開会あいさつ
講演/中橋義幸
福岡県/福岡女子大学しょくぼねっと
佐賀県/オリザジャポニカクラブ
長崎県/西海市地産地消地域推進協議会
熊本県/熊本県食生活改善推進員連絡協議会
大分県/本匠農林水産物生産組合「あぐり」
宮崎県/三者会
鹿児島県/かごしまの“食”推進員
意見交換会
 
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伝統の郷土料理「菜海食物語」

川添照子/西海市地産地消地域推進協議会

郷土料理が伝承しにくい時代だからこそ

発表をする川添照子さん

 川添照子さんの暮らす西海市は、平成17年に大瀬戸町・西彼町・西海町・大島町・崎戸町が合併してできた、人口3万4千人ほどの市です。
 それをさかのぼること6年前の平成11年度に「食と農を考える女性の会」(旧西海町)が結成され、「旬の食材こそ薬効あり」をキャッチフレーズに、郷土食レストラン「ふるさと薬膳 菜彩」を開業するなど、地域に根ざした地道な活動を続けてきました(この事例は2002年度の「地域に根ざした食生活推進コンクール」農林水産省総合食料局長賞を受賞)。

 合併にあたり、再び新たな試みが始まりました。それは、西海市全域にわたり郷土料理をレシピ化すること。その経緯について、川添さんはこう語ります。
 「私たちが嫁いだころはまだまだ、姑から嫁へ、そして母から娘へ、郷土料理はずっと受け継がれ、守られてきました。しかしここに来まして、郷土料理は大変伝承しにくい時代になってまいりました。いま私たちがやっておかないと、たぶん消えてしまうだろうという料理もたくさんあるのです。
 また、(私たちのような田舎でも)核家族化は大変進んでおりますし、働く女性も増えました。食生活の洋風化もあり、いつでも・どこでも、おなかがすいたら食べられる状況にあります。そんな中、すばらしい食の環境を先人たちが教えてくれる郷土料理を、私たちはなんとかして後世に残していかなければいけないという思いにかられたのです」。
 そこで上は90歳くらいのおばあさんから、伝授される側の若い世代まで、年齢層もまちまちな会員が、各町より3名ずつくらい集まり、勉強会が発足しました。

旬の食材こそ薬効あり

勉強会でつくられた、四季折々の郷土食(ごく一部)

春:アサリの清まし汁(崎戸町)、鯨と野菜の煮物(大瀬戸町)、芽かぶのとろろ(大島町)、旬菜のぬた(西彼町)

夏:かんころ団子(西海町)、ところてん(大島町)、酒饅頭(崎戸町)、祝いそうめん(大瀬戸町)

秋:薩摩芋つけあげ(西彼町)、くずかけ(西彼町)、白和え(西海町)、昆布巻(崎戸町)

冬:ゆで干し大根とイカの煮物(西海町)、ご豆腐(西海町)、かまぼこ・ウニカステラ、白身魚のかまぼこ(崎戸町)、つぼき(大瀬戸町)

 郷土食レストラン「ふるさと薬膳 菜彩」のキャッチフレーズ、「旬の食材こそ薬効あり」の精神は、ここにも受け継がれています。
 「先人たちはそういう知恵もなかったでしょうが、旬の食材は栄養価も高いしおいしい。それをすべて取り入れてすばらしい郷土料理ができていることを広めたくて、勉強会を始めました」との言葉通り、四季折々の食材をつかった料理とその試食会の様子を写した写真が、会場に紹介されました。

 たとえば春は、自分たちで採った「芽かぶ」、「旬菜のぬた」、アオサ入りの「アサリの清まし汁」、長崎に多いという「鯨料理」。今年は鯨料理をメインに料理をつくったそうです。
 続いて夏は、「かんころ団子」、自分たちで採ったテングサから作った「ところてん」「祝いそうめん」、そして会員の90歳のおばあちゃんがずっと持っていた酒種を使った「酒饅頭」。また、一年を通してお祝いの席で必ず作るという「押し寿司」など。

 中でもサツマイモについては「長崎県はサツマイモ料理の種類がたくさんございます。米は生活の糧として売っていたので、おもに食べていたのはサツマイモ。これと(近くの海でとれる)イワシを食べていたので、栄養のバランスがとれていたんですね」と、風土と食の関係を説明する場面もありました。

よか塩梅 の苦労

 会場からの質問で、「郷土料理をつくっているお母さん、おばあちゃんは、いつも目分量でつくるのではないかと思うので、大さじ何杯、何グラムと計るのが必要なのでは」と、レシピ化の苦労について問われた川添さん、「はい。それが大変な作業でございます」とすぐに答えます。
 さらに重ねて「私たちのところでは『このくらいが丁度いい』というのを『よか塩梅』っていうんですが、いざレシピにしようと分量をきいてみると『ちょうどよか塩梅に入れたらよか塩梅になる』って返事が戻ってくるんです」と言うのには、会場一同、大笑い。

 ではひとつアイデアですが、と手を挙げたのが、冒頭の講演をされた中橋義幸さん。
  「普通、レシピというのはプラスで考えていきますが、伝承料理のレシピ化にあたってはマイナスの方でやられたらいいと思うんですよ。
 たとえば、醤油を1リットルとか砂糖を1kgとか、必要なものを全部置き、つくる人に好きなだけ入れていってもらうんです。最初の量さえわかっていれば、最後に引き算をするとどれだけ使ったか、すぐに出ますよね」
 というアドヴァイスに川添さんは「2月にまた料理の実習があるので、早速使わせていただきます」とにこにこしながら受けていました。

 これまで、試食会や講演会を行なって500人ほどを集めてきましたが、今年(2007年)3月にはそれらの成果を『伝統郷土料理 菜海食ものがたり』という冊子にまとめ、学校関係者やレストラン、農家民宿などに配布する予定だそうです。