バランスガイド」
〜講師:早渕仁美(福岡女子大学 教授)〜

6月7日13:00〜13:30 講演

 日本版フードガイド「食事バランスガイド」は、日本人にとって望ましい食事のとり方とおおよその量を、コマのイラストで示したものです。近年、食生活の乱れ、生活習慣病の増加など健康上のトラブルが大きな問題となってきたことから、2005年に厚労省と農水省によって策定されたもので、私も検討会の一員として策定にかかわりました。

 「食事バランスガイド」はゆれながら回るコマ。だれでもわかる、だれでもわかる健全食生活支援ツールです。
 コマは上手に回さないと、バランスが悪くなって倒れてしまいます。子どもからお年寄りまで健全な食生活をおくるために、食についての知識と食事を選択する力を身につけなければなりません。

 また諸外国のフードガイドは、食材や食品で示したものが多いのですが、日本版のコマには主食、副菜、主菜の順に料理が入っています。
  料理で示したことにより全国各地に伝わる郷土料理や特産品を取り入れた「地域版食事バランスガイド」ができるようになりました。

 最初につくられた「地域版食事バランスガイド」は、主食に焼き芋を入れ、チャンプルーなどの郷土料理を加えた沖縄県版です。「ぐんま食事バランスガイド」には「おきりこみ」「こんにゃくの田楽」などの郷土料理が入っています。福岡県版をはじめ全国各地で続々と地域版が作成され、「食事バランスガイド」は食文化伝承のツールとしても活用されているのです。

子どもたちの本気を引出す「教育ファーム」授業
〜講師:舘岡真一(新潟県上越市立高志小学校 教諭)

6月7日14:00〜15:00 特別講演

 本校では5年生の総合的な学習で、田んぼに子どもたち1人ひとりの区画を決め、自ら責任をもって米をつくる学習を続けています。
 しかし給食の残量が減らないことから、食べ物を作る側と食べる側の距離を縮めたいと考え、地域の方々に協力をお願いし、また地域に呼びかける活動をはじめました。
(この高志小学校の取り組みは、「地域に根ざした食育コンクール2007」[別サイトへリンク]で最優秀賞を受賞しました)

 十日町市の農家に種もみからの米づくりを教えてもらい、田植え、夏の草取り、そして9月末の稲刈りを行ないました。そして全収穫量60kgの半量を、おにぎりにして学校の文化祭で販売することにしました。
 子どもたちに本気になって取り組ませるために、もし売れ残ったら残飯として処分するという条件をつけました。

 5年生は87人ですから、1人につき6人のお客さんが買ってくれれば完売できます。子どもたちは「手作業で大切に育てたお米です」と書いたパンフレットをつくり、近所の人などを訪ねて買ってくれるようお願いしました。当日は2時間で完売。地域の人たちのあたたかさを実感しました。

 ところが、給食の残量はあいかわらず減りません。そこで、給食の米を提供してくれている、地元上越市の生産者に会いにいきました。米の生産者と、米づくりを体験した自分たちの思いは共通することを知った子どもたちは、それからは給食のご飯を残さなくなりました。

 今年度、6年生に進んだ子どもたちは「上越のごちそう」というテーマに取り組んでいます。5月は地域のおばあちゃんに教えてもらいながら、笹もちをつくりました。
 子どもたちは米づくりや郷土食づくりを通して、地域のいろいろな人に出会い、いままで見えていなかった多くの人々の存在に気づくようになりました。地域とつながり地域と語ることで、子どもたちは成長するのです。

里山・田畑の生き物たち「食べて防ぐ鳥獣害対策」
〜講師:江口祐輔((独)農研機構 近畿中国四国農業研究センター 鳥獣害研究チーム)

6月7日15:30〜16:00 講演試食

 現在、日本全国で野生動物による食害の被害額は年間200億円にものぼっています。そのうち50億円は20万頭もいるイノシシによるもので、駆除しても駆除しても追いつかないのが現状です。
  シカ、サル、アナグマ、ハクビシンなども人里近くに現れるようになり、野生動物が異常発生していると思いがちですが、はたしてそうでしょうか。

 いまから100年ほど前の明治時代初期に野生動物の大乱獲があり、日本オオカミやトキなどは絶滅状態となり、イノシシやシカなどは山奥に身をひそめました。そして山奥で少しずつ個体数を増やしました。

 その後、林業の衰退により山が荒れ、近年の減反によって山あいの田畑が耕作放棄地となっていき、野生動物がどんどん増えますが人間は気づきません。そして1990年代になり、人里に現れるようになったのです。

 対策としては
1. 野生動物の生態を知って、いやがる環境をつくる
2.田畑を効果的に囲う
3. 適切な駆除を行う
そして、「貴重な資源としておいしく食したい」ものです。イノシシはブタの祖先ですから、野性味たっぷりのおいしい食肉となります。
  島根県邑智郡美郷町では「おおち 山くじら」、群馬県吾妻郡中之条町では「あがしし君」というブランド名で地元の特産品となっています。


美郷町産「おおち 山くじら」のソテーの試食。
、「思ったよりおいしい」という声が聞かれる。
肉の処理のちがいで、肉の臭みが野趣ある旨みに

田畑と学校を結ぶ「教室農園」
〜講師:竹村久生(浜松市技術科研究会)

