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研究課題名

大学を拠点とし、地域性を重視した食育推進のコラボレーションシステムの構築

代表研究者/発表者 足立己幸(あだち みゆき) 女子栄養大学教授・大学院研究科長

【目的】

すでに地域内で活動している組織やグループ(以下グループなどと呼びます)を母体に、地域性を重視し、住民参加、グループ等のセルフエステームを重視した食育推進のコラボレーションシステム(仮称S食育ネット)の構築を試み、その形成過程での課題を明らかにし、ステージとして把握すること、その過程で地域内の大学の役割を検討することに本研究の目的があります。

【実践地域と研究の背景】

1つは埼玉県S保健所管内(これは2市3町プラス2市が加わって人口37万人ほどの地域―ここをS地域と呼びます)です。ここでは行政組織や民間グループなどがそれぞれおのおの食育に取り組むようになってきました。大変問題も多い中、情報交換等がスムーズに行えるネットワークが欲しいとの声が高まっておりました。一方、同じ地域内にある私どもの大学(J大学と致しました)では、栄養・食に関わる基礎科学から実践活動理論システム論構築までを包括する、栄養・食の総合大学であるので、その人的な資源、社会資源を地域に開放して社会貢献を含めたより実践性の高い教育システムを構築したいと検討を重ねて、かなり前から、S保健所関係者と話し合いを進め、その検討成果を一部の学会等で発表したりして参りました。

【方法】

方法は、大きく3本柱になっております。1つは、発表者らがすでに実施してきた大学を拠点とする地域の、地域の食生活と食環境の理論モデルの図を一部修正し食育コラボレーションマップ(これはCマップと呼びます)を作成することによる検討、2つ目が食育ネット形成のプロセスによる検討、3番目が地域内、その中の1つに当たりますけれども、地域内O小学校での食育実践事例での大学関係者との共同プロセスによる検討、時間の関係で2番目の所を中心に報告致します。

『食育ネットプロセスによる検討』

食育ネットを進めるプロセスとして、全体のプロセスをここに書きました。左の方からご覧頂きたいと思います。年月を経る中でちょうど中央部に書きましたように前大会という形で大きく2回それから1番下のところで食育ネットホームページ開設ということで、関係者全体が集まるような形のものが3回含まれております。で、準備会というものが、7回ほどありますけれど、すべての全体会は一部の有志の人たちの集まった準備会で企画、計画が立てられて準備がされて問題提起といった形で全体会が開かれます。

そこで話し合った内容をまた持ち帰るような形で、準備会が次の課題について分析をしたり新しい提案をしたり、ということで全体会と準備会のキャッチボールのような形で進んでいきます。

これは、1回目の全体会で、S地域の関係する方々に、保健所が文章を出す形でこの会の紹介の文章を出してもらいました。それに基づいて課題分析を有志の人たちと始めたところです。3か所で課題分析を行なっている場面が左側です。自分たちが、今何をしているのか、何に困っているのか、どちらの方向に向かって食育をやろうとしているのか、その関係がどうなっているのか、というようなことについて、それぞれがカードにしたためるような形でだいたい430枚ほどのカードが集まってきて、途方に暮れている様子が写真でうかがえると思います。

そうしたときに、私ども大学関係者が中心になって、そうした食を巡る問題をどういうフレームで整理していったらいいか、ということについて提案していきます。それは、ワークシートの一つとして課題分析のための食生態チェックの枠組みと呼んでおりますけれども、表側には食を構成する人間のこと、食物のことと、それから食環境のことのキーワードがならんでおります。

理想の食、そのグループとして、どんな食を育てたいと思っているのか、どんな地域にしたいと思っているのか、それに関係したカードを該当するランに貼り付けていくことになります。または2番目、今活動していること、そして困っていることを先ほど書き出した、自由に書き出したカードを整理していくたたき台として、このシートを使いながらやっていきます。で、そうしますと、例えば、理想として挙げてある内容と、実際に活動していることがあまりうまくマッチしていない、同じ方向を向いていないということだとか、それから困っていること、それからそれについて解決しようとしていることがつながっていないだとか、そういうことについて気がつきながら、また次のカードを書き足していくという形で作業が進められていきます。

