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ニッポン食育フェア
食育推進全国大会
 

ニッポン食育フェアin群馬 ―“食育”は、農業・農村体験から

食育推進セミナー & 食と農の応援団交流会

 グリーンドーム前橋での食育フェアと並行して、6月7日午後には、群馬県庁を会場に「食と農の応援団による『食育推進セミナー』」が開催されました。 テーマは「食育をどうすすめるか?〜関東地域の実践事例から学ぶ」です。報告者は5名。学校、給食、消費者、農家の立場での実践報告と、関東農政局からは食育のネットワークづくりについて紹介いただきました。進行は、NPO法人・群馬の食文化研究会の志田俊子さん。セミナーには80名を超える方々の参加を頂き、会場は満員となりました。

進行役の志田俊子さん

【報告1】学力のベースは食にあり〜学校がしかけるネットワークづくり

埼玉県 前伊奈町立小室小学校校長 渡辺俊行

 報告の一番手は、渡辺俊行さんです。食育をベースにした、学校がしかける地域ネットワークづくりについて、前任である伊奈町立小室小学校での取組みから報告いただきました。伊奈町では文部科学省と県の委嘱をうけて、3つのワーキンググループを中心に食育推進事業が始まりました。3つのワーキンググループがその活動の柱となり、安全・安心と地産地消をテーマにした給食、学校での体験学習、地域への啓発活動を展開しました。

 これらの取組みの成果として、子どもたちの朝食の欠食が減少していること、野菜を食べることを意識するようになったこと、給食の食べ残しが減っていることなどが確認されたとのことです。

※小室小学校を核にした地域ネットワークづくりについては、『食育活動』2006年9月号をご参照ください。
講師の渡辺俊行さん

【報告2】学校・家庭間での契約栽培!? とうがん給食の実際など

群馬県 玉村町立玉村小学校栄養教諭 坂本明美

 報告の二番手は坂本明美さんです。群馬県玉村町は、平成13年度以降、県や文部科学省によって食育推進事業の指定地区となり、学校、家庭、地域が連携した食育に取り組んできました。

 玉村町での主な取組みのひとつに、地場産給食があります。平成18年には、給食センターと農業委員会とが協力して、新しい給食メニューとして「玉村カレー」が実現しました。食材は地元の農家が栽培したもの。定植や収穫などの作業は、地元の子どもたちも手伝いました。

 もうひとつ、玉村小学校の「冬瓜給食」の取組みが紹介されました。「5個実ったら1個寄付」というキャッチフレーズで、給食用の冬瓜を家庭で栽培してもらったのです。この取組みを通して野菜に親しむ機会が増えた結果、子どもたちの残食が減り、家庭や地域との結びつきが強まったという報告でした。

※玉村小学校の冬瓜給食の実践については、『食育活動』2008年6月号をご参照ください。
講師の坂本明美さん

【報告3】家族みんなですぐできる スーパーからの食育を提案

神奈川県 食育向上委員会 吉川直美

 吉川直美さんからは、スーパーの食育の実践について報告をいただきました。最初に2枚のイラストが出されました。台所の今と昔を比べたイラストからは、特にこの50年での日本の食生活をまざまざと感じることができます。食材を買う場所も、今や量販店が主流です。しかも食の外部化が進み、今では、食材ではなく「料理」を選ぶくらしをしています。

 こうした時代にこそ、吉川さんは、スーパーが食育の担い手になりうると考えています。具体的な事例として、クイズや紙芝居などのイベントで子どもたちが食に親しむきっかけをつくったり、小冊子を配布して消費者に食の情報を届ける取組みなどを紹介いただきました。

講師の吉川直美さん

【報告4】食育は農業体験から〜大人も子どももかわるよ

埼玉県 ファーム・インさぎ山 萩原さとみ

 萩原さとみさんは、農業体験が食育に果たす役割について報告しました。ドイツのグリーン・ツーリズムの草分けであるアンリ・グロロー氏との出会いをきっかけに、独自のカリキュラムで農業体験塾を開いた萩原さんは、農作業の持つ意味を次のように整理しています。すなわち、農業を通じて「食」の安全・安心の意味を考えることができる、農作業に打ちこむうちにものの見方、考え方が変わってくる、健康や生きがいを得ることができる、そして落ち葉堆肥や生ゴミリサイクルのように資源を循環させることで、生活に必要なものを手に入れることができるというのです。

 萩原さんには、こうした農業体験を通じて大人も子どもも変わってくる、それが食育の基礎なのだということを、実体験を踏まえて語っていただきました。

講師の萩原さとみさん

【報告5】関東農政局ですすめる食育推進ネットワーク

関東農政局消費生活課課長 坂本里美

 坂本里美さんからは、食育推進における関東農政局の役割について紹介いただきました。関東農政局管内の各都県には、それぞれ食育推進ネットワークがつくられています。関東農政局はそれらをつなぐ役割を果たしています。具体的にはホームページやメールマガジンなどを通じて情報を発信し、交流をもつ場を提供しています。一例を挙げれば、本日の報告者である萩原さとみさんは、埼玉シェフズクラブと提携して地産地消に取り組んでいますが、これは関東農政局が仲介したものだということです。

講師の坂本里美さん

活発な質疑応答

 5名の方による報告が終わった後、質疑応答が交わされました。主なやり取りをご紹介します。 最初に会場から出された質問は、食生活と非行・犯罪の関係についてです。渡辺さんは、きちんとした食生活が家庭の絆を強くし、子どもも健全に育つという点を指摘したうえで、学校の給食時間も教育の一環ととらえて取り組んできたことを紹介しました。

 都会で食育を進める意義について、萩原さんは、いわゆる「生活指導困難校」といわれていた中学校の生徒との交流のエピソードを紹介しました。最初のうちは、あぜ道の橋が壊されたり、農具を畑に捨てられたり、大変な思いをしたそうですが、萩原さんはそんな生徒たちを信じて三年間向き合いました。そして卒業式に出席した萩原さんを、彼らは「おばちゃん、来てくれたんか」と歓迎してくれたのです。「農業を通して人は変わる」という萩原さんのお話には、会場の熱い共感が生まれました。


満員の会場

 セミナーの後には交流会も開かれ、参加者同士の情報交換の場となりました。今後の新しい動きに期待したいところです。


(※)撮影:倉持正実、文責:ニッポン食育フェア事務局 このサイト内の文章・写真の無断転載を禁じます