6月8日10:30〜11:00 講演

 学校の教室に畑を持ち込む「教室農園」づくりを通じて、子どもたちから食と農の関心を引き出す試みを続けています。

 きっかけは、農業高校に初めて着任した時のこと。なにも勝手がわからず、まず農家の方に「どうしたらおいしい野菜ができるのでしょう?」とたずねました。
 するとその心配顔を見た農家の方は笑って、「先生、だいじょうぶ。野菜は育ててくれる人の足音を聞いて大きくなるんだよ」と、毎日畑に通って育てることの大切さを教えてくれました。

 でも生徒にただ「畑に行こう!」といっても、なかなかその気になってくれません。「それなら、野菜の方から学校に来てもらおう!」と発想を180度転換。「だれでも・どこでも・絶対にできる」畑づくりを編み出しました。

 畑づくりのコツはいくつかあって、失敗する時は、するべくして失敗するんです。
 成功のコツはまず、「種から育てる」こと。よい種を買って自分で育てた方が、苗を買う(安い種を使っていることが多い)より、格段にうまくいきます。
 では実際に、牛乳パックを鉢に使った種の植え方、水やりのコツ、トロ箱からmyイチゴ畑をつくるなどの実演しましょう(実演内容の詳細については、教育ファーム『もったいない教室』の提案もご参照ください)。

 私はこれを“野菜のペット化”と呼んでいます。毎日面倒を見るうち、畑ではこんな苦労があるんだと理解が深まるし、なにより自分で育てているからこそ、“自分の”収穫物がいとおしい。
 たった1粒の種がこんな大きな野菜になる! とわかると、子どもたちの顔が驚きに満ちたものにかわっていきます。

お茶の樹を探そう!食べよう!育てよう!
〜講師:武田善行(元 野菜茶業研究所)、石川美知子(NPO法人日本食茶の会)

6月8日13:00〜13:30 講演

武田善行さん

石川美知子さん

●武田善行さんの講演

 チャはツバキ科ツバキ属の植物です。ツバキは新芽を摘んでしまうと、もう新しい芽は出ないのですが、チャは1番茶を摘んでもすぐに新芽が出てきて、40〜50日後には2番茶を摘むことができます。煎茶や番茶は不発酵茶、中国のウーロン茶は半発酵茶、紅茶は発酵茶というように、茶葉を摘んだらどこまで発酵させるかによって世界中でいろいろなお茶がうまれました。

お茶には疲労回復、血液の循環の促進などの効用のあるカフェインや抗酸化力、抗菌などの効用があるカテキンなどが豊富です。茶葉にはタンパク質や食物繊維など水に溶け出さない成分も多く含まれており、茶葉を食べれば茶の栄養分をとることができるのです。

●石川美知子さんの講演

 茶葉に含まれる水溶性成分は35パーセントです。お茶として飲むと残り65パーセントの有用な成分は茶ガラとなって棄てられてしまいます。茶葉も野菜として食べましょう。佃煮やてんぷらに、またバジル感覚でスパゲティなどに使ってみてください。

 近所でお茶の樹を探してみましょう。茶の苗を買ってきて庭に植えたり盆栽のように育ててると、山椒の葉のようにちょっこと摘んで使うのに便利です。子どもたちの味覚を育てるためにも、茶葉特有のほろ苦さを体験させることは大切です。

試食の「粉末緑茶のヨーグルトかけ」をいただく。乳酸菌とカテキンが同時にとれる健康食。ほかに「茶の葉とカツオの炊き合わせ」も。

そだてたおコメ大変身!「ビックリ米粉給食」
〜講師:坂本廣子(サカモトキッチンスタジオ主宰 食育・料理研究家)

6月8日14:30〜15:00 講演試食

 昔からコメは“粒より”のものはごはんとして、そうでないものは粉に挽いて、一粒も余すところなく食べてきました。日本の食料自給率が40%を切った今でも、コメの自給率は90%以上です。古くて新しい素材・米粉を利用したいものです。

 うるち米を、従来の上新粉より細かく挽く技術が開発されたことから、農家のかたが大切につくってくださったコメでつくる米粉の活用の幅がひろがりました。そこで学校給食への米粉利用を提案します。

1.カレー、シチューのとろみづけに:
  具材をスープ煮して米粉を溶き入れます。米粉はダマにならないので、油なしでボリュームのある、ルーを使ったようなカレーやシチューが作れます。

2.揚げ物のころもとして:
米粉は小麦粉のようにぼったりと油を含んでしまうことはありません。冷えてもカリッツ、サクッツの揚げ物をつくれます。

3.アレルギー対応食として:
米粉はグルテンがないのでパンやケーキはしっとりふんわり、クッキーはさくっと焼きあがります。米粉を使えば、卵、牛乳、小麦の3大アレルゲンのうち、小麦粉を抜いたケーキを作ることもできます。

 米粉の利用は、“もったいない“からのおコメ大変身です。給食でも家庭でも、ごはんだけでなく米粉をどんどん使って食料自給率を高めましょう。

「鶏むね肉の米粉揚げ」「米粉でとろみをつけたカレー」の試食。
脂分の少ない鶏むね肉を使ったから揚げも、米粉の衣でジューシーに。


(※)撮影:倉持正実、坂本文明、文責:ニッポン食育フェア事務局 このサイト内の文章・写真の無断転載を禁じます