これは、今のフレームを使った形でいろいろ各グループから出てきた内容について、代表的なものを書き出したものです。例えば困っている所の上から2行目のところの欄をご覧頂きたいと思います。「コンビニを多く利用する」ということについて、それをめぐるいろいろな問題が出てきている、ところが実際活動しているところでは、そうしたコンビニで市販されているような、販売されているような食物の選び方は実際には教材としては扱わないで、素材を買ってきて、そしてそれを手に入れて調理するような内容について実際の食育実践の中で進めているというように、本当に困っていることと問題として出ていることと、実際にやっていることとの関係性をこのなかでチェックすることができるということです。

で、中程下のところ、食自体に関心の無い人が大変に少なくないことだとか、子どもをしつけない親がいる、言葉の表現の仕方には若干無理があるかもしれませんけれども、子どもに対して、食を巡って何か伝えていきたいと、そうした向き合い方をしていない親がいるだとか、その割には周囲の人への教育の場が少ないことだとか、ということがあがってきました。

はじめに申し上げましたように、これはすでにS地域の中で、食を巡って、または健康を巡って、または全然それとは関係のないことでもよろしいのですけれども、それぞれのグループワークをしている人たちが食について少しだけ、またはかなりしっかり関心を持っているか、あるいは困っている、そういう人たちが集まってくる。それは新しい食育ネットにぜひそれを最優先して入って欲しいという呼びかけではなくて、皆さんのグループ活動を第一にどんどん進めていくことが望まれるでしょう。でも、食のこともいろいろ大事なことがあると思うから、いかがですか?ご一緒しませんか?といったような感じのゆるやかな呼びかけです。そうやって集まってきて食育ネット活動でいろいろなことを共有する中で、元々のグループ活動が素敵に高まる。そういう実感を得ながら、その食についても十分な関わりを持っていけるような、そうした緩やかな関係をと、願っているものですから、ここではそれぞれのグループの活動の目的を重視しているということになります。

これは第2回の全体会の時に先ほど申し上げましたように、準備会でいろいろやってきたカード法によって整理してきた、課題分析してきた内容をこのような形でやってきたということを説明しながら、その内容について準備会のメンバーが説明をしているところです。準備会には参加できなかった人たちも、その成果を共有しながら、じゃあ自分たちのグループでもやってみようかという、そうした雰囲気になっているところです。

ご覧頂いておりますように、準備会でのそのプロセスを踏まえて食育ネットの必要性を確認していこうと思います。ここで4つのグループが紹介されていますが、左上のグループなんかは、カードをこう貼り付けて行く予定の模造紙がまだ広げられていない状態で、「こんなことやるかあ〜い?」、「こんなことやれるかあ〜い」といったような気持ちがちょっとあるようなそうしたところを写真でとらえている様子です。

これはワークシートの一つです。先ほど見て頂いた地域の食生活と食環境の図。それがベースになって、あなたのグループはどこに位置付いているの、で、自分のグループの位置を、シールを貼ってみましょう。といったような形、またはマークしてみましょうというような形で、この図がワークシートとして使われてきます。

そうしていただいたもの、書き出したものを貼り付けたものです。ご覧いただいてますように、右半分がフードシステム、左半分が食情報やコミュニケーションシステムという形で位置付いているわけです。下の方から学校関係、保育所だとか幼稚園だとかを含めてですけれども、それから、食や健康のボランティア、専門家の会は、それから保健所とか保健センターはたくさん参加者がいたわけなんですけれども、比較的フードシステム側では参加者が少ない様子がここで分かります。で、そうしますと、例えばゴミの問題とか廃棄や保存の問題、そうしたものについては、このネットの中には、マップの中にはどこにも位置付いていない、誰も参加していない、そうすると声をかけないと全体の食がうまくまわらないかなあ、っていうようなことを、お互いに気が付いたり、話し合ったりする、その一枚のマップです。

