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小学生に伝わる地域の味と技 −
小麦粉食文化 だご汁・ごろし・ふな焼き

育てた里芋・さつま芋を持って出演された麓小学校6年生5人と
担任の天本晶子先生

 「食ネット鳥栖」の取り組みの3本目の柱「食農教育の展開」の一つが、地域ボランティアと小学校が連携した郷土の食文化の体験と伝承です。ステージに、鳥栖市立麓小学校6年生5人と担任の天本晶子先生が出演されました。子どもたちの手には、学校の畑で育てた里芋とさつま芋がありました。

苦手な野菜は、土づくりから育てていただく

 麓小学校はもともと、地域とのつながりが強く、協力的な地域住民とともに農や食にかかわる活動を続けています。ステージのモニターに、6年生の野菜づくりの様子が映し出され、子どもたちが「近くの農家からもらった牛糞堆肥を、石灰といっしょに土を混ぜているところです」「堆肥は土を肥やす働きがあります」と、説明。会場のお客さんたちは「そうそう」と見入りました。

 子どもたちが管理作業している写真には、奥にトマト、真ん中にナス、手前に里芋が見えます。天本先生が「子どもの嫌いな野菜の代表がなす・ピーマン・トマトの3品です。育てることで食材に興味をもってもらえるように…」と、野菜選びの狙いを語ります。宮川アナの「嫌いな野菜は?」との質問に、一人の児童が「トマトが嫌いです。でも、食べたらおいしかったです」と体験を語りました。

左)畑に牛糞堆肥をまいて土づくり  右)苦手なトマト・なすを育てる。手前は里芋
(写真提供:麓小学校)

里芋がとれたから、食改さんと「だご汁」づくり

 先生の次の狙いは、育てた野菜を使って、地域に伝わる料理体験。核家族化のなか、家庭ではあまり作られないみんなで楽しむ料理を、ぜひ体験させたい。それには郷土料理がピッタリで、前年は筑前煮を作りました。里芋が収穫できた今年は「だご汁」でいこうと、いつものように地元の食生活改善推進員(食改さん)にお願いして、取り組んだのです。

 ステージに、食改の夜久洋子さん、小林和子さん、日山佐代子さんが、こねた小麦粉と「だご汁」をもって出演されました。日山さんが、「里芋に大根・にんじん・ごぼうなど根菜類がいっぱい入っただご汁です」と紹介されました。夜久さんが、「地域によって、平たいだご、丸いだご、ジャコや青海苔を入れるだごもあります」と多彩さを説明。この地域のだご汁は、野菜が煮えているところに、手で伸ばすようにしながら、ちぎって入れるもので、「つんきりだご汁」とも言われます。

食改さんと「だご汁」つくり(提供:麓小学校)

料理体験を楽しく語る6年生と、食改の小林和子さん、夜久洋子さん、日山佐代子さん


小麦粉団子と根菜いっぱいの「だご汁」

だご汁のつくり方

 4人分
  • 小麦粉 40g
  • ごぼう 80g
  • にんじん 40g
  • しいたけ 2枚
  • 里芋 80g
  • 麦味噌 大さじ3
  • 出し汁 800ミリリットル
  • 小ねぎ 10g

  1. 野菜はそれぞれ食べやすい大きさに切る。
  2. (1)の材料と出し汁を合わせ、鍋で煮る。
  3. ボールに小麦粉と水を入れ、耳たぶほどの硬さになるまでこねて丸め、濡れ布巾かキッチンペーパーをかけて、20〜30分寝かせる。
  4. 丸めただごを、鍋のつゆでチョッと濡らしながら、手で薄くのばしてちぎり、野菜の煮えている鍋に入れる。
  5. 味噌を溶き入れて味付けする。盛り付けて小口切りの小ねぎをちらす。

年配者の記憶の郷土料理を、いま伝えることのたいせつさ

 その作業を小林さんの手ほどきで、5年生が再度ステージで体験しました。家でおばあちゃんと作るという女子児童は見事な手つき。今年初めて体験した男子児童も感触を思い出しながら挑戦し、宮川アナから「上手にできたね。家でもやりなさい!」との励ましにうなずき、約束していました。

 試食したゲストの本多京子さんは「小麦粉のとろみに野菜の甘さがとけ合って、何杯でも食べたくなるおいしさです」と、地域伝統の小麦と野菜がつながった料理の知恵と味を賞賛されました。

