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お母さんたちの「あがらしゃれ」
− 旬を楽しむ「たたき」、豊かな保存を活かす「炒り物」

梅の木パネルに「あがらしゃれ」の花が咲いていく

民謡「あがらしゃれ」の唄声とともに

 ステージの大きなパネルには、「真室川音頭」の歌詞のように、まだほとんど蕾の梅の木。その上に、真室川の食の心をあらわす言葉「あがらしゃれ」が、大きく書かれています。司会の宮川泰夫アナから「あがらしゃれ」は、「どうぞ家にあがってください」「料理を召しあがってください」の二つの意味を含んだ歓迎の言葉であるとの説明があり、会場に「あがらしゃれ」の民謡が流れました。

 ハアー たんと呑んでくろ なにゃないたてもヨ (ハッ コイチャ)   
 わしの気持ちが酒肴 (アリャノメ ソリャノメ)

 会場の皆さんに手拍子がおこり、唱和の声も聞こえるなかで、宮川さんが、以前に山形県取材のあと、ふるまいの席でこの民謡を歌ってもらいながらごちそうになり、心から歓迎されている気持ちになって、本当においしくいただいたという体験を語ってくれました。「もてなし・もてなされる温かい気持ちの言葉です。今日は、そんな『あがらしゃれ』を受けつぎ、やっておられる何組かの方々にお出でいただきます」。ステージの進行につれて、パネルの梅にいろいろな「あがらしゃれ」の花が咲いていくという趣向です。

ようこそ真室川へ!「あがらしゃれの盃」で歓迎

 はじめに、「宮川さん、本多さん、本日は遠いところ、ようこそお出でいただきました」と、4人のお母さんが登場されました。食生活改善推進協議会(食改)会長の佐藤マキ子さん、食改平岡地区の松澤栄子さん、「食べ事会」釜渕地区の高橋キワ子さん、食改大沢地区の小野キシエさんです。

 高橋さんの手には、大きな木製の盃。これは、木のこぶを使ってつくるので「こぶ盃」ともいいますが、底が平らでないので置くと転げてしまう造りです。お客さんはなみなみ注がれた酒を飲み干さないといけないので「置かずの盃」ともいいます。

 「飲めない人はどうするんですか?」との質問に、松澤さんが宮川アナの両耳をもって顔を上に向け、佐藤さんが盃を口にあてて「さあ、飲め飲め」。宮川さんの「耳ひっぱられたけど、まさに、あがらしゃれのシンボルですね」の言葉に、佐藤さん「あがらしゃれの盃です」。


出演された食改会長の佐藤マキ子さん、「食べ事会」釜渕地区の高橋キワ子さん、
食改平岡地区の松澤栄子さん、食改大沢地区の小野キシエさん

「あがらしゃれの盃」。宮川アナに飲ませ方実演

地元の食の豊かさを楽しみ伝える「食べ事会」

 そこで、佐藤さんたち食改、「食べ事会」のみなさんの「あがらしゃれ」です。「食べ事会」は、食改さんなど地域のお母さんたちが、ふるさとの伝統料理と食の豊かさを掘り起こし伝えていこうと、家庭料理を持ち寄って楽しむ会です。大沢・平岡・釜渕・及位など地区や集落で活動を続け、季節ごとに各地区をまわって、若い人にも混ざってもらい交流を広げています。

 ゲストの医学博士で管理栄養士の本多京子さんは、「食べ事会は、地域にあるもの、眼の前にあるもののすばらしさを再確認して、伝えていく『あるもの探し』の会ですね」と感心され、これから出てくる料理を大いに楽しみにされます。

「食べ事会」の様子。
釜渕地区、お日待ちの日(写真提供:真室川町)

いのち丸ごといただく「たたき料理」

 「あがらしゃれ」の冬料理として、まず「うさぎのたたき」を高橋さんが紹介してくれました。この地方には、旬を楽しむ料理として「たたき」があります。春には、わらび・みずなどの山菜をまな板の上で包丁かすりこ木で叩いて粘りを出します。夏から秋には、どじょう、もくずがに、冬にはうさぎ・きじ・やまどりなどを石の上で叩いて団子にし、汁に入れたり焼いたりして食べます。骨や甲羅などもいっしょに叩き、いのち丸ごといただく「もったいない精神」の料理です。

うさぎたたき汁

うさぎたたきを実演する高橋キワ子さん

 机の上には、うさぎたたき汁の鍋とともに、石と金槌、小さめの石臼が置かれました。「料理なのに、何で金槌なの?」と、頭を指さす宮川アナに、「今流行っているのと、違います!」と高橋さん。軽妙なやりとりに、会場に笑いが広がるなかで、たたきの実演です。骨をある程度たたいたところで、大根の断面を押し付けて尖った骨をくっつけて取り除く工夫、石臼の縁で大豆を打って加えて粘りを出すことなど、たたき文化の奥深さが披露されます。


 うさぎたたきをつくる

(1)骨を叩く

(2)黒大豆を打ち豆にする

(3)打ち豆を混ぜてさらに叩いて、団子に

うさぎが手に入れば仲間を呼んでパーティー

 試食した宮川アナは「けもののにおいがするかと思ったけど、スープの味がとてもおいしい」。骨のエキスの溶け込んだスープの旨味が、大根やごぼうにしみて、具だくさんの野菜がおいしい体の温まる汁です。