その時使ったもう一つのワークシートです。議論をした結果、カード法を使って課題分析をした結果、このワークシートを埋めていくことになります。私たち何々のグループは、何々のために、何々の活動をしてきました。またはしたいと考えています。この活動を質的にも高めていくために、何々が必要だけど、自分たちの力では十分にそれをすることが出来ないので、誰々に応援を求めたい。ということは、参加しているグループの人たちが、自分たちのグループは何をやってきて、何をねらって、何をやってきて、何を困っているか、ということについてひと回り報告をした後にこれを書きますので、どこのグループが何を得意としているか、または弱いか、ということについては分かるわけで、そこに呼びかけをすることになります。これを「プロポーズ作戦」と呼んでいます。自分たちのグループが、もっと質的に高い仕事をしていくために、活動していくために「お願い」といって手を挙げるような呼びかけのシートです。

先ほど、何で僕たちここに来たのか、場違いかなあ、とおっしゃってたグループが書いて下さったワークシートです。上からご覧下さい。農産物の生産・供給を担うグループは安全・新鮮な農作物の供給を目指し、消費者の方々のために、農産物の品質・規格等について理解してもらうための活動、小学校の農業体験、地産地消の活動をしてきました。この活動を更に高めていくために、多くの方々に農業生産現場を理解してもらうことが必要なので、Eのところです。ここにいるすべてのグループに、「パートナーになって欲しい」、「プロポーズしたい」っていうことを書いてくれました。爆笑になったんですね。これをパワーポイントで皆さんの前で紹介していくんです。爆笑になりましたけれども、お互いに自分たちには無い能力とか、魅力的な能力のところにプロポーズをするわけです。例えば大学の学生たちなんかには、若いエネルギーに期待をして、自分たちが記録してきたものを電子的に記録できるように協力して欲しいというような形で、いろいろなプロポーズがおこなわれていって、これが先ほどのCマップの丸がぽつぽつと合ったところのお互いのチェーンがつながって、線で結ばれていくというようなことに進展していきます。

これはその中の一つです。そうやって芽生えてきたプロポーズの関係の中で、これは生産サイドと生活サイドとの共同の事例です。左側、実は平成13年頃からいろいろな関係はありました。で、黒丸のところから発信して矢印の方向に向かって声かけをしたりして、関係が成り立っていく様子を示しているんですけれども、平成16年あたりからこのベクトルが少し動いてきています。すなわち、この食育ネットが形成され始めるようになってきてから、少しベクトルが変わってきて、下の方、生活者側から生産者側への声かけとか、その交換とか、共有とか、一緒にいろいろな事業をすることだとか、というのが、進んでくる様子がわかります。

3つ目の柱だったところです。O小学校での食育実践の内容を分析する中で、小学校のメンバーと、大学関係者の間のコラボレーションがどのように進んでいったかを知ろうとしたものです。この食育実践のねらいは、子どもたちが活き活きと自分らしい生活や学習ができるような健康で楽しい食事を整えたり、味わうといった主体的な力が育つこと、またそうできる仲間や環境を、主体的に育てるような力が育つこと、ということでご覧いただいたような内容でおこなわれました。

これは2本のプログラムの1つです。一つは「ぴったり弁当作りゲーム」ということで、食事の適量について把握して、学んで、それを実行できるような学び。それからもう一つはここには出てきませんけれども、「おやつパワーゲーム」についてです。これはレジュメの方の最後に学習のプログラムが書いてありますので、後でご覧いただければよろしいかと思います。

これもレジュメの中に書いてありますので、後でご覧いただきたいと思いますけれども、企画の段階の前のアセスメントの段階から、企画・実施・評価でそれを学校の中でいろいろな方々に理解していただいたり、共有するプロセス大学の関係者同士がそれをやるプロセス両方に関わるような形で協同作業が進んでいる様子が分かります。

