そうめん汁
煮しめ
 そうめん汁
 煮しめ
旬の魚、桜鯛
鯛をもって出演された松本さんご夫妻 |
吉和漁港に帰った松本さんの船 |
フェアの日揚がった2.6kgの桜鯛 |
|
結婚してから45年間もいっしょに鯛漁をしている松本幸人さん(吉和漁業協同組合理事)・初枝さんご夫妻。
この日は朝5時に船を出し、6時すぎに帰港。1回の刺し網漁で、鯛2.6kg1本、1.6kg2本と小型のものあわせて8匹、良型のメバル(春告魚)20匹くらい、ゲンチョウ(舌平目)、フグなどが揚がりました。
鯛は産卵期が近づいた今ごろから、もっともおいしく、大きくなります。桜の季節に合わせるように、色もピンクのものが揚がってくることから桜鯛と呼ばれ、まさに旬の魚です。
おろし方にも鮮度を保つ技が
鯛の3枚おろし。鮮度を活かすため、頭を落とさずにおろす
|
鯛は松本さんの漁の主要ターゲット。今日のフェアではゲストの山本麗子さんの料理に使われ、まさに主役です。
とくに鮮度は大事。例えば頭を落とさないで3枚におろすと、魚に触れる回数が2回は少なくなり、手の熱で鮮度を落とさずにすみます。このような素材を活かしおいしく食べる漁師流の技が、いっぱい駆使されています。
魅力いっぱい、もうひとつの主役、雑魚(こじゃこ)
鯛といっしょに網にかかった「こじゃこ」のメバル
|
しかしもう一つの主役は、この土地で「こじゃこ」と呼ばれる雑魚。刺し網や底引きに必ずかかってくるメバル、アナゴ、カサゴ、タナゴ、ゲンチョウなどです。
フェア前日のリハーサルの日はカサゴとタナゴがかかったので、松本さんはこれを料理に使い、本番の舞台ではメバルを使いました。多種さいさいな「こじゃこ」を無駄なく、上手に、おいしく食べるのが、尾道の漁師料理の真髄なのです。
昔は船に食材を何日分も積み込み、いったん出漁すると1週間も家に上がらずに漁を続けたそうです。食事は当然、船上食。時間は、潮の加減や漁の具合によって、遅くなったり早くなったり。豊漁だとゆっくり食べているひまなどありません。
そのため漁師料理は「手軽に、素早く、おいしく」がモットーです。そんなスピード料理の楽しみを、多彩な「こじゃこ」と野菜がふやしてくれていたのです。
簡単に、素早く、おいしく朝食「そうめん汁」
水から魚(メバル)を炊く |
たまねぎを入れる
|
味噌で味つけしたところへそうめんを入れる |
そうめん汁の味を楽しむ山本麗子さん |
ステージで紹介してくれたのは、朝食の「そうめん汁」。主食ですが、ご飯のおかずのようにして食べます。「こじゃこ」、続いてたまねぎを入れて炊き、味噌で味つけ。最後にそうめんを流し込み、15分ほどでつくります。
たまねぎは魚の臭いを消し、美味しい甘味をつけてくれるので、「こじゃこ」とピッタリ。船に吊るして干しておけば貯蔵がきくので、じつに便利な野菜だと松本さんはいいます。
そうめん汁を試食したゲストの山本麗子さんは「お味噌だけの味とは思えないほどです。そうめんによくあいます」。
2人分
魚(雑魚) 2匹
そうめん 一把
たまねぎ 1個
小ねぎ 3本
味噌 適量 |

魚の鱗と内臓をとる。
鍋に水と1の魚を入れて煮る。
魚に火が通ったら、くし切りにしたたまねぎを入れる。
もう一煮立ちしたら味噌で味をつける。
そうめんを入れて1分間煮て、仕上げに刻んだ小ねぎをのせる。
|
魚と野菜、豆腐の組み合わせを楽しむ 「煮しめ」
|
メバルと野菜(たまねぎ、じゃがいも、にんじん) |
魚と野菜を炊いて醤油で味つけ |
昼食はご飯と「煮しめ」。といっても、素材ごとにじっくり時間をかけて煮るふつうの煮しめとは逆に、「こじゃこ」と野菜をいっしょに炊いて、20分くらいでつくります。野菜は、便利野菜たまねぎと、じゃがいも、にんじん、里芋、白菜、キャベツなど季節の野菜を何でも。
そこに、大漁でとくに忙しいときには早く煮える白菜やキャベツ、少しゆとりのあるときは芋類を煮込みます。さらにゆっくりできる日には、豆腐を入れてグツグツと煮て味をしませ、魚よりもおいしくなった豆腐を楽しみます。
煮しめを味わった宮川泰夫アナは、「メバルの身がはじけそう。甘味といい香りといい、本当においしい。強い味つけでないから、素材のうまみがひきたつんですね」。また、山本さんは煮しめについて、「私はお魚の頭を使うんですが、魚とじゃがいもの組み合わせって、じつによくあいますよ」と感心されました。
魚(雑魚) 2匹
野菜
(たまねぎ、じゃがいも、さといも、にんじん、白菜、キャベツなどなんでも) 適量
醤油 適量 |

魚の鱗と内臓をとる。
じゃがいも、にんじんなどの野菜は皮をむき、大きめに切る。
魚と野菜、水を鍋に入れて、火が通るまで煮る。
火が通ったら、醤油で味をつける。
|
子どもたちに街の住民に、「こじゃこ」の楽しみを伝える
街にたくさんの「こじゃこ」を届ける「晩寄」 |
松本さんのお奨めは煮しめの汁の「ぶっかけご飯」。「毎日食べてもおいしい。孫が来て何杯でもお変わりします」。宮川アナは「ものすごいぜいたく。ずるいね。毎日これなんて。でも、素材だけの素朴な味だから、毎日でも飽きないんですね」。
こんなふうにして、「こじゃこ」を活かす漁師料理の楽しみと味が親から子、孫へと伝わり、また漁師から街の住民へと伝わっていきます。尾道市の商店街などには、漁師の家族が獲れた魚を小さな荷車台に並べて売る「晩寄(ばんより)」がたくさん立ちます。台の上にはスーパーなどでよく見られる魚はなく、地場の季節の「こじゃこ」がいっぱい。「きのうはアナゴ食べたから、今日はメバルどう? 煮かたは・・・」などとアドバイスもしながら、買った魚をその場でさばいてくれます。
宮川アナは「網にかかった魚はぜんぶ、お腹におさめるのですね。切り身でなく丸ごとの魚をさばくところから見られるし、季節季節の魚を食べられます」と、尾道の「こじゃこ文化」の魅力をしめくくりました。
ここだけの味、寒さを活かしてつくる干物
冬の味覚、デベラの干物 |
魚種豊かな尾道の海。鮮魚がおいしいのは当然ですが、干物など漁師による「こじゃこ」の加工品が、魚の楽しみをふやしてくれます。例えば、デベラ(タマガンゾウビラメ)、ゲンチョウ(舌平目)やアナゴの干物。冬には魚がよく肥えて、匂いもなくなります。これを寒い北風に当てて干すと、乾くだけでなく味がさらによくなるのです。
干物といえば塩を効かせたものが多いなか、こちらは海水で洗うだけの「無塩・天日・寒風干し」。干物をあぶるだけでもおいしく、デベラの干物の大根なます、デベラ・ゲンチョウ・アナゴの干物の天ぷら、正月の雑煮のだしとりなど、干物で魚料理のレパートリーがグーンと広がります。地元の海の恵みをたいせつに楽しみ尽くす知恵と技が、一年を通じて発揮されているのです。
|