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食の楽しみが世代を巡る お茶粉豆、久堅御膳
―農高生がつなぎ役、お年寄りと子どもたち

大きな地図パネルに示された「下伊那農業高校アグリサービス科」「お茶粉豆」

下伊那農高 アグリサービス科とは…

 ステージに置かれた飯田市の地図パネルに、「下伊那農業高校 アグリサービス科」のプレートが張られ、まず今村みはる先生と3年生の大浦さん、藤井さんが登場されました。

 下伊那農高はアグリサービス科・園芸クリエイト科・農業機械科・食品化学科の4学科からなり、アグリサービス科は旧農業科と生活科がひとつになってできた学科です。宮川アナの「聞きなれない名前ですが?」との問いかけに、今村先生が、「農業の生産から流通、消費までを学び研究する学科です」「サービスというのはヒューマンサービスで、機械ではできない食文化・福祉・保育などが学習領域になります」との説明がありました。

アグリサービス科について紹介する下伊那農高今村みはる先生と、3年生の大浦さん、藤井さん


地域や専門家に食を学び、子どもたちに伝える

 アグリサービス科では「地域文化」の学習で、地域の人や専門家から食を学び、その成果を地域の子どもたちに伝える活動をしています。今年の取組みは、豆腐づくり。地大豆を使ったこだわり豆腐をつくっている豆腐屋さんを取材、製法を習いました。取材班はクラス全員に製法を伝達、試作実習を実施しました。職人技のむずかしさ、すごさを知るとともに、子どもでも失敗しないつくり方を研究。農高産大豆を使ったこの豆腐づくりは、「もぐもぐ隊」(下記参照)の交流クッキングメニューとして採用され、市内の親子に喜ばれています。

 豆腐づくりで出たおからも無駄にはしません。おからを使ったつなサラダや卵スープも提案。ゲストの管理栄養士、本多京子さんは、「手づくり豆腐のおからはおいしいので、これを活かすメニューを考えてサラダやスープにしたことがすばらしい」と感心されました。交流クッキングに参加したお母さんからは、お土産にしたおからでハンバーグ、ホットケーキをつくったといううれしいメールが届いたとのこと。

豆腐屋さんに豆腐づくりを学び、子どもたちに教える

もぐもぐ隊と交流クッキングした「おからとツナのサラダ」(左)、「おからの卵スープ」。写真上は主食の「梅としらすの味ごはん」
(写真提供:下伊那農業高校)

生徒が作成した、「おからとツナのサラダ」「おからの卵スープ」レシピ
(レシピをクリックすると大きな写真でみられます。レシピ提供:下伊那農業高校)

日本のチロルに熊谷千穂子さんを訪ねて…

 コンセプトは「地域から教わって、地域に発信する」こと。そんな取組みの典型が、昨年の3年生による「お茶粉豆」。
「お茶粉豆」の先生は85歳になる熊谷千穂子さんです。
「お茶の産地なので、お茶を使った料理コンクールがあり、それに出して優秀賞をいただきました。上村農産物直売所に出しています」と話す熊谷さん。

 南アルプス山系の旧上村(05年合併)、遠山郷下栗は、耕して天に至る急傾斜地。景観はすばらしく「日本のチロル」と呼ばれるところです。急傾斜畑のため、昔から米はできず豆や麦が作られ、また畑土を守るようにお茶が栽培されてきました。これらを活かし、大豆はもちろん、味噌も、お茶もすべて自家製の材料を使い手づくりしたのが「お茶粉豆」です。大豆に小麦粉をまぶし油で揚げ、砂糖をまぶし、味噌をからめ、粉茶をまぶして仕上げます。


熊谷千穂子さんと、学びに通った松下さん、櫻井さん


「日本のチロル」遠山郷。畑土を流亡から守るようにお茶や大豆がつくられている

大豆・みそ・お茶 すべて自給・手づくりのお茶粉豆

「お茶粉豆」の技を学ぶ

 「お茶粉豆を知っている方は?」との質問に、会場ではポツポツと手が挙がる程度。
  このお茶粉豆を知人からもらって、すばらしさに感動した今村先生が、「ぜひとも生徒に教えて」とお願いしたのです。生徒たちは、はじめて日本のチロルを訪れたとき「映画の一シーンを見るようなすばらしいところ」だと、感動しました。そして、千穂子さんは熱心に聴いてくれる生徒との時間を楽しみながら、うれしく伝授したのです。

 作り方のコツは、水に浸した大豆に小麦粉を少しまぶしてから揚げること。油の温度180℃を保って15分くらい時間をかけて揚げ、熱いうちに砂糖、味噌をからめ、粉茶をまぶすことです。生徒たちは千穂子さんの似顔入りのレシピを作成して、クラスみんなに伝えました。

熱心に学ぶ農高生に千穂子さんはうれしく伝授、ポイントは油温180℃で15分

子どもたちの食への思い…噛んでおいしいお菓子を

 試食した本多京子さんは「炒り大豆よりサクッとして、食べやすく、甘味と味噌の香りがあり、さらにお茶の香りがあって、ほんとうに風雅なお菓子です」。千穂子さんは、「いまのお菓子は、噛むことが少ないですが、お茶粉豆は噛むほどに味が出てきて、おいしくなります」と思いを語りました。これを受けて本多さんは「噛むことは、消化にいいだけでなく、頭の働きが活発になり、ダイエットにもつながります。大豆は良質たんぱく質と食物繊維が多く、女性にやさしいイソフラボンを含み、お茶は骨や血管の若さを保つビタミンKが豊富」と、お茶粉豆の魅力を紹介されました。

