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麦味噌と小魚をすり合わせて さつま汁(佐妻汁)

さつま汁

麦味噌と焼き魚を混ぜ、これからだしでのばす

裸麦と伊予灘の小魚をドッキング

 愛媛県は、温暖で麦の実る梅雨時に雨が少ないという気候を活かして、裸麦(大麦)の生産量が日本一。とりわけ松前町は、江戸時代の享保17年に西日本一帯が飢饉に見舞われたとき、翌年用のタネまで食べ尽くされるなか、身を犠牲にして裸麦のタネを村びとに残した義農作兵衛の心を受け継ぎ、裸麦の生産と利用がさかんに行なわれてきました。義農への感謝と裸麦を食べることへの思いが強く、農家女性グループによるお菓子づくりや、地元食品企業(ギノーみそ)による意欲的な麦味噌食品の開発・普及が行なわれています。

 いっぽう、遠浅でエサの豊富な伊予灘は魚貝が豊富で、小魚もたくさん揚がります。そのため、明治時代に、小魚を活かした「珍味」の生産が始まり、今日に受け継がれて、全国の小魚珍味加工生産の80%を占める産地となっています。

畑の幸と、海の幸のコラボレーション

 ステージには安岡幹博さん、千恵子さんご夫妻が出演されました。千恵子さんの手には裸麦と麦味噌。味噌は、裸麦を使った麦味噌で、関東地方の味噌や信州味噌のような米を使った味噌より白っぽく甘味のあるのが特徴です。幹博さんの手にはこの朝、松前の海でとれた、トラハゼ・エソ・タチウオ・ホウボウが活きのいい姿を見せています。
そう、松前の畑の幸、麦味噌と、松前の海の幸、小魚をあわせて、じつにまろやかな旨味のある料理にして、ご飯を2倍3倍も楽しむのが、「さつま汁」なのです。司会の宮川泰夫アナはこれを、「海と陸のコラボレーションです」と紹介されました。

松前町お魚ママさん連絡協議会 会長の安岡千恵子さんと、ご主人の幹博さん

裸麦の穂、粒と麦味噌

幹博さんが持ってきてくれた、この日揚がった魚。
手前:ホウボウ、中左:エソ、右:トラハゼ、奥:タチウオ


さつま=佐妻=妻を助ける料理

 さつまは漢字では「佐妻」とも書き、夫が妻を助ける料理という意味もあります。宮川アナの「安岡さんご夫婦はそろって80歳。ダイヤモンド婚式の年です。妻を助けていますか?」の問いかけに、幹博さんが「ハイッ」と答え、会場のお客さんに拍手と笑いが起こり、ほのぼのとした雰囲気が広がりました。

 ステージの大きなモニターに、安岡さん宅でのさつまづくりの様子が映し出されました。この日、松山市に住む娘の谷広子さんがご主人の浩さんとやってきて、両親からはじめてのさつま汁講習を受けることになり、楽しいひとときです。

すり鉢はご主人、仲良く味見して

 町にやってきた魚屋さんに、「今日、さつまにいいお魚はある?」と千恵子さんが聞くと、「ハイ、大きなトラハゼ。これがいいね」と魚屋さん。魚を焼いて、骨をていねいに取り、骨はだし取りに使います。いっぽう、麦味噌をすり鉢に薄くぬり、火にかざしてよい香りが出るまで焼きます。

 魚の身をすり鉢で摺り、焼き麦味噌をあわせてさらに摺るのが、幹博さんの役割です。だしを加え、味見をしながら摺りのばしていくと、白っぽい色のまろやな甘味のある汁ができていきます。だんだんにうれしそうな表情になった幹博さんが「こんなものかな?」と言いながら千恵子さんに味見皿を渡す様子に、宮川アナが「仲のよい感じで」と言えば、会場には「ワーワー。ワハッー」と、ちょっとうらやましげな共感の声が広がりました。

摺るのは幹博さんの仕事、仲良く味見して

摺るほどにまろやかな味わいになる

トラハゼのさつま汁

 4人分
  • 魚(トラハゼ) 大10匹
    ※エソの場合 大3匹

  • 麦味噌(甘口) 200g
  • 水 2〜3カップ
  • だし昆布 適量

    薬味
  • ねぎ 小口切り
  • 板こんにゃく 細切り
  • みかんの皮 みじん切り などを好みで

  1. トラハゼは、洗ってはらわたを取り除き、頭の後に切り目を入れて焼く。
    ※エソの場合は、洗ってうろこを取り、頭と骨、はらわたを取って3枚におろす。大きい骨を焼いておいて、(3)のだしに使う。