 高橋さんのご主人がうさぎを手に入れると、近所の方々を「食べにこいや」と呼び、一品持ち寄りの「あがらしゃれ」が始まるそうです。本多さんが「楽しそうですね。昔、動物たんぱくは貴重だったから、丸ごと叩いていただく知恵ですね。それに大豆でたんぱく質を補給。『打ち豆』して消化しやすくしているのもすばらしいです」と大事な意味を解説。高橋さんの「これまで食べてきた人たち、よかったですね!」の言葉に、会場の皆さんがうなずきました。

山菜・きのこ・野菜…豊かに保存して楽しむ「炒り物」

 真室川のお母さんたちは、春から夏、秋の忙しいなかで、山菜やきのこ、野菜を豊かに保存しておいて、冬に手間をかけて楽しむ料理をたくさん伝えています。その代表が「炒り物」。

 松澤さんが次のように説明してくれました。ふき・わらび・山うどなど山菜類を塩蔵したものを「青漬」、なめこ・さわもたつ・ひらたけ・まいたけなどのきのこ類や野菜を塩蔵したものを「塩漬」「置き漬」と呼びます。これら青漬・塩漬のものと、さらに乾燥保存のぜんまい・切り干し大根などを戻して、油揚げやこんにゃく、青大豆の打ち豆などと炒り煮します。戻したものは、炒っていると水が出てくるので、そこへ味付けしてつゆがなくなるまで炒めるので「炒り物」です。

干して保存したぜんまいを戻して、「ぜんまい炒り」を楽しむ


「炒り物」は段取り、面倒見がたいせつな、むずかしい料理

 炒り物は、使う保存食材が多彩なうえ、加える食材もいろいろなため、ひじょうにたくさんの種類がありますが、今日は「筍炒り」と「ぜんまい炒り」を、あがらしゃれ。このふたつにも青大豆の「打ち豆」が使われており、料理に香ばしさを添えるだけでなく、栄養効果も高め、食の楽しみをふやしています。

 本多さんは、「炒り物は、じつはとてむずかしい料理です。戻すときは頃合いを見通さないと、塩分が残ったりするし、炒めるときはつゆがなくなったときの味を考えて、味付けをしないといけないので、段取りと面倒見のよさが必要です」。これに応えて、小野さんが「ぜんまいを戻すには丸2日かけます。1日目は人肌のぬるま湯に入れて、水を取り替えるときは手で揉んでやわらかくしながら、1日3回繰り返します。2日目はひたひたの水に入れて火にかけて沸騰するまで煮て、冷まして、5cmくらいの長さに切って…」と説明してくれました。

「筍炒り」と「ぜんまい炒り」。つなぎの青大豆の香ばしさがきいている

「炒り物」料理のつくり方

筍炒り(松澤栄子さん)

  • 塩漬の筍
  • 打ち豆(大豆をさっと水にひたし、石の上で金槌で打ちつぶしたもの)
  • 桜えび
  • みりん
  • 醤油

  1. 塩漬の筍の戻し方:筍を鍋に入れて3分くらい湯煮し、湯を流して水に替える。3日くらい水を替えながら置くと、塩が抜ける。
  2. 塩出しした筍を、食べやすいように切り、鍋に入れて短時間湯煮をし、ざるで水気を切る。
  3. すぐ鍋に戻して、油、醤油、みりん、打ち豆を加えて、つゆがなくなるまで炒める。でき上がるちょっと前に、桜えびを入れる。

ぜんまい炒り(小野キシエさん)

  • 干しぜんまい
  • 青大豆の打ち豆
  • 醤油
  • みりん

  1. ぜんまいの戻し方:2日かけておこなう。1日目は人肌くらいのお湯にひたひたに浸け、1日3回ほどお湯を替えるごとに手でよく揉む。2日目は鍋にぜんまいを入れてひたひたのお湯で火にかけ、沸騰したら止める。
  2. 打ち豆は、薄味をつけてやわらかく煮ておく(炒るときに崩れないよう、最後に入れるため)。
  3. よく戻ったぜんまいをきれいに水洗いして、揃えて5cmの長さに切る。
  4. 調味料を鍋に入れ、ぜんまいを入れて炒める。つゆがかなり出るので気長に炒り、完全になくなる前に打ち豆を加えて、ひと炒りしてでき上がり。

保存・貯蔵蔵には、宝ものがいっぱい

 ステージのモニターに、佐藤さんの家の保存・貯蔵蔵の中が映しだされました。置き漬、青漬、味噌漬、こうじ漬など、桶からビン詰め、缶詰まで30種類以上あります。真室川のお母さんたちの宝もの、会場の皆さんはどのくらいやっておられるか、宮川アナが聞いてみました。年配の方は「ひととおりしております」。若いお母さんは「やっていません」「ちょっとだけやっています」。宮川アナから「明るい元気なお母さんたちが伝える保存、料理を若い皆さんも受けついでください」と応援メッセージがあり、パネルの梅に「たたき料理」と「炒り物」の花が咲きました。

佐藤さん宅の貯蔵蔵。手づくり保存食がいっぱい
(写真提供:真室川町)