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研究課題名

ライフステージ別食育の実践方法

代表研究者/発表者 藤澤由美子 和洋女子大学

 生活習慣病予防対策は若年期から実施されることが重要であり、危険因子の健康診断と食生活教育による健康管理が同時に遂行されることが望ましいと考えられています。私たちは千葉県の八日市場市の幼児・小学生・中学生の生活習慣病予防のための検診事業に協力して食生活指導を行っていますが、検診の結果と食生活調査結果から、生活習慣病危険因子の発現状況と食生活の関連を検討し、問題点に即した食育をすることを目的としました。食生活指導は、和洋女子大学の管理栄養士専攻の学生の教育もかねてさせていただきました。本研究では特に介入協力が得られやすく、発達段階からも理解度・実践度等の評価判定が明確に把握できると思われる小学生を対象として実施しました。

 これは検診の様子(pdf)を示したものです。八日市場市の多目的ホールで検診は実施されます。市内には10校の小学校があり、予め教育委員会が検診時間の配分を行い、市のチャーターバスで10校の児童を順番に送迎しながら実施しています。検診と食生活に関するアンケートについては、教育委員会から保護者にインフォームドコンセントを得て実施されますが、子どもたちに対しても検診の現場で何をするかという説明をしているところです。

 その後受付をし、血圧の測定(pdf)、採血(pdf)をします。その間に調査票については検診時に学校ごとに回収して、食生活指導を担当する学生が調査票の記入漏れがないか等をチェックいたします。記入漏れがあれば、採血後休憩をしている子どもたちのところに行って、その内容を確認するという作業(pdf)を行いました。

 このような検診の結果から分かったことは、異常値保有者が多いということです。それからこの地区では肥満の子どもたちの数が多いのですが、その肥満者は他の異常を合併することも多いということが分かりました。小学生につきましては平成6年(1994年)からこの検診事業が行われています。これは延べの異常値保有者の割合なのですが、縦軸に%を示しています(pdf)。肥満の子ども、それからコレステロールが高い子ども、良いコレステロールが低い子ども、血圧の高い子ども、延べで言いますと44.3%の子どもに異常があったということです。ただ、肥満でコレステロールが高いということもありますので、全般でいいますと34%となりました。年代を追って推移を見てみますと、昨年の結果では、全体の30%に異常が認められました。外見上はとても元気な子どもたちなのですが、その30%に何らかの異常があることが分かりました。そして特に肥満においては、他の検査値に、異常が有意に発現するということが分かりました。これは昨年度の小学校4年生の検診の結果、肥満の子どもと肥満でない子どもで、コレステロールが高いかどうか、良いコレステロールが低いかどうか、動脈硬化指数が高いかどうか、ということを比較しますと、統計的に有意に肥満の子どもでは異常が表れる(pdf)ということが分かりました。この小学校4年生が幼児のとき(4,5歳のとき、平成10年)の調査結果を、同じように肥満と肥満でない場合というように分けますと、幼児の場合では肥満でそれぞれの異常が発症するという関係は見られないようですが、小学校になりますと成人と同じように、いろいろな異常が合併してくる可能性が高い、したがいまして、成人になってそういった障害が起こらないためにも教育が必要である、ということになります。

 あわせて行いました食生活状況調査の結果、野菜の摂り方が非常に少ない、それから肥満者の摂取量は正常者とあまり変わりがないということが分かりました。それから学童期の子どもたちは元気に動いていることが多くて、肥満児童についてもスポーツクラブに通っていたり、休み時間も校庭で元気に動いていたり、身体の動かし方についても平均的には違いが見られませんでした。

 これは肥満でない子どもと肥満の子どもとの食品群別の摂取状況をグラフ(pdf)にしたものです。100%を目標値としますと、肥満でない子ども(ブルーで表示)と肥満の子どもたち(黄色で表示)とでは平均値でみますとほとんど差がありません。ただし目標に対して野菜の摂り方が非常に少ない、ということが明らかです。このような検診及び食生活状況調査の結果をもとに、栄養アセスメントをして指導に使うということをしています。食生活指導につきましては、個別の指導、集団での指導、教材の提供ということを今回行いました。

 もともと八日市場市では幼児の検診事業が早くから行われています。その個人指導あるいは集団指導をきちんとしようということの根拠になったデータ(pdf)をここに示しました。小学校は平成6年から定期的に検診が行われるようになりましたが、その子どもたちが5歳のときの検診結果がここにあります。こちらは生活習慣病危険因子の項目で、ここに5歳のときの結果があります。数字は人数で、括弧の中に入っているのが%です。すなわちコレステロールが高い子どもは、539人中21人いました。3.9%にあたります。この子どもたちの3年後追跡調査で8歳のときの結果を見てみますと、いろいろ検診にあわせて食生活指導をしたにもかかわらず、コレステロールの高い子どもが増えてしまっている、そのほか肥満が増えているとか、指導の効果がないのではないかという結果が出ました。ところが幼児の場合でいいますと、対象となる子どもの数が多い、それから食生活指導をするにあたっても、こちらのスタッフ数を考えると、個人指導をするといってもなかなか全員にというわけにはいかないので、異常があった子どもたちに重点をおいて指導を行いました。5歳のときに異常があった子どもたちに指導を行い、5歳のときに異常がなかった子どもたちには指導をしなかった、ということになります。そうすると回復率(即ち8歳のときに異常がなくなった割合)が高くなって、実際は5歳の時に異常がなかったので指導をしなかった子どもたちに新たに異常が出た、したがって出来れば全員に個人指導を行えば8歳になった時に異常が発症することが少ないのではないか。しかしながら、個人指導を行うとなると対象数が多くなって、いろいろと制限がありますので集団指導を行うということにしました。

