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研究課題名

仮想コンビニを使った食育

代表研究者/発表者 赤松純子 和歌山大学

 研究のメンバーを紹介します。まず、私は大学の教育学部で消費者教育・家庭科教育に携わっておりまして、家庭科の教師も養成しております。一番気になっているのは、いろんないいことを提供してもその気にならないと誰も何もやってくれない、やって貰うにはどうしたらいいかということに主眼を置いております。共同研究者のC・キッズ・ネットワークというグループは、消費生活アドバイザー等の資格を持っている人たち約50人余りが、消費者として生きていくためにどういうことをしたらいいか分かるように、例えば公民館とか学校を使って、いろんなところに出かけて行って、いろんな教材を試しているというグループです。先ほどの第1題の研究は「作りやすい」ということに主眼があったかと思いますが、私たちは「やる気を起こさせる」、バランスよく食べるということを「自分でアレンジしたくなるようにすること」に主眼を置いています。1回45分間のプログラムで実施しますが、45分間の最初と最後ではやる気が違っているということを目標にしています。

 このプログラムはお腹がすいている時をねらって行います。コンビニというのはとても身近で誰も拒否しません。コンビニの話しなら聞いてみようか、ということなので仮想コンビニを考えてみたわけです。残さず食べるという条件で自分が選んだメニューの栄養バランスをグラフに表して貰います。選んだものがどういうものなのか、自分で評価できる、自分で改善できる、料理の基本となる原則をマスターして貰うということを考えて設定しています。工夫した点の一つは、大勢の平均値ではなく、自分自身の1食分を考えられるような資料を提供することです。自分自身が食べるべき量を10点満点で評価できるように、自分で選んだメニューをレーダーチャートに表すという作業をします。

 ここでは、コンビニ食だけでは取りにくい栄養素を補うアイデアを1つ出しています。そのアイデアはお汁の中に何でもいれてしまえばOKということがキーワードになります。プログラムを実施する時には、仮想コンビニを演出するためのグッズを準備します。例えばコンビニの陳列棚に、マグネットで貼りつけられるおにぎりをはじめとして、仮想コンビニがオープンできるような食材見本を準備します。

 配布するものが幾つかあります。まず独自に作成した「栄養成分表」です。「エネルギー所要量」「たんぱく質所要量」「脂質所要量」「炭水化物所要量」「野菜・果物所要量」の5項目を設けて、その性別年代別に望ましい所要量を10点満点として数値化したものです。次に自分が選んだメニューに基づいて「栄養成分表」と照らし合わせた点数を転記するための「ワークシート」。次にそれを視覚的に理解するための「レーダーチャート」です。

 これで準備ができました。そこで早速自分が選んだメニューを「栄養成分表」に基づいて「ワークシート」と「レーダーチャート」に記入します。今日は具体的に見てもらうために、あらかじめ選んだメニュー例をレジュメ(レジュメpdf)に書いておきました。レジュメの例では、この人は「いなり寿司」「ほうれん草ゴマあえ」「漬け物セット」「さばの塩焼き」を選びました。このメニューの点数をワークシートに転記します。この例では「エネルギー所要量」合計が14点ということになります。その14点を今度は「レーダーチャート」のグラフに転記します。続いて「たんぱく質」以下各栄養所要量を同じように記入していきます。各項目を線でつなぐと五角形ができます。この場合では「野菜・果物」「炭水化物」等が他に比べて少ないので、デコボコの五角形になります。実際にやってみると、形は違いますが誰でもデコボコになります。またこのプログラムを実施する会場では、他の人と比較するために3人程度のグラフを並べます。やはりどこかデコボコが出てくるわけです。そこで、どの栄養素が多すぎるのか足りないか自分で考えて貰います。

 次に活躍するのが「お助けメニュー」です。五角形のデコボコを少なくするためには、どのメニューを選んだらよいか考える参考資料です。レジュメの例でいうと、1品だけメニューを換えただけでこの五角形はきれいな形になります。即ちバランスのとれたメニューになるということです。ここでは、「さばの塩焼き」を「豆腐となめこの味噌汁」に換えただけで、グラフの形は劇的に変わったことが分かると思います。このように、まず自分が最初に選んだメニューをどのように換えたらよいか、自分で考えることができるようにすることがこのプログラムの眼目です。これは高校生あるいは大人のバージョンです。小学生のバージョンでは考え直すのは難しいので、1回だけレーダーチャートを作ります。ただし、「五目のおかずを煮て食べましょう」とか「野菜はナマより煮て食べた方がいいよ」とか、一つひとつメッセージカードにして一緒に大きな声で唱和します。このように、年齢によって少しずつ対応は変えていきます。そのほか、「中食(なかしょく)」をパックで買ってきて残った時に、少し手をかけて変身させることを提案します。これは成人教室等では歓迎されます。まず一歩は「そうしてみよう」という気にさせることを目的にして開発したものです。

 私たちはプログラムの最後に必ず「言葉クイズ」を実施します。これは、これだけのものを食べたら安心だよということを分かりやすく伝えるための手段です。子どもから高齢者まで全世代に受けのよいクイズです。「たまごわやさしい」のクイズをします。一字一字が食品の頭文字になっています。真ん中の「わ」はワカメの「わ」です。このように答えを言ったあと、必ずしもワカメでなくても海草のたぐいなら何でもいいんだよということを伝えて一人ひとりが考えるための幅を持たせます。こういう風に、基本が分かって、なおかつ自分で工夫して変えていく力がつけばいいなと思います。

 最後にこのプログラムに参加した人たちがどのような反応を示したのだろうかということをご紹介します。これまでこの講座を40回くらいやりましたが、毎回このようなアンケートをとりました。コンビニに何回くらい行くのだろうか、そしてこの講座に参加した人たちはどのようなことを考えるようになったのかを知りたいと思って取ったアンケートです。今日ご紹介するデータは和歌山大学の学生120人から取ったものです。これまで2食しか食べていない学生は3食食べたいというように変化し、3食食べている学生はもっと中身を大切にしたいというようなアンケート結果でした。そして9割の学生が楽しんでやってくれた、自分で自分の食生活を変えようと思うようになった、その気になったというような成果につながったことを紹介して終わりたいと思います。


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