| Home >> 2006 食育実証研究発表会 報告集 >> 7 | |
【目的】 そこで本研究は、小中学校といった義務制学校における食育から、不登校・青少年自立支援を行うNPOの食育までを一つの食育支援プログラムと仮定し、位置づけることによって、系統的な食育モデルの可能性を模索することを目的としております。 この研究そのものは、実際には学校教育現場の先生方にいろいろなかたちでご協力いただき、知見を寄せ集めてながら行っておりますが、主には相模原市の津久井地区、韮尾根というところにある東京農工大学の付属農場を一つの拠点として、東京の三鷹にあるNPO団体と一緒に積み上げてきたこの5年間の実績をベースに考えてみようというものです。 具体的には、青少年の自立支援のための食農教育実践、「ニローネ緑の学校」を立ち上げまして、これは施設があるわけではなく、バーチャルな学校だと考えていただければいいのですが、それを中心とした動きを、食育という視点から発展的にどう構成すればいいのかを考えることが一つ。 そしてもう一つ。実はこのNPO法人は、不登校の子どもたちのたまり場づくりから始まっています。学校からはじき出された子どもたちの受け皿をつくるところから始まっているために、学校の中でどういう食育、食農教育が行われるかという問題だけでは位置づけにくいわけです。ですから、学校の中で子どもたちがどういう食育を受け、そしてそこで何が目指されているのかということと、はじき出された子どもたちはなぜはじき出されたのか、そしてその回復のためにどういう食育の可能性があるのかというふうに、つなげた発想が必要になります。 そういう意味でも、NPOの実践にとても注目はしているのですが、それだけではいけない。可能な限り、小中学校における食育実践を、地域との関わりの視点から再構成することで、両者をつなげる計画的な食育モデルの基本的な枠組を提起したいと考えた次第です。 その意味では、野田知子さんの「大蔵田んぼを育む会」の実践は、学校とNPOとのうまい連携の仕方として非常に典型的なものですが、時間的な制約がありますので、できればポスターセッションのときにいろいろとお聞きいただくことにしまして、基本的にこの発表では、NPOと農工大の取り組みを中心にご説明したいと思います。 【方法】
ここで一つ、不登校の子どもたちのたまり場づくりをしているNPO団体が、どういうことに直面するかということをご理解いただきたいと思います。それはある意味ではわかりやすいことなのですが、不登校の子どもたちは何らかの理由で学校に行けないというところから出発しています。場合によっては、ずっと学校に行かないで、そのたまり場で学齢期を終えるまでいるということも起こります。そうした場合、そういう子どもたちが、学齢期を終えてすぐに社会に出て仕事ができるか、生活ができるかというと、すべてがそうだというわけではありませんが、条件的にはなかなか難しいわけです。 そうなったときにNPO法人としては、そういう子どもたちがどういうかたちで社会の中に居場所を見つけ、自分たちの生活を支える仕事をつくっていくのかということを考えなければならなくなります。そして、その踏み出しの中で、パン工房というものが必要になるわけです。 先ほどの麦刈りの写真ですが、実は、すみか農場という名前の農場をつくって、パンの材料の一部を彼らは自分たちでつくっています。韮尾根地区に古い古民家を借りて、そこで共同生活をしながら、材料をつくってパンに加工し、それを販売して生業にしていくという一種のトレーニングをしています。それでずっと食べていくことはできませんが、就労トレーニングの場としてNPO法人がそういうことを展開せざるを得なくなっているという現実があるということを、一つご理解いただければと思います。 しかしながら、先ほど少し申し上げたように、NPOの取組をNPOだけで位置づけようとすることは非常にいろいろな問題が起こります。不登校の子どもたちを対象にしたNPOの活動に注目することによって、学校で教育を受けている子どもたち、あるいはそれ以外の市民の食育の問題が視野に入らなくなってしまう危険性があるからです。ですからその点では、NPOの活動とともに、学校教育現場で何らかのかたちで地域とつながりながら活動している食育実践についても視野に入れていくことは非常に大事であることは理解しております。 【食育・食農教育の基本視点】 ここには食育推進計画云々ということが食育基本法との関係で書いてあります。