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ときずし

ときずし

ボラ

ここの集落に伝わる「ときずし」

「ときずし」の「くまもとふるさと食の名人」の田尻緑さんと三女のかほるさん

 不知火海から沢沿いに1kmほど入った不知火町大見集落。ここで、田植えが終わったあとや、秋の稲の刈上げなどの節目、祭りや親族の集まりなどのときにつくり、伝えてきたのが「ときずし」です。娘が嫁入った先に伝わることもあるといいますが、村の内々で楽しんできた料理です。

 熊本県では食文化の伝承・普及に取り組む人を「くまもとふるさと食の名人」として認定する制度があり、食生活改善推進員(ヘルスメイト)の田尻緑さんは、ときずしの「ふるさと食の名人」として、地域の若い世代へ伝えています。

「とき」…いちばんおいしい旬の魚を使う

秋から冬にかけておいしくなるボラの刺身

 ステージに緑さんと家を継いでいる三女のかほるさんが、ときずしと活きのいいボラをもって出演されました。ボラには、ゲストの本多京子さんも、宮川泰夫アナも、「卵をカラスミにするのは知っていたけど…」と意外な印象ですが、緑さんはズバリ「いま刺身がとってもおいしいんです」と、そのときどきでいちばんおいしい旬の魚を使うのが、「ときずし」であることを説明してくれました。
  本多さんは即、「旬の魚はおいしいうえに、血液さらさら効果や脳の活動を刺激する効果のあるEPAやDHAなどの成分がいちばん多くなるのです」と応じました。

 ときずしにするのは、白身魚のチヌ(クロダイ)、タイ、スズキ、ボラ、キス、コノシロなどで、ボラは秋遅くから冬においしくなり、生きているうちに料理すれば、養殖のタイと比べものにならないほどおいしいといいます。

親戚みんなが集まるお祝いに

ご飯にあらの煮汁と酢がしみて、旨味が2倍3倍に

 ステージの大きな画面に、緑さんと里帰りした次女のつぼみさんが、漁港近くの店に行って生きているボラを仕入れ、料理する場面が映し出されました。
 かほるさんが農作業で怪我をして入院しましたが、その回復・退院祝いに、緑さんの孫・ひ孫も含めて親戚の人たちがたくさん集まったのです。

 ボラの身は小さく切って塩をして酢に漬け、あら(頭と骨、卵)は醤油、みりんで炊いて煮汁をつくります。ご飯に身を〆た酢と煮汁を混ぜ、冷えたところに酢〆した身を入れて混ぜます。新鮮魚がおいしいだけでなく、酢とあらの煮汁がしみたご飯がおいしく、お米を2倍3倍の旨味で楽しめる料理なのです。

 会場の観客からは、モニターに、炊きたてご飯へ煮汁をかける映像が映り、緑さんが「これがおいしいのですよ」というあたりから、ワァーと喚声が上がり始めました。小さな孫やひ孫たちが、じつにうまそうに「ときずし」を食べるほほ笑ましい光景を見て、さらにホォーッとが声が広がりました。

味つけの「レシピは舌にあります」

 つぼみさんは、「小さい頃から母がいくら忙しいときでもつくってくれるのを見て、味は舌で覚えているから、味見しながらつくります」といえば、緑さんは「よく、レシピはどうするねんと聞かれるけど、舌にあるよ、って言うんです」。

 本多さんは試食して、「このお料理は、シンプルに見えるけどむずかしいんです。身とあらを使って魚の栄養とおいしさをすべて活かし、ご飯に煮汁の水分と酢を2段階に加えるのですから。味はお師匠に教えてもらって、経験して身についていくんですね。こくがあってさっぱりした、とてもやさしいおいしさ、お母さんの味がします」と、称賛されました。

敬老会の料理づくり、小学校の料理教室で伝わる

坂本信代さん(不知火町婦人会大見支部長)。敬老の日には田尻緑さんたちの手ほどきで120人分の「ときずし」をつくって配る

 退院を祝ってもらったかほるさんは、「つくってみたいが、母の味がいちばんだと思うし、これが母の楽しみだから。味は分かっていますから・・・」と、継承者としての自信はありそうです。

 舌で覚える「ときずし」の味と技が、地域の若い世代に伝わっていきます。不知火町婦人会大見支部長の坂本信代さんにステージにお出でいただきました。婦人会では、敬老の日に、緑さんたちベテランの指導を受けて120人分のときずしをつくり、お年寄りにふるまって喜ばれています。「家で姑のつくってくれる味がなかなか出せませんが、この機会にいろいろ教わることができます」と坂本さん。

 また、緑さんたちは、地元の不知火小学校や松合小学校で、子どもたちが育てたお米の料理学習などで、ときずしを教えています。子どもたちは、「私も、私も」味見し、また、煮汁をとった骨に残った身もきれいに食べるといいます。

 宮川アナの「小さい頃に食べた体験が大事ですね」の言葉に、本多さんは「このおいしさで、お魚を全部活かしきることの大切さが伝わっていきます」と締めくくられました。

ときずし


 40人分
  • 米 2升
  • 白身魚(身・あら、今回はボラ) 2kg
  • 塩 50g
  • 酢 2合
  • みりん 2合
  • 醤油 4合
  • いりごま 200g

  1. 魚を3枚におろして、身を小さく切り、塩をして2時間ほどおく。
  2. 魚のあらは、醤油、みりんで煮つけにし、煮汁はとっておく。
  3. 米は30分前に洗ってザルに上げ、硬めに炊き上げる。
  4. 塩をした魚を1時間くらい酢に漬けて〆める。
  5. 炊きたてのご飯に、魚のあら煮汁と魚を〆めた酢を混ぜ、冷ましておく。
  6. ご飯が完全に冷めてから、酢で〆めた魚の切り身を混ぜ、炒りごまを散らしていただく。