というような経過の中で、もう少し仲間を増やしたいということになって、ホームページを開こうということになりました。これがその表紙です。

そのコンテンツについて検討するに当たって、いままで考えてみますと、情報交換をしたり共有するのは仲間内だったわけですね。ホームページを作るっていうことは、仲間から外に出るわけです。もしかすると、外国まで出ていくわけです。で、ここで非常に緊張感が高まりまして、自分たちのグループは、何をねらっているのか、何をやって、どういう特徴でその食育ネットの中でできるのか、というようなことについての議論が進んでまいりました。

いろいろな出入りがある中で、現在の段階で、参加グループ40グループと、行政を含めて40グループです。ご覧いただいているような状態の中でフードシステム側の参加が少しずつですけれども増えてきて、全体のネットワークがうまく回ってきている様子がおわかりいただけると思います。

というような中で、課題分析のプロセスをもう一度見てみます。準備会の経過の中でグループごとの活動内容のリストアップと分析、それから目指したい食の方向や育てたい力の明確化と食生態枠組みを使った分析、それからそれを実現するための活動の貢献性の分析、それからグループ活動のねらい、得意なこと、不得意なことの確認、それによって、お互いにプロポーズ作戦の中で自分たちの質を高めていく。下の方に行きまして、改めてグループとしての食育の課題は何か、どんな方法が有効かの分析、そのためにどんな共同が欲しいか、S食育ネットへの期待の公表というような手順を踏んでいきます。これを課題分析のステージで示してみました。

右端をご覧下さい。一番上の方から課題の分析、それから、それを共同していくパートナー探し、ホームページの作成、そしてネットワーク、ネット作りの公表の中での自分たちの再確認、活動の再確認。

これもまた、右端をご覧いただきたいと思います。情報の交換とか共有の広がりで示しました。上の方から自分のグループ内の共有、それがグループ間の共有、ネット内の仲間内の情報の共有です。ホームページを開設するという中で、仲間以外の人との情報の共有というように、ここで質的に異なった情報の共有のサイズが異なっていくことがお分かりいただけるかと思います。

【まとめ】

そういうステージを踏んでいくプロセスの中で、大学関係者の関わりも変わってまいりました。講演を頼まれたり、資料提供を頼まれたり、研究を頼まれたり、というふうに一部頼まれて、協力する形はかなりたくさんやってきました。または行政等の委員会、プロジェクト等の委員・座長とかそれも出来るだけご協力してきました。もちろん人材養成もあったでしょう。だからこの研究課題は大学を拠点にしてという意識があったんですね。

ところが、はじめの「目的」で申し上げましたように、住民参加で、そして内発的な活性化を含めながらやっていこうというそのスタンスがあったときに、はじめから拠点が決まっているというのはどうしてもそぐわない、ということに気がついてまいりました。

それで、上のような仕事に加えて、課題に関しての食の全体像と、その中での位置づけの提案、各自の専門を越え、例えば大学の教員達のそれぞれの専門の枠を越えその中に専門のことを位置づけるそうできる環境の提案が必要。言いたいことは、本当に大事なことは自分たちの大学人が持っている一番強いところを押し出しするだけではなくて、大学という研究と教育の場で、共有している食の全体像というのを出していくことが本当は一番大事なんじゃないかということです。食育コラボレーションを固定的な拠点ではなく、こうしたことが可能な特徴を持つメンバーの一人として、シフトをしていかなければいけないんじゃないか。だから、大変恥ずかしい発表になるんですけれど、はじめに想定したテーマである大学を拠点とするという発想が、基本的にはあまり正しくなかったのではないかということです。

おかげさまで、まあこんなことで、みなさんの中に、関係者の中に、エネルギーがたまってきて、もう研究期間は終わったんですけども、終わってからまだ加速がついた感じで、どんどん仕事が進んでいて、また、新しいグループが加わりながら、今度は研究面のグループも加わりながら、この食育ネットをこれからも続けていこうということで、再編とホームページの開設に力を入れているところです。どうもありがとうございました。


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