噛んでおいしいおやつお茶粉豆

お茶粉豆

  • 水にひたした大豆 500g
  • 砂糖 れんげ2杯
  • みそ れんげ1杯
  • 小麦粉(中力粉) れんげ2杯
  • 粉茶 デザート用スプーン2杯(お好みで変えてよい)

  1. 大豆を一晩水にひたす(12時間がめやす)。
  2. ざるにあげて水を切り、中力粉をまんべんなくまぶす。
  3. 180℃の油で15分間揚げる。油温を下げないように強火で。
  4. 豆が小麦色になり、小さくなったら、クッキングペーパーを敷いたガラスのボールに移す。
  5. 油が完全に抜けたら、ペーパーを除き、砂糖をからめる。
  6. みそをからめる(熱いうちにからめるのがポイント)。
  7. 粉茶をまぶしてでき上がり。

    ※約1ヶ月間、サクッ・パリッとした食感が保存できる。

農高生が子どもとお母さんたちへ伝える

 噛んでおいしいお菓子を子どもたちへ、という千穂子さんの願いを、生徒たちはつなぎます。その舞台が「もぐもぐ隊」との交流クッキングです。

 もぐもぐ隊は、鼎公民館の講座からスタートした「食育体験隊」で、鼎地区の29世帯80人(子ども50人)ほどが参加し、「五感を使って動いて、外に出て人に触れ合って」をモットーに、地域の人びとの協力のもと、親子クッキング、農業体験をおこなっています。

●下伊那農高アグリサービス科との連携による活動(平成18年度)
5月 手づくりソーセージをつくろう
7月 7月ピザを焼こう
8月 お魚1匹に挑戦だ(協力:水青会)
11月 下伊那農高文化祭(稲丘祭)見学
12月 下伊那農高郷土料理交流会 など

 農高のお姉さん・お兄さんたちは、子どもの目線でゆったりとした対応をしてくれて頼もしく、親の高校生像も一変し「自分の子もこんなふうに成長して欲しい」と感心するほどです。


元気に登場した山田安世会長と「もぐもぐ隊」のみなさん


もぐもぐ隊と下伊那農高との交流クッキング、ソーセージづくり(写真提供:下伊那農高)


85歳熊谷千穂子さんの大きな励み

 お茶粉豆は、お母さんたちが習って、家でも挑戦。「煙で部屋が真っ黒になった」失敗にもめげず再挑戦。「上手にできて、おいしかったよ」親の面目を守ったお話も飛び出しました。
 このように街の子どもたちにも伝えられていることで、「ほんとうにうれしいです。これからもがんばって作っていきます」と、感激を新たにする熊谷さんでした。

「ふだんの食事」をアレンジして人気の「もてなし料理」

 地域に受けつがれた食文化を掘り起こし、ふるさと料理を提供し県内外のお客様に喜ばれているのが、上久堅地区の柿野沢生産組合です。人気料理は「久堅御膳」。アグリサービス科の1年生たちは、この秋に生産組合を訪ねて、この料理を学び、お母さんたちの食を育てる思いも学びました。そしてこの日自分たちだけでつくった「久堅御膳」をもっての出演です。

 この日の「久堅御膳」は、五平餅、みそ汁、そばサラダ(そば・かいわれ・かに足・きゅうり・ミニトマト・ゆで卵)、天ぷら(さつまいも・ピーマン・なす・小えびのかき揚げと、この地域独特の饅頭の天ぷら)、炊き合わせ(しいたけ・人参・こんにゃく・ささげ・里芋・高野豆腐)、きゅうりと塩いかの粕もみ、酢の物(はるさめ・赤たまねぎ・大根・にんじん)、漬物(きゅうりの浅漬)、デザート(りんご)の9品

 特別のご馳走ではなく、この土地の人びとが昔から食べてきた「ふだんの食事」をアレンジしたものです。それが、ふるさと体験料理、都会から来る人への「もてなし料理」として喜ばれているのです。


柿野沢生産組合のお母さんたちからふるさと料理を学ぶ1年生(写真提供:下伊那農高)

「久堅御膳」の弁当をつくって出演された1年生の伊藤さん、近藤さん、山岸さん、遠山さん


受けつぎたい技、味覚、そして食材

 今村先生は、いまの生徒たちは野菜料理することが少なくなっているけれど、少し手を加えるとこんなにいろいろなお惣菜になることが驚きでそういう地域の知恵を学んだことが大きな財産になるといいます。

 生徒「炊き合わせは、野菜を別々に煮ました」
 本多「手がかかるけど、盛り合わせたときキレイで、ひとつひとつの  
素材の旨味が活きます」
 生徒「酢の物が好きでなかったけれど、おいしくいただきました」
 本多「甘い・辛いは小さいころ自然に身につくけど、すっぱい・苦い  
は学習して大人の味覚ができていきます」
 と会話をしながら、ふるさと料理体験のもつ意味を本多さんは話されました。

 そして、粕もみの「塩いか」に宮川アナが熱い視線を送ります。「塩いかは東京にはなくて、長野県にあるもの。味を知った人はここで買って持ちかえるほど」の信州のふるさと食材です。農高生4人にひとりずつに聞いて、知っている人が半分なことに驚き、ふるさと料理を学ぶ大切さを、熱くアピール。
 ステージの地図に、下伊那農高生、お茶粉豆の熊谷千穂子さん、もぐもぐ隊、下久堅のお母さんたちなどの似顔絵が張られ、地域がつながり、世代がつながる「食の学びのネットワーク」が描かれました。


ステージで紹介された地図

ふるさと料理には、伝えたい知恵と技、食材がいっぱい。炊き合わせ(左)と、きゅうりと塩いかの粕もみ