  2. すり鉢に身をとり、小骨をきれいにのけて、よく摺る。
  3. 水2〜3カップに頭と骨、だし昆布適量を入れて、よく沸かし、冷ましておく。
  4. 麦味噌をすり鉢にぬり、火にかざして香りよく焼く。
  5. (2)の中に焼いた味噌を入れ、さらによく摺りあわす。
  6. 冷ましておいただし汁を、(5)に少しずつ加えて、味を見ながら摺りのばしていく。
  7. 熱いご飯を茶わんに控えめに盛り、お好みの薬味を入れて、さつま汁をかけて食べる。

料理の技と、夫婦協力の心が次代に伝わる

 娘の広子さんは、「年を取ったら二人三脚で助けあって、どちらかが倒れることのないようにやっていこうと言うのが母の考えです」といい、今日は、さつま汁の調理法の伝授とともに、夫婦で助け合う「佐妻」ぶりを再確認したようです。千恵子さんは「手伝ってようっていうと、いいよと、やってくれます」。幹博さんは「お陰で、元気で80歳になりました」。

 浩さんは、子どものころ、お母さんのさつまづくりを手伝いながら、味も覚え、今でも大好物、といいます。広子さんが、「今度はうちでつくって、もってきて食べてもらいます」と言えば、千恵子さんは「若い人がつくるとおいしいから」と、うれしそうです。こんなふうにして、大きくなった娘ですが、次の代へとふるさとの味、わが家の味が伝わっていきます。

いろいろな魚で楽しむ「ぜいたく」

 冷たいさつま汁を、熱いご飯にかけ、薬味は好みでのせます。千恵子さんのおすすめは、刻んだ白ねぎ、こんにゃく、みかんの皮。

 試食したゲストの枝元なほみさんは、「みかんの香りがして、それからお魚とお味噌の溶け合った味がものすごくおいしい」。幹博さんからは「お上品に食べるのでなく、ザブザブとかきこむように食べて下さい」とアドバイス。

 松前町のさつまは、タイやアマダイといった高級魚も使うが、トラハゼやエソ、ホウボウ、タチウオなどなど、そのときどき安く手に入る白身魚でつくるのが特徴。この日、安岡さんはトラハゼとエソでつくってきてくれました。枝元さんは「トラハゼはやわらかい味、エソはしっかりしたコクがあります」と、魚の多彩な味を楽しむぜいたくを感じておられました。

さつまをご飯にかけて、枝元なほみさんにふるまう

エソのさつま(左)、トラハゼのさつま。魚それぞれの味を楽しむ


冷蔵保存し、牛乳さつまに、ヌタ和えに

 そんなぜいたくを、安岡さんは、さつまの保存によってさらにふくらませています。魚と味噌を摺り混ぜた状態のものを、冷蔵庫で保存しておくのです。1ヵ月ほどはもつと言います。「ご飯が炊けたけど、おかずがないというとき、さつまに牛乳を加えて混ぜます。だし汁をとって冷ます手間もいらないし、牛乳さつまは本当においしく、カルシウムもとれます」。

 また、冷蔵さつまに酢と砂糖を加えてヌタにして、焼きねぎなどを和えるのも最高です。宮川アナは「いつでも使える、そのことが妻を助けることになります」。

お魚ママさんの活動―子どもたちの魚体験に協力

 安岡千恵子さんは、瀬戸内海の新鮮な魚をもっと食卓にと料理講習を中心に活動しているお魚ママさん連絡協議会(愛媛県魚食普及推進協議会の事業)の松前町の会長さんです。会では、松前で獲れる小魚などの料理をメインに講習会を行なっています。
  昨年9月のメニューは、「いわしのカリカリチーズ」「魚だんごの岩石揚げ」「桜えびとポテトのきんぴら」「きゅうりとひじきのサラダ」。子どもたちも喜ぶ工夫がされた新しい料理が多いのが特徴です。
 また、子どもたちを対象に町で開催する、魚を釣って手で開いて、料理(小アジの唐揚げ)して食べるお魚体験に協力して、喜ばれています。

 宮川アナから、「こんどは、子どもたちにさつま汁づくりを!」「ママを助ける料理なので『ママ助け汁』、ご飯がおいしくなるので『まんまたくさん汁』です」と、今後の活動にエールが送られました。

お魚ママさん連絡協議会で子どもたちのお魚体験に協力。
アジを釣ってさばいて料理まで(写真提供 松前町)