 「だご汁、知っている人は?」という会場への問いかけに、年配の方を中心にたくさんの人の手が上がりました。ところが今、6年生5人のうち学校で作る前に体験していたのは1人だけという状況です。しかし体験の場があれば実に楽しく取り組み、おいしく味わい、地域の味覚を身につけていきます。そんな子どもたちの姿に、伝えることのたいせつさをみなさんが感じていました。

小林さんの手ほどきで「だご」をちぎる。上手になってきた

手でのばしながらちぎり、野菜の煮えている鍋に

暮らしに根ざした小麦粉おやつの楽しみ

 宮川アナから「もともとこの地域は米麦二毛作の地域のため、だご汁のほかにもさまざまに小麦粉料理があります。それを伝えているのが食改の野上京子さんです」と紹介され、野上さんが手づくりおやつ(間食)をもって登場されました。

 小麦粉を水で溶いてこねて延べ棒で薄く延ばし、茹でて砂糖醤油や味噌などをぬって食べるのが「ぬべだご」。粉を溶いて薄く焼いて食べるのが「ぶつ焼き」です。地域によって、ぬべだごを「ごろし」、ぶつ焼きを「ふな焼き」と呼びます。
  また、お客がきたとき「手打ち(うどん)にしようか、半ごろし(ごろし)にしようか」と物騒な相談をして怖がられたという笑い話が、いまも食交流のなかで語り継がれています。それほど、土地の暮らしに深く根ざした食べものでした。

小麦粉を使ったおやつ「ぬべだご」(「ごろし」)

地粉ならではのおいしさ

 ステージでは、ぬべだご(ごろし)をのして切る作業を6年生が体験し、みんなで試食しました。宮川アナの「すごい弾力で、ツルンとした食感がいいですね」、本多さんの「あごの力がつきます。もちもち感がいいです」という言葉に、食改さんたちが「地粉ですから」と太鼓判を押します。

 この日使ったのは基山町産の小麦粉でした。佐賀には、麺類向きのシロガネコムギに加え、パンやぎょうざ・春巻の皮などに向く待望の硬質・強力粉ニシノカオリがあり、地粉を楽しむ動きが農家のお母さんの加工グループから広がり、食改さん、さらには小学校の給食にも取り入れられています。林さんのロハスなアスパラ料理と同じように、地産地消のぜいたくです。

野上京子さんの手ほどきで「ぬべだご」 づくり。みんなが手元を注目

「昔の人がうらやましくなりました!」

 6年生は口々に「初めてですが、おいしい」と好評で、「昔の人がすごくうらやましくなりました!」と感じ入った子もいました。野上さんたちは「アスパラやソーセージなどを巻いてもおいしい」と、新しいクレープ風の楽しみも紹介。また「離乳食を終えた子どもにいいので、若いお母さんたちにもぜひ」と、手づくりおやつをすすめました。

 会場の若いお母さんたちからは「初めてです」「つくってみたい」との声が聞かれ、いっぽう「ぬべだごは『のべだご』と言って、黒砂糖を溶かしてつけるのがおいしい」という体験談やアドバイスがあり、伝統の小麦粉食文化の楽しみと期待が広がりました。

お礼の言葉に感激、会場のみなさんが共感

 最後に、6年生から食改さんへお礼の言葉が贈られました。
 「この前は、僕たちにだご汁の作り方を教えて下さって、ありがとうございました。食改のみなさんと一緒にだご汁を作るのは、とても楽しくて、少しふざけて注意されてしまいましたが、その言葉一つ一つに温かさを感じました。
 僕は、作り方も全然知らなかったので、教えてもらってもあまり上手くできなかったけれど、友だちと畑で一生懸命育てた里芋も入っていて、自分たちが作っただご汁は、とてもおいしかったです。こういう経験ができた僕たちはとても幸せだと思います。また、自分でも作ってみたいと思います」 。

 夜久さんたちからの「ありがたい言葉です」「苦労した甲斐がありました」という声に、会場に「よかったね」という共感がみなぎりました。本多さんは「子どもたちは、本当にいい経験をしています。『粉物ははまる』といわれ、こねたりのしたりすることで気持ちもはればれとしてくるものです」と、伝統の小麦粉料理による世代を超えた交流の意味を述べられました。

お礼の言葉に食改さんも会場のみなさんも感激