 まず個人指導票(pdf)(個人にかえす食生活アドバイス票)というものを作りました。平成6年当時の小学4年生では保護者宛の調査結果票を作成していたのですが、子どもが自分自身で健康を管理する能力を身につける食育ということを考えて、4年生でも理解できるような票を作りました。それから何の為に検診をしているのかという検診と調査の目的をはっきりさせるために、すべての結果をまとめて分かりやすく絵やグラフで示す表を作りました。これ(pdf)は集団指導にうかがった時に個人票をお返しして、それぞれ解説をしたときの様子です。子どもたちはそれぞれ個人票を見せあっています。

 次に教材の開発です。子どもたちはお話しだけでは理解しにくいということがあります。例えばアンパンマンとかドラえもんとか、よく知っているキャラクターがあると興味を持ってお話しを聞いてくれますが、具体的に教材を作る段階になると著作権の問題があります。そこで八日市場市にちなんで色々キャラクターを考えました。そして出来たのが「ハチマン」というキャラクター(pdf)です。またその仲間として「ぶうしとり」(豚と牛と鶏をあわせて肉類を表現したもの)を作ったり、学生も小学生も楽しんで出来るような教材の開発を行いました。理想をいえば頻繁に訪問して指導をすることが望ましいのですが、八日市場市と和洋女子大学はかなり距離的には離れていますので、教材を作って訪問回数の少なさを補うという意味もあります。

 これ(pdf)は「YES/NOクイズ」という「ハチマンのバランスチェックシート」です。ハチマンの色々なキャラクターを配置しています。野菜をよく食べると、最後には「すこやか八日市場」にたどり着けるのに、野菜を食べないと「妖怪市場」に行ってしまうというクイズです。

 その他にも調査の結果、おやつのとり方が極端に多い子がいましたので、おやつを食べ過ぎると太ってしまう、生活習慣病になってしまいますよ、理想のおやつはこういうものですよ、というような教材を作っています。生活習慣病検診は7月に実施しますので、その前にこういう検診をしますということをキャラクターを生かした教材で知らせるようにしています。

 同様に、子どもたちだけでなくてアンケートに協力いただいている保護者にも検診と調査の結果報告を行うために、家庭版の報告書(pdf)を作りました。検診結果やアンケートに基づいて、嫌いな食品をなくしたり、野菜嫌いの子どもたちに野菜を食べてもらうためのレシピも加えます。また保護者にも「ハチマン」というキャラクターを知ってもらうというねらいで家庭版を作りました。

 もう一つは集団指導です。教育委員会と養護教諭会に相談して集団教育の場を作ってもらいました。昨年度は吉田小学校で、生活習慣病予防とバランスのとれた食事をとるためにはどうしたらよいかということで、人形劇や食品マジックカードのゲームなどを組み合わせて実施しました。ねらい(pdf)は3つの食品群の分類と野菜の食べ方について、自分たちの調査結果を使って報告をしました。また学生には、先生の替わりになるような指導ではなく、誰でも食育に携わることができるということを証明するような指導をするように言いました。これ(pdf)は子どもたちが参加して献立のバランスを考えている場面です。最後におさらいクイズをして感想を書いてもらいます。感想では、「人形劇で分かりやすかった」、「キャラクターがあって楽しく学習できた」、というような感想があります。それらをまとめますと、「もっと身体のことが知りたい」、「3つの食品をどのくらい食べればいいのか知りたい」、「野菜のことをもっと知りたい」ということになります。集団指導ではスポット的に一つの時間を貰いましたが、このあと担任の先生方、養護の先生方がこの点についてさらにお話しを展開するというような協力態勢がとられています。

 八日市場市は健康都市宣言をしているので、せっかくですからこの取り組みを広報誌(pdf)に書かせていただきました。市民の皆さんにも「ハチマン」というキャラクターを知っていただこうということで掲載させていただいたというわけです。

 この研究の特色は同じ地域において、幼児、小学生、中学生に対してライフステージ別に検診を行って食生活指導を行うということを継続して実施しているところにあります。今後とも効果的な食育の方法を考えて子どもたちに提供していきたいと考えています。最後に、この研究を一緒に行った先生方、八日市場市の子どもたち、学校関係者、教育委員会の方々、それから和洋女子大学の学生の協力に感謝して発表を終わります。


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