今、まさに教育基本法の改正問題が浮上していますが、改正案、政府案等を見ますと、地域教育振興基本計画の策定が条文の中に盛り込まれています。そうすると、地域全体でどう教育を計画化していくのかという視点がよりいっそう重要になってくるわけです。この食育推進計画と地域における教育振興基本計画の整合性をつけていくためにも、バラバラな食育の実践を乗り越えるような何らかの手法が開発されなければなりません。 1.農業の教育的価値の捉えなおし まず1点目は、都市と農村との生活環境の差が縮小するなかで、次第に農業・農村の教育的側面が希薄化しつつあること。つまり農村の都市化といえばいいのでしょうか。都市と農村との違いが、少なくとも生活環境という面ではなくなってきたことによって、教育力が薄れてきていることが指摘されています。 それから2点目は、そうとはいえ、農村に存在する豊かな自然環境、共同性や自然とかかわりながらすすめられる「農の営み」から、子どもたちは多くの影響を受ける可能性を持っているということです。都市化が進んでいるとはいえ、農村には非常に豊かな関係性がある。これを「農の営み」という言い方をしているのがポイントだと思いますが、そういうものがまぎれもなく存在するということです。 それから3点目は、農業の教育力を担う農民像の変化に注目して、現代社会に向き合う農業・農村の姿からも学ぶ必要があるのではないかという点です。 農業の教育力そのものについて正面から論じている研究は少ないのですが、散見する限りでは、そういう特徴、共通点が見られます。 2.学校給食、家庭の食育の問い直し あるいは、新潟市の郊外に聖籠中学校というところがありまして、そこでは郷土食の講座が地域参画のかたちで進められています。その中で「お袋の味」というキーワードが出てきたのですが、ではそれは一体何なのか。「お袋の味」という言葉は非常に一般的に語られますが、分析的科学的に見ようとすると説明できません。ですから、そういった家庭における食の問題をどう位置づけるかということについても、やはりきちんとした枠組を持たなければいけないという問題があります。 つまり、我々が食育や食農教育を語る際に、当たり前、当然のものと捉えている概念をもう一度捉えなおし、そこから再構築することによって、系統的で体系的な食育推進ができるのではないか、そういう準備が必要ではないかという思いがあるわけです。 3.生活知としての食育・食農教育 【若者の社会的自立と食農体験】 実は、今年の11月に『子どもと大人が学ぶ食と農』という本が農文協から出る予定です。それには完全に収録されていますので、できればそれを改めて見ていただきたいのですが、ここには、NPOの方がその本に書いた内容の項目、特徴だけが書かれております。 1.農業体験を通した働くことの基礎経験
3.「すみか農場」実践報告 これが何を言っているかというと、自分が主体的に責任を持って判断して行動し、結果をきちんと受け止めるということなのです。これは、食育の場合でもこういうことが起こるということを非常に典型的に語っていると思います。 【共生型食育支援プログラムの可能性】
座長坂本:どうもありがとうございました。大変深いお話を伺いまして、感動する点がいくつもございました。どなたかご質問はございますか。 質問:今日は、食育というのはどんなことをやっているのかという関心を持って参加させていただいたのですが、やはり食というのは非常に家庭的な要素が大きいと思います。つまり、子どもの教育と同時に、食をつくっている母親の考え方が非常に大事だと思うのです。そういったことに対しては、どんなかたちで取り組んでいくのかということをお聞かせ願えればと思うのですが。 朝岡:限られた時間でお答えするのは非常に難しいのですが、ただはっきりしていることは、例えば、今ご紹介した不登校の子どもたち、あるいは引きこもりがちな青年たちを支援しているNPOでいいますと、やはり親や地域の人たちの支援が不可欠です。NPOそのものも経営的に非常に厳しいですし、パンをを販売するルートの確保など、様々な段取りも非常に大変です。そして、そういう関わりを通して親自身も変わっていくという話をずいぶん聞きます。ですから、子どもに食育をする、そういう機会に親が子どもを連れ出すということも悪くはありませんが、食育自体を子どもの問題としてではなく、親自身の問題としても捉えて、自分も行動していくという、そのきっかけとプロセスが非常に重要だと思います。 |
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