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小学生も参加 伝統の人参を復活、讃歌も生まれた
―小野子人参と「お年取りの汁」

小野子人参をもって登場した上久堅小学校3年生と担任の小沢研二先生

 ステージに登場したのは、手に手に人参をもった上久堅小学校3年生8人、担任の小沢研二先生、小野子人参クラブの北沢健次さん。
 宮川アナ「これは?」
 子どもたち「小野子(おのご)人参です!」と元気な返事。
 宮川アナ「(会場へ)小野子人参を知っている方は?」
 あちこちから手が挙がりました。地元でも知らない人は多いようです。

「知っていますか?」の問いに会場から手が挙がる。人参を掲げている人が小野子人参クラブ代表の北沢健次さん

ここでしかできない「小野子人参」の魅力

 3年生は「総合的な学習」で、この小野子人参を学校の畑で栽培しながら、調べ学習と観察を重ねてきました。その報告をお聞きください。

 「昔は長人参と呼ばれていて、小野子で作られていました。小野子地区の赤土はとても軽くて石がないのが特徴で、長さ50cmくらいの人参ができます」

◆小野子人参クラブ代表の北沢健次さんのお話 ◆

 小野子地区でも粘土を含まない軽い赤土で良いものが育つ土質限定の長人参である。昭和の後半から短根人参(西洋種)に変わり、長人参が作られなくなっていたので、地域で20数名が小野子人参クラブを作って、復活を目ざし栽培を続けてきた。小野子人参は甘味があって、煮崩れせず、風味が残る個性派人参である。

土を学校園に運び込んで、3年生が栽培に挑戦

 担任の小沢先生は、「地元の特産物を勉強しようと、小野子人参クラブにお願いして始めました」「学校の土では長く育たないので、小野子の赤土をダンプで運んでもらって畑をつくりました」。地域の人びとの熱い思いと支援を受けての「総合的な学習」です。クラブの皆さんの指導で種まき、間引きと管理しながら、子どもたちは熱心に観察、記録を続けること4か月。

小野子から赤土を学校園に運んで畑をつくった。
たね播きから間引き・収穫まで熱心に観察、記録を続けた
(写真提供:上久堅小学校)

調べ学習・観察で深まる小野子人参とのつき合い

 「タネがとても小さくて、ビックリ。砂と混ぜてまきました」
 「5日たつと芽が出てきたけど、人参の芽がどれかわからなかったので図書館で調べました。がんばって草を抜かなきゃと思いました」
 「近くのは栄養をとりあいっこするので、間引きしました」

 人参の成長とともに、このふるさと特産野菜との付き合いが深まっていく様子が伺えます。
 間引きした人参もむだにせず、カレー、きんぴら、浅漬、みそ漬、みそ汁などにして味わいました。そのときの感想は「香りや味が濃いので、漬物がよくあいました・・・ご飯と食べたらあうと思いました」。会場からは「ホーッ」と、感心・納得の声があがりました。

 この日、屋外テントで3年生が販売した小野子人参を生で試食した本多京子さんは「カリカリしていて、甘味があって、おいしいです」。袋ごと買ったそうです。
 こうして「食育のつどい」の開かれた10月の下旬に収穫を迎えました。

 「土が硬くて掘りにくかったです。やってくうちに楽しくなって、すぱっとぬけるので気持ちよかったです」
 「シャベルで傷つけないようにするのがむずかしかった。長い人参でびっくり」しながらの、うれしい収穫でした。

間引きした人参をカレー、きんぴら、漬物などにして試食。みそ漬が一番人気
(写真提供:上久堅小学校)

育てることから売ることつながった学習

 飯田市では、学校園で野菜を育てて食べる学習から、もう一歩先へ進み、育てて売る学習が、JA南信州の直売所「およりてファーム」と小学校の連携で実現しました。

 今年度出荷したのは千栄小学校、松尾小学校と、上久堅小学校。販売学習で子どもたちは、野菜の種類・品種のことを調べる、PRするための絵を描く、声を出してアピールする、などさまざまな個性的な力を発揮します。
  また、野菜生産には経費がかかっていること、収穫量と原価、売りたい値段と市場価格、などについて知り、地域の農家の仕事、苦労と努力を理解するなどの学びにもつながります。

 「食育のつどい」の日、屋外テントでは、上久堅小が小野子人参、千栄小が大根、浜井場小がもち米と大豆を販売しました。いずれも、春から栽培・調べ学習を重ねてきた、思いのこもった生産物です。

屋外テントで小野子人参を売る。完売した

「小野子ニンジンの歌」でアピールしよう!

 宮川アナ「育ててから、食べてもらうまでつながった学習は、まさに下伊那農高のアグリサービス科のようですね。雨のなか、がんばって売りましたね」と感心。これに小沢先生が「売るためには人を寄せなければなりませんので・・・」と応じ、子どもたちの詩から歌詞をつくり、小沢先生が作曲した「小野子ニンジンの歌」をみんなで元気よく歌ってくれました。ではお聞きください。

会場に感動を呼んだ「小野子ニンジンの歌」

◆「小野子ニンジンの歌」◆

作詞 飯田市立上久堅小学校 3年生
作曲 担任の小沢研二先生
歌詞
 長ぁ〜い紅の体を 地中深く伸ばして
 青々豊かに茂る葉を 大きく広げる
 獣に荒らされても 芋虫が葉を食べても
 たくましく育つ俺たちは
 ☆小野子ニンジン  小野子のごのごニンジン
  長い長いニンジン  小野子のごのごニンジン
  小野子ニンジン  香り豊かなニンジン
  小野子のごのごニンジン  ニンジン
  小野子ニンジン
 (2番略)
 Rap 俺たちが育てた特別な
    自慢の味の作物さ
    空気もきれいに澄んでいる
    上久堅だからできるニンジンよ
    浅漬・みそ漬・きんぴらと
    何にでも合う最高さ
    カリカリ硬くておいしくて
    生の風味は超一流
 ☆繰り返し

ふるさと料理「お年取りの汁」に小野子人参

 元気に歌い終わると会場から、大きな拍手が沸き起こりました。宮川アナは「すばらしい。一所懸命歌った姿がすばらしい」と大感激。そして「皆さんはまだ、生でしか食べたことがなかったんですよね」と、ここで、小野子人参を使った飯田のふるさと料理「お年取りの汁」がプレゼントされました。

 つくって持ってきてくださったのは、郷土の食文化・伝統料理の掘り起こしや普及活動を続けてこられた「農村女性ネットワークいいだ」会長の平田睦美さんです。この日3階で同時開催の「いいだ食の文化祭」(主催:飯田市農業課、実行委員会:飯田市農業・農村男女共同参画推進協議会)の会場では「お年取りの汁」の試食サービスがありました。

「お年取りの汁」を持って出演された農村女性ネットワークいいだ会長の平田睦美さん

大晦日から正月に欠かせない「お年取りの汁」

 平田さんの手には、おばあちゃんの代から受けつがれてきた大鍋。そのなかに、色とりどりの野菜を煮つけた「お年取りの汁」。

◆「お年取りの汁」◆

 「お年取りのおかず」「お年取りの大汁」「お年取りの煮物」など呼び方もさまざまで、家によって入れる食材も、味もちがいますが、大根・人参・ごぼう・里芋など根菜がベースで、7種類の食材が入るのはほぼ共通しています。この日平田さんたちが振る舞い、ステージで試食してもらったのは、根菜4種にこんにゃく、焼き豆腐、糸こんぶが入ったものです。

 信州の農村には、商家風の年越しソバの慣わしは少なく、大晦日には男女とも早めに仕事を終え、正月以上のご馳走をして一年をねぎらいます。

 飯田地域では、その宴の最後にサッパリとご飯をいただくのが「お年取りの汁」。年が明けたらこの汁で雑煮をつくる家も多く、女性の負担を正月ぐらいは軽くしましょうという料理でもあります。

 また、野菜はおめでたい末広がりのいちょう切りや、半月切りにするなど、人びとの願いがこもっています。まさに暮らしの文化そのものの「お年取りの汁」に、小野子人参を使えば、煮崩れせず、風味、甘味もよく出て最高です。


小野子人参を使ったお年取りの汁


お年取りの汁の人参を「おいしい」と喜ぶ3年生

ここに、生きる力の源がある

 上久堅小3年生たちは、「とても甘い」「おいしい」。そして、宮川アナに「君たちが収穫した人参なんだよ」といわれて、喜びもひとしおでした。食の文化祭で試食サービスしたのは、お餅を入れてお雑煮にした新年バージョン。会場に食べた人がたくさんおられました。

 「屋外テントの小野子人参は完売しました」との小沢先生の報告に、本多京子さんが「食べることは生きる力のもとですが、人参を売っている子どもたちの様子、大根や大豆を売っている様子、ほんとうにイキイキしていました」と子どもたちに語りかけました。宮川アナは「世代を超えて、地域を超えてつながりあう食のネットワークを通じて、さらに飯田のよさをお互いに知り合っていけるように」とエールを送られました。

お年取りの汁(お年取りのおかず)

 4人分
  • 大根 200g
  • 人参 100g
  • ごぼう 100g
  • 里芋 100g
  • こんにゃく 1丁
  • 糸こんぶ 1袋
  • 焼き豆腐 1/2丁(ふつうの豆腐でもよい)
  • 煮干し 20尾
  • 調味料:しょうゆ 大さじ3、酒 大さじ2、みりん 大さじ1

  1. 大根は1cm幅のいちょう切り、人参は半月切り、ごぼうは2cm幅に切り、里芋は2cm幅の輪切りにする。(この汁に入れる野菜はすべて、ななめ切りを禁じられている)
  2. 糸昆布は手早く水洗いし、焼き豆腐は一口大に切る。こんにゃくは下ゆでしてから切る。
  3. 鍋に豆腐を除くすべての野菜等と煮干しを入れ、かぶる程度の水でゆっくり煮る。ときどきアクを取る。(煮干しは頭とわたを除くと味がよくなる)
  4. 調味料を入れ、最後に豆腐を入れて、お好みの味に仕上げる。
    『飯田の風土料理読本』より